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2-1
結局、部下は一人も戻ってこなかった。
静かにデフリンクを続けるハル。その隣に三つの空席があった。カナンとバルザム、そしてナミと一緒に散ったエンジェルたちの席。空席は彼らだけではない。子供部屋を見回すと、あちこちに空席が目立つ。
先日の戦闘は悲惨のひと言に尽きた。こちらの戦果は敵の前線基地一つ。損害は出撃した機数の半分と虎の子のAWACS。上層部は勝利宣言を発表した。その根拠として撃墜した敵機の数をあげたが、それも疑わしいものだ。誰も口にはしないが、あの前線基地は囮で、俺たちは罠に誘い込まれたのだというのが、実際に戦った俺たちの見解だった。撃墜した敵の大半も無人機だろう。上は否定しても、現実は惨敗の一言に尽きる。
だが、そんなことは俺にはどうでもいい。むしろ三人の部下を一度に失ったショックの方が大きかった。プライベートでのつきあいは殆どなかったが、空に上がれば三人とも優秀だった。新しい部下が来るとしても、彼らほどの腕のいいパイロットの可能性は低い。もっとも俺が降格しなければの話だったが。
俺はまた独りになった。