第2話
顔に、なにか柔らかい感触がある。僕がそれをなんなのか知る前に、今まで柔らかさに触れていた頬に鋭い刺激が伝わる。
そのまま吹き飛び、倒れる。瞼を開くと目の前に木の板とその上に敷かれた薄いカーペットが見える。
ああ、僕の部屋か、ここ。
頬にまだ痛みが残っている。いったいなんなんだろう。ここが僕の部屋なら、今さっきまで僕は自分のベッドで寝ていたはずだろう。なのに何故床に転がっているんだ。ここで寝たのか、酔っ払いみたいに。
それに、なんだろう、近くで声が聞こえる。誰かいるのか。
声はどんどん大きくなる。恐らく声の主が近づいてきてるのだろう。足音も聞こえる。
そうして僕の傍で足を止める。なんだろう、泣きじゃくるように喚いて。女性の声みたいだけど。
数秒後、僕はこの人が誰か知る。まあ何となく分かってもいたんだけど。
僕の胸ぐらを掴み、僕を持ち上げる人の顔を、覗き見る。
「おはよう、ハル」
目をぱちくりさせて僕を見る、幼馴染のハル。
いつも僕のことを起こしに来てくれる、美人で可愛い自慢の幼馴染だ。
そんな彼女は僕の顔を見て、安堵の表情を見せる。
さっきまでぐちゃぐちゃの泣き顔だったのに、なんだろう、なんか可笑しいな。
ふふっと笑みをこぼしてしまった。
するとハルは下を向き、今まで持ち上げていた僕を
床に叩きつけた。