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第一章 転生初日から俺は原作のシナリオをぶっ壊すことにした

この小説はフィクションです。実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません……なんて書いてみたけど、そんなことよりまずは謝らないといけない。


すみません、第一章と第二章、めちゃくちゃ長くなりました。


いや、本当に申し訳ない。書いてるうちに「これも入れたい」「あれも書きたい」ってなって、気づいたらとんでもない量になってたんです。でも、かといって無理に分割すると話の流れが変になるし……というわけで、開幕からいきなり長文の山を用意してしまいました。


第三章以降はたぶん普通の3000字くらいに落ち着くと思います。たぶん。


というわけで、暇つぶしにでも読んでもらえたら嬉しいです。

「なんかよくわからんけど、この作者、ノリで書いてるな」と思いながら、ゆるっと見ていってください。


それでは、本編へどうぞ。

「見つけたわ、佐藤光」


階段の上から、金髪碧眼の少女が見下ろしていた。その後ろには三人ほどの取り巻き。まるで自分の領地を見回る女王のような風格だ。


——おお、来た来た。


このシーン、知ってるぞ。


金髪碧眼、完璧なスタイル、傲慢な態度——まさに悪役令嬢のテンプレートじゃないか。


西園寺麗華。ゲーム『星霜の恋人たち』における筆頭悪役。ヒロインを虐めたり、衝突を起こしたり、最後は悲惨な目に遭うタイプのあのキャラだ。


で、彼女が今睨みつけているのは、俺の隣にいる——


「西園寺さん……」


茶色のショートヘア、小柄で、今まさに緊張した顔をしている少女。佐藤光。本作のヒロインだ。転入生。元気系。誰にでも優しい。四人のイケメンに囲まれるタイプ。


——ああ、そうだ。まあ自己紹介が遅れたな。


俺の名前は如月湊。今日の朝、この世界に転生したばかりだ。そう、あの「目が覚めたら乙女ゲームの世界に転生してた」ってやつだ。


原作の如月湊は「暗い過去を持つ病弱系陰キャ」「ヒロインに救われるタイプ」っていう設定らしい。


でも、俺?


恋愛なんてめんどくさいし、ヒロインを巡る争いになんて絶対に参加したくない。


今の俺の目標はただ一つ:この世界で適当に生きる。


俺は西園寺麗華を見る。金髪が太陽の光にキラキラ輝いていて、碧い瞳は宝石みたいだ。スタイルも完璧で、目が離せない。


——この顔、完全に好みだわ。


「よくもまあ、図々しく桐谷くんに近づくのね。あの方は私の婚約者ですのよ」


西園寺の鋭い声が現実に引き戻す。


「ち、違います! 私はただ、生徒会の資料を——」


佐藤が慌てて説明する。


「言い訳はいらないわ。平民は平民らしく、おとなしくしていなさい」


後ろの取り巻きがクスクス笑う。


佐藤は唇を噛みしめて、うつむいた。


——うん、テンプレ通りだ。


悪役令嬢がヒロインを辱め、ヒロインは可哀想に。そこに通りかかった攻略対象の誰かが助けに入って、好感度アップって流れだ。


原作だと、ここは確か……


氷室だっけ? それとも桐谷? いずれにしても、如月湊じゃないはずだ。如月湊は「助ける側」じゃなくて「助けられる側」のキャラだ。


つまり、理論上は、俺は何もせずに傍観してるべきなんだ。


でも——


俺は西園寺麗華を見る。


——この娘、原作だと最後どうなるんだっけ?


確か、誰からも相手にされなくなって、孤独に終わるとか……


もったいない。


それに最近、「悪役令嬢を更正させる」系の作品って流行ってるしな。


私は佐藤の側を離れ。


「如月くん?」


佐藤が驚いた顔で俺を見る。


無視して、階段を上がる。


「なによ、あなた——」


西園寺が俺を睨む。


俺は彼女の手を握った。


「西園寺さん、ちょっといい?」


「は? 何言って——」


「ちょっと来てくれる? すぐ終わるから」


有無を言わさず、俺は彼女を連れ出した。


後ろから佐藤たちの「えええ!?」という声が聞こえたけど、無視だ。


---


適当な空教室に彼女を連れ込み、ドアを閉める。


「な、何するのよ! 離しなさい!」


西園寺が手を振りほどき、俺を睨みつける。


顔が赤い。怒ってるのか、それとも——


「——で、何が言いたいのよ」


西園寺が冷めた目で俺を見る。


さっきまでの動揺は消えている。いや、動揺していたのは一瞬だけで、今は完全に「この平民、何言ってるの」という顔だ。


——お?


