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物語終了課  作者: lachs ヤケザケ 
物語終了課の説明
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第一話 物語終了課を知らない人へ

 この物語はフィクションであり、実在する個人、団体等とは一切関係ありません。当然ながら、物語終了課は存在しません。



 【物語終了課を知らない人へ】


 ―はぁ?! 物語終了課を知らないだって? 

 君は新聞やテレビを見ないのかい?

 物語終了課というのは、文字通り物語を終了させる課だ。

 お偉いさんによれば、『すべての物語は、終わるべきである。終わらない物語は人に不安感や疑念や焦燥感を与え、世の中にとって良くない』らしいな。

 物語終了課というのは、物語に終わりを与えてご臨終させるのさ。


 ―何をいっているんだ? そんなファンタジックな仕事じゃないよ。

 何せ公務員だからね。

 昔、『めでたしめでたし事件』があったのを知らないだろう。

 物語終了課の終わり方の九割が[めでたしめでたし]だったことが、内部告発で明らかになったんだ。


 この時に、私は運悪く物語終了課にいたので、えらい目にあった。

 過去の[めでたしめでたし]で終了した物語を書き直す作業の上に、減給を食らう羽目になった。当の[めでたしめでたし]書いた人は他の課にいるっていうのに。


 ―いやいや。そりゃね。九割が[めでたしめでたし]のはどうかというのは、外から見ればそう思うだろうけど、内としては物語が終了すればいいんだよ。

 だってそのための課だろう?日々生産される大量の未完の物語をどう捌くか。

 これでも苦心しているんだ。


 ―だからね。それはワイドショーの見過ぎだって。

 世の中の人はすぐにコメンテーターや評論家の言うことを信じるよね。

 公務員が自分たちのために仕事を増やしてるとか無駄な予算を使ってるとか、我々そんなにマゾじゃない。

 むしろ、政治家がドSだ。ちょっと考えてみればわかるでしょ。仕事は減らしたいんだよ。すぐに終わらせたいんだよ。

 残業したくないんだよ。


 ―いちいち説明しないと分からないのかい。

 じゃあ、『夢オチ事件』の話をしよう。

 物語を終了させる手っ取り早い方法は、実は夢でしたとすることだ。

 夢でしたとするなら、前にどんなシュールで変な展開があろうとも、終了する。

 しかもジャンルを問わない。たとえ純文学、児童文学、恋愛小説、ホラー、ファンタジー、ミステリー、SFであっても、たちどころに終わる。

 

 ただ、[めでたしめでたし事件]のことがあったから夢オチも二つに一つくらいにしようね、としたんだ。それが、不文律みたいになったみたいでね。


 ある日の国会で「物語終了課では、毎年半分の確率で夢オチになっている。それも『―という夢を見た』というのがほとんどだ。これは公務員の怠慢ですよ!!」と政治家が円グラフ付で言った時には笑ったね。

 きっかり二分の一だったよ。まぁ、笑いごとじゃなかったんだけど。それから条件が厳しくなってね。



物語終了課心得の条

 一、めでたしめでたしを安易に用いない

 二、伏線をすべて回収する

 三、元の物語に言及がないかぎり、魔法、超能力、竜や霊といった非現実なものを登場させない

 四、夢オチは大臣の承認がいる

 五、これからも戦いは続くとか頑張ろうみたいな終わりは、物語の終了とみなさない



 ―自業自得じゃないって!! 失敬な。

 どう考えても政治家が仕事を増やしているだろう。海外の物語終了課なんて【THE END】で終わらせるのだから。

 にしても、君は私がなぜこういう説明をするかわかってないみたいだね。

 君は――



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