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傍観者の記録。  作者: チシャ
6/22

4.5 その後の兄妹。

番外編になります。会話文です。

・入学式の日、帰宅後の浅川兄妹の会話。




「くると思ったら座れよ、倒れる前に」

「ごめん……」

「倒れてつらいのも困るのもヨーコだろ?」

「ごめん、また、運ばせて」

「それは別にいいから寝とけ。なんか食えそうなもんあるか?」

「……水?」

「わかったポカリだな」

「……お願い」






※1 ヨーコ…耀。

※2 ポカリ…浅川家では、粉末のを薄めに溶いてレモン果汁入れて作る。





‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐





・飯桐の前で倒れた日、帰宅後の兄妹。




「のぞいてないで次から早く入ってこいよ」

「でも、よそのクラスだから、」

「同じ学年だろ」

「……うん」

「もういいから寝とけ。なんか食えそうなもんあるか?」

「……カルピス?」

「液体固体」

「固体」

「そんだけかよ。果物入れるか?」

「オレンジ」

「あったか?」

「野菜室に転がってた」

「……んなもん、片付けようとすんな」

「りんごと一緒にしておいたから」

「聞けよ」

「ごめん、お願い」

「わあったよ持ってくるから寝てろ」






「うまいかよ」

「んー」

「ったく体冷えんぞ。んな氷ばっか食って」

「いっぱいじゃないし」

「あー、オレンジ、見た目より死んでなかったな」

「全然問題ないよ。おいしい。コースケありがと」

「おー。そういえばお前、今日俺の呼び方さあ」

「呼んでないもん」

「でも出そうだったろ」

「止めたし」

「別に、とっさに呼ぶのは賭けのうちに入れねーよ?」

「……コースケ、とっさに出るのあっちなんだ」

「……がっこだったから」

「私、『コースケ』が出ちゃうんだね」

「まず俺のこと呼ばないだろ、二人称」

「そういえば、そうだねえ。ね、呼んでほしい?」

「どうでもいい」

「……、だめだ、呼べないや」

「呼ばなくていいんだよ」

「一度くらい呼んでみたいなあ、普通に。学校で。何気なくね」

「あと二年あんだから考えんな。じゃあ俺部屋行くわ」

「お皿、」

「空んなったら壁叩いて呼べ」






「…………晃」






※1 液体固体…浅川家の冷蔵庫には希釈用原液と、濃い目に作って凍らせたものが常備されている。後者は食べるとき、ミキサーでシャリシャリに。

※2 コースケ…晃。飯桐康介ではなく。





‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐





・飯桐謝罪の日、帰宅後の兄妹。




「このクッキーおいしいねえ」

「太るぞ」

「しけるもん。この住所どのあたりかなあ?」

「飯桐に訊けば」

「? ああ今日の子の名前か。『こうすけ』のインパクトで忘れちゃってた」

「お前な。あいつ理系だから、来年も俺と同じクラスになる可能性高いんだぞ?」

「クラスメイト?」

「ああ」

「ねえ、名前気にならなかった?」

「なった」

「だよねえ。今クラスに『ようこ』さんがいて、名前聞くとちょっとどきっとするの。そうだ、池田くんてコースケのクラスだった?」

「ああ」

「なぎさん元気か聞きたいけど、気軽に話せる関係じゃないんだよね」

「直接メールすれば」

「なんていって送ったらいいのか、わかんないよ。顔見たら話せるけど。……メールって難しいなあ」

「そうだな」

「……夏に会ったときね、なぎさん首にあざがあった。暗い色の小さいの」

「そーかよ」

「池田くんて、成績いい?」

「悪くはなさそうな感じ」

「……なぎさんいい女だから、幸せになってほしいな」

「なるんじゃね? 自力で」

「いいねそれ。私も自力で幸せになろう」

「眠いんなら自分の部屋行けよ」

「まだへーき。明日のおべんとは、筑前煮の余りと、玉子焼きね」

「ん」

「何入れて焼こっか。とろろと、豆乳と、ミックスベジタブルかな。彩りいいよねえ」

「てきとうでいいから部屋行って寝ろよ。あとクッキー持ってけ」

「コースケは? 食べる?」

「もう十分食った」

「お母さんには、ばれちゃうからあげられないし。しけたのやだな」

「焼きなおして食えよ。歯みがきして寝ろ」

「んー」

「運ばねえぞこの距離は」

「……コースケ」

「あ?」

「コースケ」

「……なんだよ」

「なんでもないよ。おやすみ」

「おぉ」






※1 なぎさん…池田の彼女。耀の友人。頭よし顔よし性格よし。小柄。付き合い始めた頃から晃は耀に聞かされて知っているが、当時も今もクラスメイトの池田はそれを知らない。

※2 眠くなると口数が多くなる耀。家族も本人も知っている。




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