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超破壊魔、降臨!【1】


 山々に囲まれた平凡な村に、突如響き渡る爆撃音。そして大地を揺るがす振動。

 村人たちは皆、何事かと外へ飛び出した。

 集う視線は一点。

 村人たちが『悪魔の住む山」と呼び、忌み嫌っている山。伝説の魔剣が眠っていると言い伝えられる山である。

 時をさかのぼること数日前。

 十六歳ほどの少年と少女の旅人が伝説を聞いたか何かでこの村に訪ねてきていた。子供の二人旅であるということと、仲悪く互いを罵り合っていたということだけがとても印象深かった。二人はこの村の村長に山への進入許可をもらい、そのままその山へと旅立っていった。

 あれから数日後。

 そういえば誰も二人の姿を見ていない。

 思い返せば、あの時少年は店一軒まるごと破壊するほども、あの山へ行くことを嫌がっていた。──にも関わらず、この村の村長は少女の味方となり、二人に山へ入る許可を出したのである。

 誰もこの山から生きて帰って来た者がいないという話を、あえてせずに。


「……冥福を祈るか」


 村人の一人が漏らした一言に、村人全員で山に向かって合掌をする。


 そんな時だった。

 山の方向から響き渡る地響きとともに、何かが村へと向かってくる。


 女性村人がその何かを指し示して歓喜の声を上げる。


「見て、幌馬車よ! あの二人の馬車だわ!」


 村人たちはとても驚いた。


「アイツ等だ! 生きてたんだ!」

「すげぇぞアイツ等! ついにあの山を攻略しやがった!」

 村長が感極まって叫ぶ。  

「おぉ! ワシは信じておったぞ!」

 嘘つけ、とツッコミたくなる村長の言葉をよそに、村人たちは二人の乗る馬車を出迎えに──


 一人の村人が異変に気付く。

「おい。なんか馬車の様子が変だ」

「あのスピード、アイツ等絶対馬車を停める気ないだろ」

「ん? なんか『退け』って叫んでいるように聞こえるのは気のせいか?」

「そういやさっきからずっと気になっていたんだが、彼らの後ろにはなぜあんなにたくさんの騎馬兵や装甲車が追いかけてきているんだ?」

「たしか山に行く時はあんなの見なかったよなぁ?」

「まさかアイツ等、世界中のお尋ね者だったりして……」


 一気に蒼白する村人達。

 誰かの『逃げろ』という合図とともに、村人は一斉にその場から逃げ出した。

 そのまま馬車が勢いよく村の中道を突っ切って行く。

 次いで騎馬兵や装甲車。

 そして最後に、てろてろと壊れかけた荷車を引いて貧弱なスピードで後を追う、若い男と中年の男。

 荷台から中年の男が元気に叫ぶ。

「捕まえろ! なんとしてでもアイツ等を捕まえるんだ! 今日という今日は絶対に逃がさんぞ!」

 睡眠不足と過労でかなりやつれた顔をしていたが、彼らを見つけたことがそんなに嬉しかったのか、とても元気そうだった。

 しかし若い男の方は荷車を引きながら、とてもくたびれた声を出している。

「隊長ぉ。もう帰りましょうよ。絶対無理ですよ」

「黙りたまえアストレラ君! 世界中探し回ってやっとあの二人を見つけたんだぞ! これは執念だ! 今こそ『ワールド・ノア』の積年の恨みを晴らす時が来たのだ!」

 荷車は進む。

 遠く見えなくなってしまった馬車の通った道を果てしなく。


 しばらくして。

 騒動が落ち着いたことで村人達が顔を出す。

 去っていった方向を見つめながら、

「……『ワールド・ノア』っていったら、世界に名高い損害保険組織ギルドだよな?」

「ってことはアイツ等だったんだな。全世界の損害保険ギルドを敵に回した破壊魔コンビ」

「良かったな。俺たちの村、ランドさんの店だけで済んで……」

「かわいそうだけど、しっかり請求させてもらうぜ。ランドさんの店の被害金」

 村一同、彼らの去った方角に向かって静かに合掌するのだった。




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