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初めの第一歩

中学の部活で完全燃焼したと思っている主人公タケシだったが、高校入学直後に

友達のヒロノブから、中学と同じ部活に一緒に入ろうと誘われる。その一言をきっ

けに、無くなったと思っていた部活への情熱が再燃。そんな自分に戸惑うタケシ

であった。

夏で、部活で、合宿、だった。

中学時代の夏の思い出を語るならば、

夏休み中の部活の合宿だけで話しが終わる。

実際に泊りがけの合宿を行ったのは、

夏休み期間の3日間のみ。それでも、夏休みが始まると

毎日朝からみっちりと部活動に勤しむわけだから

夏休み全部が合宿といっても、言い過ぎではなかった。

中学一年の夏は、毎日が新鮮だった。

中学二年の夏は、自分たちに初めて部の後輩が出来て、

少しだけ、大人に近づいた気がした。

中学三年の夏は、自分たちの限界をハッキリと感じる夏だった。

三年間部活をすれば、ましてや毎日朝からみっちり練習をすれば

自分たちの限界が分かってくる。そして、全国レベルの壁も。

ボクたちの最後の夏の大会は、県大会準優勝で終わった。

全国大会出場には、あと一勝が足りなかった。

自分たちの限界は分かっているはずだった。

それでもやはり、負けたとなると悔しさが溢れ

涙が流れるのを止めることはできなかった。



「タケシ、部活、入ろうぜ。また、高校でもやろうぜ。」


高校一年になった。

中学三年間の部活動の中で、自分の限界を知り、自分の力全てを

出し尽くしたつもりだった。だからこそ、悔しさの涙、充実感の涙を

流したわけだ。それは、今、自分の目の前にいるヒロノブも同じだと

思っていた。ついさっきまで。


「部活って、どこの部活?」


本当は答えを知っていたが、自分の心を落ち着かせるために、あえて

聞いたみた。


「決まってんじゃーん。中学とオ・ナ・ジ部活。

 高校でもがんばっちゃおーぜー。」


屈託のない笑顔で、ボクの両肩を掴みながら、ボクの上半身と心を

大いに揺さぶっているコイツ、ヒロノブとは中学一年の頃からの

付き合いだ。同じクラスになったことは一度もないが、

同じ部の仲間として、中学三年間を過ごした間柄だ。仲良くなった

きっかけは、はっきりと覚えてない。ボクたちが所属していた部は

それなりに実績があり、それなりに厳しかった。そのせいで30人以上いた

同級生が夏を迎える前には、20人ちょっとになる。その中で、先輩たちと

上を目指すのは、10人いるかいないか。その中に、ボクとヒロノブは

入っていた。だから、自然と仲良くなっていた。

そして、上を目指した結果が、県大会準優勝。

そこが自分の終点と思ったのに。思っていたのに。


「あんまり、気がすすまない。」


これ以上、上に行けるとは思えないから。と口に出すのは

流石に出来なかった。


「えーいいじゃん、いいじゃん。せっかく、この高校入ったんだしさ。

 合宿もあるみたいだし。今日、部の見学が出来る日なんだってよ。

 今日の放課後、行ってみようぜ、な、な。じゃ、今日の放課後、

 お前の教室の前で集合な。」


笑顔で、怒涛のごとく、喋りまくったヒロノブは、

笑顔で、自分の教室へと走り去って行った。ボクの返事も聞かずに。

いや、もしかしたら、アイツはボクがどう返事をするのか

分かっていたのかもしれない。


本当にもう、上には行けないのか。

本当にもう、今以上に上手くはなれないのか。


その2つの疑問が頭の中をグルグルと回っている。

今日の放課後に部の見学、とヒロノブは言った。

今日の放課後、何か別の用事はあるだろうかと考えてみたが

いつもと同じく、特にこれといった用事はなかった。



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