運命の人はそこにいた
『運命の出会い』
死んだ婆ちゃんが言っていた。「運命の出会いは必ず来る。一目で一生寄り添う相手がわかる……だからそれを逃すんじゃないよ」って……。
運命の出会い……あるかも知れない……でも俺の前にそんな人は現れない。
だって……俺は一目惚れなんて都市伝説だって思ってるから。
一目見て人を好きになるって……そんな事あり得ない……相手が芸能人なら、アイドルならどうだ? 言う人もいるかもしれない……。
アイドル、芸能人……うん、確かに可愛いよ、綺麗だよ……でも、好きになるってそうじゃないだろ? 顔が好みとか応援したいとか、それって……そんな気持ちだろ?
惚れるとは違う……惚れるってのは、その娘と一生一緒にいたい。その娘の為なら死ねる……そして俺の遺伝子を受け継ぎ未来に残して欲しい……。
要はせっせせしたい…………それが惚れるだ! 異論は認めん!
そうなんだ……一生そいつとしか、せっせせしない覚悟が必要なんだ、俺は浮気はしない! 多分な!!
だから一目惚れなんて、ただ……ただ顔の好みが一致しただけの感情なんだと……俺は今までそう思ってきた。
昨日まで、さっきまで……いや、今の今まで……。
だがしかし……、俺は今日その考えを改める。婆ちゃんごめんなさい……貴女の言っていた事は正しかった。
一目惚れは存在した。運命の出会いも存在した。
いや、そんな物じゃない天使は……神は、女神は存在したんだ。
今、俺の目の前に女神がいる……美しい銀色の長い髪、白い肌、大きな碧い瞳、小さくピンクの唇、折れそうなくらい細い腰、細く長い手足……そして容姿だけじゃ無い、俺にはわかる……彼女自身から滲み出てくる彼女の優しさ、そして清らかさ、純潔さ……後光が彼女を照らしている。オーラで彼女が光って見える。
これが運命の出会いじゃないなら、一体なんなんだ?!
夏真っ盛りの今、高校2年の俺は遊びもせずに夏期講習に参戦していた。
そしてその帰り道、その女神は道端で座っていた。
一体こんな所で座り込んで……何をしているのかと彼女を見ると、その女神は道路脇にいた野良猫を自らの髪でじゃらしながら遊んでいた。
俺は……そんな彼女を見た瞬間に脳に衝撃が走った!
そう……まるで……脳天を雷で撃たれたようなそんな物凄い衝撃だった……。
でも……自分の目の前に本物の女神か天使が居たら恐らく誰だって同じ状態になるだろう?
俺は茫然としながら彼女を暫く見つめていた……が、しかし……こんな所で立ち尽くしていてもしょうがない。
……さあどうする、この機会を逃したら俺は一生結婚どころか彼女も作れない……かも知れない。目の前の女神を見て、俺はもう彼女しかいない、今後こんな運命的な出会いは無いと確信していた。
しかし……どうすれば……こんな道端でいきなり声をかけるなんて……そんなナンパな事なんて……俺は今だかつてした事が無い……でも、ここで声をかけないと……もう今後彼女には一生会えないかも知れない……。
一生の伴侶を逃すなんて出来ない、出来るわけがない……俺はもうどうにでもなれ! と精一杯の勇気を出してその女神に声をかけた。
「──ね、ネコ……好きなの?」
俺がそう言うとその女神が猫から俺に視線を移した。
「……うん!」
満面な笑みでそう答える女神……やっぱり……可愛い、愛しい、好き、愛してる。
彼女が俺を見た瞬間、俺の壊れかけた脳ミソが一瞬で薔薇色に変わった……様な気がした。
「……えっと、この辺りの学校? ですか?」
彼女は一見セーラー服と思わせる様な襟の付いたワンピースを着ていた。……どこの高校だろうか? 見た目は少し大人びている……ひょっとしたら大学生? 年上? 等……色々と思いがかけ巡る。
「あ、えっと……私、転校してきたの……です」
転向なるほど女神から人間に転向したのか……いや、そんな冗談を言ってる場合じゃない、転校ね……どうりでこの辺りでは見かけない娘だと思った。
仮にもし一度でも……どこかで一瞬でもすれ違えば、俺の目に映れば……この顔は一生忘れない自信がある。俺にとってもう彼女はそれほどの存在となっていた。
「そうなんだ……えっと俺……この辺にずっと住んでるから……あの……何でも聞いて……あ、本当突然話かけてごめん……俺は水無瀬 匠って言います」
俺がしどろもどろになりながら必死にそう言うと、その間女神は黙って俺の顔をじっと見つめていた……無言でじっと……そして唐突に立ち上がる…………大きい……座っていたので気が付かなかったが、彼女の身長は俺とあまり変わらなかった。 まあ、俺も大きい方では無いんだけれど……。
そして彼女は俺に向かって綺麗な手を出して言った。
「私は朝比奈 詩……です……えっと……たっくんよろしく」
たっくん? 女神様が俺の名前をお呼びになられた。
しかもアダ名で!……そしてこの手は握手を求められていると言う事だと気が付く……握手……女神の手を触れる、あの綺麗な手を握れる。……俺は畏れながら、こわごわと手を差し出すと彼女はサッと素早く俺の手を握った。
「うわ!」
「きゃ!」
手を握った瞬間に彼女の手から俺の手に電気が走った……な、なんだこれ? 静電気か? 彼女も俺と同時に小さな悲鳴を上げた。
彼女があやしていたネコが俺達の声に驚いて逃げて行く……一体……今のはなんだ? 本当に静電気か? そんな物じゃない位の衝撃だった。そもそも季節は夏、今は夏休み……こんな季節に……こんな強烈な静電気?
これって……やっぱり婆ちゃんが言っていた……。
「運命……です」
「運命……かも」
「え?」
「え?」
俺と彼女の声がシンクロする……え? どうなっているんだ? 本当にこれは一体なんだ? まさか……彼女も運命を感じている? しかしそれを聞くのは……でも聞きたい……俺は恥を忍んで彼女に今の俺の気持ちを言った。
「あ、あの……詩さんを見た瞬間……雷が落ちた様な……それで……今また電気が走った様な……」
「え? …………わ……私も……グランマが言っていたのです……運命の人って」
「グランマ……運命……」
グランマってグランドマザーって事だよね? 運命? マジで?
俺達は運命の出会いをしてしまった。
そしてこの時俺は……彼女の容姿とその落ち着き方で、俺と同じ位の年だと……そう思っていた。
まさか……彼女が7つも年下の11歳の小学生なんて……この時は全く思いもしなかった。
ロリコンとは年齢なのか見た目なのか(笑)
ブクマ評価感想宜しくお願いします。m(_ _)m