表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/8

二人の出会った理由【3】


 クレイシスがミリアーノに出会ったのは一年前の──そう、ちょうど今頃だった。


 クレイシスは《トレビアの街》を目指していた。

 途中、休憩するために《リビアの街》へと立ち寄る。

 たまたまその街の食堂に入って軽く食事をしようとしたところ、その店で三流悪役っぽい男に因縁をつけられた、か弱く可哀想な同じ年頃の少女を目にした。

 頭からビールをぶっかけられていたものの、別にその少女が涙を浮かべて震えていたわけではない。なんとなく第一印象がそんな感じだったからだ。

 助けに入ろうかと思っていたのだが、次の瞬間に彼女はある行動へと出る。

 何を思ったか彼女は近くのテーブルに置いてあったテラヒラ鳥のトマトシチューの皿を手に取り、三流悪役に向けてそれを放ったのだ。

 それこそたまたまだったのかは知らないが、彼女が投げたシチューは絶妙なコントロールの悪さで全く違うところへと飛んでいく。

 運悪いことにそこで食事をしていたかなり人相の悪い三人の魔剣使いのテーブルにクリーンヒット。

 彼女自身、ひやりと冷たいモノを感じたのだろう。

 一瞬で凍てついた雰囲気の中で、彼女は平然とした顔でクレイシスを指差して言い放つ。


「犯人はコイツです」


 三人の魔剣使いがクレイシスに襲ってきたのは言うまでもなく、仕方なしに相手をすることになった。平穏に済ませようと努力はしたのだが、クレイシスにとり憑く戦い好きの魔剣フォルシスが黙ってはいなかった。待ってましたとばかりに楽しみ全開遠慮なしにそいつ等を相手した結果、店は再起不能なまでに倒壊してしまった。

 それが縁で互いの素性を知ることとなる。

 ミリアーノはクレイシスが最強の魔剣使いであることを知り、そしてクレイシスはミリアーノが全世界の損害保険ギルドを敵に回したあの有名なトラブルメーカーであることを知る。

 そして同時にクレイシスは彼女が最強の魔剣使いを目指していることも知った。


「その魔剣、あたしがあんたの代わりに引き取ってあげる。平穏を取り戻したいんでしょ? あたしはこのくらい騒がしい方が好き。だからあんたの代わりにあたしがその魔剣の呪いを受けてあげる」


 彼女いわく、最強の魔剣を手に入れて手っ取り早く最強になりたいらしい。

 まぁそれならばとクレイシスは頷き、魔剣をミリアーノに渡した。


 しかし。

「魔剣があたしに馴染まないんだけど」

 彼女は超がつくほど不器用だった。鞘から抜くにも時間がかかって挙句の果てには魔剣を取り落とし、さらには魔法が一切使えない。剣を構えて振りかざせば手から抜けて飛んでいくというダメっぷり。

 見かねてクレイシスはミリアーノに尋ねる。

「本当に魔剣使いになりたいんだよな? お前」

「もちろんよ。まずは色んな世界大会に出場してみて力を試してみることが大事よね」

 それを笑顔で返された日にはクレイシスはただただ絶望するしかなかった。


 そんなこんなで二人の旅は始まる。

 ちょうどこの時期だと《ルドル帝国》が魔剣使いの称号授与戦を行っているはずだ。

 クレイシスは地図を持っていなかったので道がわからなかった。そこで旅慣れたミリアーノに行き先を託した。

 最初は意気揚々と案内していた彼女。

 その一ヶ月後。

 西の最果てまで来て彼女は突然地図を広げてこう言った。


「あ。西と東を反対に見てた」


 もう今更《ルドル帝国》に向かったところで意味がないと思い、手短な国での称号授与戦に参加させてみることにした。


「僕は絶対に嫌です。お断りします」


 出場受付を前にして、フォルシスがミリアーノを断固拒否。ミリアーノは魔剣がないとして出場資格を取り消され、現在に至る。

 その間いろんな伝説に眠るミリアーノに合った魔剣を探して旅を続けていたのだった。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