L.S襲撃
7
中世の貴族たちの会議に使用されていたような奥に王の座る場所がありその周囲に貴族たちが座ることのできる円形のホールでこの会議は行われていた。いや会議ではなく王からの作戦の命令が下されようとしていた。
ここには指揮官クラス以上の人間たちがおよそ数百人はいる。そしてホールの中心には議長と思われる女が一人いた。
「これより総会を始める。今回の議題はここ最近で急速に力をつけてきたAwakeたちの機関についてだ。この機関は今まで大きな力をつけることはなかったため反抗してきたものたちだけを対処してきた。しかし、これでは対処が出来なくなった。あいつらは個々の力を増大させ我々人類の存亡を危うくする存在となった。よってAwakeの施設の破壊を決行する。」
議長がこういうと周囲からは戸惑いの声とやる気にあふれた声が聞こえた。議長が話を続けているがその声はざわつきで誰の耳にも届いていない。このざわつきはなかなか収まらないように思えた、そのときだった。
「これは戦争だ!Awake共を殲滅せよ。この世は我等人間の物なのだ。あいつらのものではない!さぁ行け!」
こう言ったのは奥の王の席に座っていた10代前半に見える男子だった。
そしてこの男子の一声で会場は一気に盛り上がりを見せ、ほとんどの人間が一斉に会場から出ていった。
ほとんどのというのは一部の人間は声を発することもなく会場の上のほうで傍観していたからだ。その中には卓也とメフィストの姿もあった。
「ついにこの時が来たね。君の大好きな栖鳳君を助ける時が。」
「あぁ、やっとだ。邪魔はするなよ。」
「邪魔はしないよ。僕にたてついてこない限りはね。」
「勇斗に危害を加えた瞬間にお前を殺す。」
卓也はいつもの雰囲気とは違った。メフィストを睨み付け本当に殺しにかかりそうだった。
「まぁ、そう怖くなるなよ、卓也。」
こう言ったのは茶色のマントを着た男だ。
「俺たちも出るんだ。そんな怖い顔で心配してなくても誰も君の探し人を殺したりなんてしないよ。」
そして茶色のマントの後ろには緑、黒のマントを来た人間がいた。
「じゃあ、僕たちも行こうか。Awake狩りにね。」
「「「はい、メフィスト様。」」」
卓也以外の3人がメフィストに敬礼した。
この日のエーサはいつにもまして静かだった。まるでこれから起こる戦争を予期しているかのようだ。しかし、実際のところはそれを予期しているのはあの男だけだった。
あの男は自分の持っている情報網によって解放軍がエーサに攻め入ることを知っている。
しかし、それを未然見防ぐような行動はほとんどしていない。一部の優秀で自分に忠実なAwakeにはすでに伝えてあるらしく、彼らはすでにこの研究所にはいない。彼らはこの研究所内でも騒がしい部類に入っていたので、いなくなったぶん静かに感じられていた。
勇斗たちはこの静けさを感じ取っていた。勇斗たちはあの男から情報は受け取っていない。しかし、この静けさに何かが起こるというのを感じていた。
部屋でいつも通りに見えて少し緊張しているように過ごしていた。内心このまま今日が終わればいいと考えていた。しかしそれは甘い考えだった。
突如外で大きな爆発音が鳴り響いた。その爆発音のあと大量の足音と銃声が聞こえた。
「やっぱりか…急ごう。」
「ええ、そうね…」
2人は手短に会話すると急いで部屋を飛び出して普段戦闘区域に出る門へ向かった。
道中には解放軍とみられる拳銃で武装した敵が数名いたが、彼らでは勇斗たちの相手にならなかった。勇斗が右手を正面にだすと手のひらから炎が放出され敵を貫く。脇道から出てきた敵には玲子の電撃が炸裂する。2人は危なげなく門までたどり着いた。
そしてその門の前には2人と同じように逃げてきたAwakeたちが数十名はいた。
