表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/31

臨時ニュース


 統一歴九四〇年、春――


 コンスティテューション連邦の南。

 エセック州のフランクリンは、シーズンオフだからかもしれないが、観光地としては閑散としていた。


 エリザベス=P=シュトラッサーは、高校最後の春休みをそこで過ごしていた。


 今の気分は……最悪だ。


 自分としてはもっと別の場所で過ごしたかった。

 ここはまだリゾート開発が始まったばかりで、施設は少ない――ゴルフ場とかでは、年頃の彼女では楽しめない。


 ホテルで「海辺で、のんびりされてはいかがですか?」と言われて、ビーチチェアに座り、日光浴でも……と思ったが、海からの風は冷たい。


 たしか『常夏の島』と銘打っていたが、一体何なんだろう。


 これであったら、寒いかもしれないが、北のタヴリーチェスキー州のポチョムキンなどで、よかったのではないかと思っている。

 あそこならまだウィンターシーズン中だから、スキーなんていいのではないか……。


〈それもこれもお父様の所為ね〉


 ここを指定したのは彼女の父親だ。

 大方、この未開発に近いリゾート地に投資でも考えているのだろう。父親の趣味と言っていい。

 先に彼女を行かせて、素人目で見て回らせる。

 そして自分は後で乗り込んでくる。よければ投資する。


〈どうせいつものことで、失敗するのに決まっている。

 ちゃんと本業に専念すればいいのに……全く、なに考えているんだか〉


 彼女は何度かそんなことをさせられて、その度に失敗しているのを見ていた。


 まあ本業の方が順調に行っているし……自分のポケットマネーでやること。会社の金に手を付けないとを条件に、せっせとリゾート開発業に金をつぎ込んでいる。


 今回のこの場の評価は……彼女的には、まだ決めかねている。


 今の気分は最悪だが、ホテルの従業員やら村の人たちの人当たりはいい。季節さえ間違わなければ、問題なさそうなのだが、少し南寄りなのが気になった。

 ドラグーンが襲ってこないのか、と……。


 いざ投資したところで、ドラグーンに襲われて破壊されては元も子もない。


 その辺はどうなんだろうか……元々、この島にはラジオの中継局があった程度だ。

 このラジオ局は付近の船舶や航空機に方位や位置を伝え、その航行を補助する電波灯台としても使われている。

 そんな重要な施設を置いてあるので、国が安全と認めているのだろう。


〈まッ、アタシが心配することではないか。どうせ、お母様に怒られるだけだろうし……〉


 海辺での日光浴を諦めて、ホテルに向かう道を歩く。


 どこからともなく陽気な音楽が流れている。

 気がつくとフルーツを売っている店があった。その店先にラジオが置かれていて、そこから流れているようだ。


 リジーはその音楽に合わせるように、鼻歌を歌いながら歩く。だが、その音楽が突然止まった。

 バリバリと雑音が入り、男のアナウンサーの声が聞こえ始める。


『臨時ニュースをお伝えします。

 当局の発表によりますと、ドラグーンの群れが確認されたとのことです。

 現在、パイルの捜索をしておりますが、確認されておりません。

 放送をお聞きになっておられる皆さん。

 情報をお持ちでしたら、当局に連絡をお願いいたします。

 繰り返します……』


 リジーが、ドラクーンのことを気にしていたから現れた……なんてことはないはずだ。


 ドラグーンが灰色の雲から現れるかどうかは、当局は常に監視している。


 奴らの動向は、国民の生命に関わることだ。それに引っかかったのだろう。


 ドラグーンの襲来は『採取』と言われている。


 手順は、『パイル』と呼ばれる巨大なドラグーンが、採取を行う地帯へ現れて旋回を始め、残りのドラグーンを誘導する。


 数日おいて現れるのが、『ショベル』と『ハンマー』の大群だ。

 ショベル型はその名の通り、採取を行い、巨大な手で土砂や何から何まですくい上げていく。

 ハンマー型はやや小柄であるが、破壊と他のドラグーンの護衛を行う。だが、今回、不思議なことがある。

 パイル型ドラグーンが見つかっていないというのだ。


〈あんなデカイものが見つからないなんて、うちの国で『採取』が行われないんじゃない〉


 どこの国かは分からないが、リジーは少し安堵した。


 パイル型は中でも巨大で、翼を広げると一〇〇メートル近くもある。

 そんなものが、見つからないことは、つまりこのコンスティテューション連邦には襲ってこないのではないか?

 しかし、ドラグーンが現れたと言うことは、どこかで『採取』が行われると言うことだ。


 それを思うと、何だか申し訳がない。


 気がつくとその臨時ニュースは終わっていた。

 そして、また陽気な音楽が流れ始める。


〈お父様が来るのは、明後日だったわね〉


 リジーはホテルに帰らずに、もう少し島の中を散策することを決めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