9.5 その後の兄妹2。
4.5と同じく番外編で、会話文です。
5~9のあと、浅川家でのやり取り。
・兄と母。
「ただいま」
「おかえり」
「どうしたのその土鍋。ヨーコ寝てるの?」
「貧血おこした」
「ああそう。コースケはご飯食べた?」
「食った」
「足りなかったら言いなさいよ、何か作るから」
「……」
「何よ」
※ 浅川母…独自のアレンジで料理を失敗することが多い。
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・兄妹。
「入るぞ。雑炊、食えるか?」
「ん、食べてみる」
「起きれるか」
「へーき。……ほらね、休んだからもうだいじょうぶ」
「無理はするなよ」
「わぁおいしそう」
「干し椎茸とほうれん草使ったけどよかったか?」
「うん、この量ならまだ残ってるでしょ?」
「ああ」
「ねえ、コースケのご飯もこれ?」
「どう見てもそういう量だろ」
「作れなくてごめんね」
「謝るようなことじゃないからな。きんぴらは作ってあったんだし」
「うん、そうだね。ありがとう」
「食えよ、米ふやけたの嫌いだろ」
「うん、コースケも食べてね」
「おぉ」
「じゃあいただきます。……おいしい、生姜たっぷりで鶏の臭みもないし、塩加減もちょうどいい。腕上げたねえコースケ」
「そうかよ」
「そうだよ」
「まずくはねーな。……笑うなよ、おい」
「ごちそうさまでした。片づけはやるからいいよ」
「階段転げ落ちるからやめとけ。気にすんな、俺も食ったんだし」
「ごめん、ありがとう」
「ん」
※ 妹のベッドの横にラグ敷いてテーブル置いてある。浅川家ではどんなときでも布団のなかでものを食べるのは許されない。
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・兄と父。
「おかえり。気づかなかった」
「ただいま。夕飯、耀と食べてたのか」
「そう。連れてくればよかったな。母さんは?」
「トイレじゃないか?」
「……雑炊できたとき、ちょうど母さんが帰ってきて」
「そうか」
「あのさ、それ、何?」
「きんぴらの玉子とじ丼」
「そのまま出せばいいのに」
「そうだな。食べられないほどじゃないけど」
「あー、復活してくれないとまずいことになる」
「うまいこと言うなあ晃」
「……」
※ 浅川父…妻のなんともいえない味の料理も、黙って残さず食べる人。
※ 浅川家…外で食べて帰ってくるという選択肢は頭にない。
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・妹と母。
「また倒れたの?」
「はい」
「貧血って聞いたけど、生理?」
「はい」
「体が弱いわけじゃないんだから、そんなことしてると周りの人に気づかれるでしょう。気をつけなさい」
「はい」
「じゃあ今日はもう寝なさい。寒くない?」
「うん」
「おやすみ」
「おやすみなさい」
※ これがあるから食事だけは先にゆっくりさせてあげたかった兄。妹にとって食欲の失せる話だと、内容は知らなくても結果を知ってる。