どうやらこの門はここからでは開けられないらしい。各々が能力を使用して門の破壊を試みているがびくともしていない。それを見た勇斗は右手をかざした。
「炎、俺ならこの門を壊すことはできるか?」
「あぁ、少し魔力を引き出してやればマスターなら造作もないぜ。」
「そうか、なら少し力を貸してくれ!」
「了解だぜ、マスター。私の封じているマスターの魔力を解放するぜ。」
周囲にいたAwakeたちが勇斗から離れる。魔力は見えないが勇斗の体から発せられる力には気づいたのだろう。
「よし、これなら!クリエーション。いっけぇ!」
勇斗の手にできた銃から炎の弾丸が放たれる。その弾丸は見事に門を貫き、門を破壊した。
「やった!これで外に出られるぞ。」
「早く行きましょ。」
周りにいたAwakeたちが浮足立って飛び出していく。
しかし、出た先に待っていたのは解放軍だった。
鳴り響く銃声。それを聞いた勇斗は無我夢中で飛び出した。
そこで勇斗が見たのは少し前まで喜びにあふれていたAwakeたちだった。
そして周りを見ると四方から銃を向けられている。
しかしその銃口から弾が撃たれることはなかった。
「君は、栖鳳勇斗君だね。」
こう言ったのは緑色のマントを羽織った男だった。
「お前は誰だ。」
「おっと失礼。僕は風上真。風の魔帝だ。」
「魔帝だと?」
「これをみたらわかるかな?」
そういって男は腕についているブレスレットを見せた。
色は違うもののその形は勇斗が腕に付けている炎と同じブレスレットだった。
「それは、風の魔法石かい?」
「その通りだよ。炎の魔法石君。」
「私のことも調べ積みということか。」
男は不敵な笑みを浮かべると銃を持った男たちの中から勇斗たちに近づいてきた。
「ふーん。こんなやつが一個小隊を潰したのか。うちの部隊もたかが知れているな。」
この発言に対して勇斗は何のことだが思い出せず、玲子は少し悔しがる様子だった。
「とりあえず、栖鳳君。君は殺せないから手出ししないでね。先にそっちの女を片付けるから。」
そういうと男は右手を挙げて振り下ろした。
その瞬間銃を持った男たちが一斉に玲子に向かって発砲した。
しかし、玲子には一発たりとも届いていいなかった。
勇斗が咄嗟に炎で防いだのだった。
「ちょっと邪魔しないでよ。君には手出しできないんだから。」
「うるさい。仲間がやられそうになって黙ってみている奴があるか。」
「もう、仕方ないな。少し黙っていてもらうかな。」
そういうと男は右手に付けていたブレスレットを手でこすった。
すると、ものすごい圧力が勇斗たちを襲った。
「これは…まずいぜマスター。早く逃げたほうがいい。今のマスターじゃ、炎帝を顕現させない限り勝ち目がない。」
「そこまで強いのか…でもここから逃げられるとも思わないんだよな…」
「何を話しているのかな?まぁとりあえず少し眠ってもらおうかな。」
男は右手を前に出しそこから風の塊を発射した。風の塊には切れ味はなかったが勇斗に直撃すると勇斗は奥の木まで数秒もかからず吹っ飛ばされた。
勇斗は風の衝撃と木にぶつかった衝撃で声もでないダメージを負い意識を失いかけていた。
「ほう、これを受けても意識を保てるんだ。すごいね、でも動けないみたいだね。」
男は勇斗の方から玲子へ体を向けなおしてゆっくりと歩み寄る。玲子は足がすくんでその場で硬直していた。勇斗は必至に声を出そうとするが体は反応しない。そしてそのまま意識を失った。
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読んでくださってありがとうございます。
少し期間が開きましたがまた投稿を再開したいと思います。
今回はついにL.Sの本陣が攻めてきました。今回は戦闘自体はないですが次回から少しずつ戦闘が増えてきます。
誤字脱字等ありましたらコメントよろしくお願いします!