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強行突入! まさにそれは命懸け【5】


「やられたわね」

「やられたな」

 見晴らしの良い崖から腹ばいになって、二人はその下に広がる《イファの港》を眺めた。


 オスカ帝国イファの港。──大陸と大陸との橋渡しとなる帝国最大級の貿易港として有名であり、同時に水に浮かぶ都として観光名所にもなっている。街から大海原へと抜けるトド運河は大事な交易としての役割を果たしており、大型旅客船が行き来することから海外移動の手段として旅人に愛されている場所だった。

 ほとんどの旅人がこの都を通り、隣国へ移動することから──


「どうする? ミリアーノ。損害保険ギルドの奴ら【先回り】という言葉を覚えたみたいだぜ?」


 関所には、入る順番を並ぶ旅人の長蛇の列と、たくさんの兵や装甲車ががっちり埋め尽くしている。


 宙に浮かんだフォルシスが、その様子を他人事のように観察しながら二人に言う。

「《イファの港》の関所、完全乗っ取り大作戦ってやつですね。あの軍隊の数からしてワールド・ノアの奴ら、相当気合い入ってますよ」

 ため息を吐いてミリアーノ。

「これで大陸移動は完全にアウトね。後退しようにもあの村までもがチェックされたんだから、これであたし達は袋のネズミ」

「いや、まだ隣村に《ニグミグ村》があっただろ?」

「無理。あたしもう歩きたくない。宿もちゃんとしたところが良い」

「我がままな奴だなぁ、お前」

 呆れるクレイシスをよそに、ミリアーノは懐から地図を取り出した。

「《イファの港》は何がなんでも強行突入しなければならないの。あの有名な豪華客船──ホワイト号に乗るまで、あたし達に後退は許されないのよ。サイは投げられた。常に前進あるのみ」

「それ、単にお前がホワイト号に乗りたいだけだろ?」

「だってあれに乗って隣国で開催される称号授与戦に出場するって言い出したのはそっちでしょ?」

「確かに言ったがホワイト号に乗るなんて一言も言ってないぞ、俺は」

「やだ。あたし乗りたいもん。あれに」

 フッと鼻で笑ってクレイシス。

「お前の旅の目的はなんだ?」

「世界最強の魔剣使い」

「よし、わかった。じゃぁこうしよう」

 クレイシスは腹ばいで、ある程度の距離まで後退してから身を起こす。

 ミリアーノも真似るように腹ばいで、ある程度の距離まで後退してから身を起こした。

 フォルシスも宙に浮かんだままついてくる。

おとり作戦を立てよう。誰か一人がワールド・ノアの注意を引きつけ、その隙に誰か一人がイファの港に入る」

「誰か一人って、あたしとあなた以外に他に誰がいるの?」

 フォルシスの目がきらりと輝く。

「僕ですか! やっと僕を使ってくれる気になったんですね、クレイシスさん!」

 こくこくと頷いてミリアーノ。

「また被害総額が一桁増えそうね」

「オレとお前のどっちかだ。フォルシスは最初から頭数に入れてない」

「僕、頑張って暴れるぞー!」

 冷めた二人をよそに一人だけ興奮のフォルシス。

 そんなフォルシスを指で示してミリアーノは言う。

「頑張っちゃうんだって」

「言わせとけ」

「今の内に止めとかなくていいの? あのテンションだと後で絶対フォル君に体乗っ取られちゃうよ?」

「そん時は魔剣破壊バック・ロードの魔法で相討ちしてでも我が身は守る」

「その前にフォル君から精神消去デリート魔法されなきゃいいけどね」

「言うな。オレもそれが怖いんだ」

 それより、と。クレイシスは咳払いして話を戻す。

「大会出場前の良い機会になるじゃないか」

「え?」

 小首を傾げてミリアーノ。

 クレイシスは彼女の腰にある青い魔剣を指差した。

「ワールド・ノアにお前が魔剣使いであることを示せるチャンスだ」

 ぷぅっと頬を膨らませてミリアーノは不機嫌な顔になる。

「奴らだって知ってるわよ、そのくらい」

「いや絶対知らないだろ」

「この前だってアイツ等の目の前で魔剣アデルを消滅させたもん」

「消滅させるな。魔剣使いが魔剣を消滅させるってどんだけ魔剣使いに向いてないんだよ。魔剣はそうやって使うものじゃない」

「じゃぁどうやって使うの?」


「それ、良い質問ですね。ミリアーノさん」


 フォルシスが人差し指を立て、にこにこと笑顔でミリアーノに説明を始めた。

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