「あんたみたいな平民が、私に説教しようってわけ?」


「説教っていうか、アドバイス?」


「アドバイス? 笑わせるわね」


彼女が一歩、前に出る。


「いい? 私は西園寺麗華。この学校を作った西園寺家の一人娘よ。あんたみたいな——」


「あーはいはい、わかったわかった」


俺は手をひらひらと振った。


「西園寺家の令嬢で、校内一の美少女で、桐谷の婚約者。さっき自分で言った」


「な——」


「でも、それって全部『誰かに決められた役割』だよね」


西園寺の口が止まった。


「西園寺家の娘だから、校内一の美少女だから、桐谷の婚約者だから——そういう『だから』で動いてると、いつか痛い目見るよって言ってるだけ」


「…………」


「ま、聞く耳持たないならそれでいいけど」


俺は肩をすくめて、壁から体を離した。


「でも、俺は好きだよ。ああいうタイプ」


「……は?」


「金髪碧眼でスタイル抜群。ツンデレの素質もある。もったいないなと思って」


「つ、つんでれ……って何よ!」


「褒めてるんだって」


西園寺が、もう一度固まった。そして———


「……ふん」


彼女は顎を上げて、完全に見下すような目で俺を見た。


「くだらない。あんたみたいな平民に、何がわかるっていうのよ」


「さっきの言葉、忘れないで。次に私の前に現れたら、ただじゃおかないから」


そう言い残して、彼女はくるりと向きを変えた。


ドアの前で一瞬立ち止まり、振り返らずに言った。


「……それに、私はツンデレなんかじゃないんだから!」


——最後にそれかよ。


ドアがバタンと大きな音を立てて閉まった。


——うん。


——なかなか手強いな、悪役令嬢。


教室を出て、廊下の壁に寄りかかる。天井を見上げる。


今日は本当にいろいろあったな。


朝起きたばかりだってのに、もう悪役令嬢と二人きりで会話してる。


人生——いや、転生初日から、まさかこんなことになるとは。


さて、ここからが本題だ。朝に戻ろう。


——


——


朝、目が覚めたら、知らない天井だった。


いや、正確に言うと——目が覚めたら、知らない「自分」だった。


鏡の中には、見たことのない顔がある。銀灰色の髪、左目を隠す前髪、整った造作。いわゆる「イケメン」と呼ばれる類の顔だ。前世の俺とは全然違う。


——ああ、そういうことか。


俺、これ、乙女ゲームの世界に転生したんだな。


思い出した。前世で、何となくネットを見ていたら、おすすめに出てきた動画。「【解説】大人気乙女ゲーム『星霜の恋人たち』の魅力」とかいうタイトルだった。暇だったから、何となく見た。攻略対象が四人いて、主人公を巡って争うんだとか。悪役令嬢がいて、最後はざまぁされるんだとか。


正直、細かいストーリーは覚えてない。


だって、男の俺が何で乙女ゲームを詳しく知らなきゃいけないんだ?


——まあいいや。悪役令嬢に転生しなかっただけマシか。とりあえず、この世界で生活してみるか。


そう思って、俺は布団から出た。


——


机の上に学生証があった。「如月湊」。なるほど、これが今の俺の名前か。


待てよ。「如月湊」って、確か攻略対象の一人で、「暗い過去を持つ病弱系陰キャ」「ヒロインに救われるタイプ」だった気がする。


でも、それ以上のことは全然思い出せない……


脳みそにあるのは前世の記憶だけ。この世界についての記憶は一切ない。転生するならガイドくらいつけてくれよ!


とにかく、学校に行かないと。


スマホを手に取る。パスワードはわからないけど、顔認証でロックが外れた。地図アプリを開いて学校の場所を確認する。なるほど、ここから徒歩二十分か。


俺は適当に服を着替えて、家を出た。


——


三十分後。


「遅刻だぞ、如月!」


職員室の前で、担任と思われる中年男に怒られた。俺は適当に頭を下げて、「すみません、この世界の地理にまだ慣れてなくて」と答えた。担任は変な顔をしていた。


教室の扉を開けると、三十人くらいの視線が一斉に俺に向いた。気持ちいいものではないな、これは。


席は一つだけ空いていた。窓際の後ろから数えて二番目。どうやらそこが俺の席らしい。


座る。


隣の席から声がかかった。


「おはよう、如月くん! 遅かったね、大丈夫?」


振り向くと、茶色いショートヘアの小柄な女子が、心配そうな顔でこちらを見ていた。


思い出した。これが佐藤光だ。ゲームのヒロインで、二年生から転入してきたんだった。


顔は悪くない。でも、胸は……まあ、動画で見た通りだ。残念。


「おはよう。ちょっと大変だったけど、まあなんとかなるだろ」


そう答えると、佐藤はきょとんとした顔をした。


「え……如月くん、急にどうしたの?」


「どうしたって?」


「いや、だって……新学期が始まってから昨日まで、全然話しかけても無視する感じだったのに、今日は普通に返事してくれるし……」


——やべ。


「あー、そうだっけ? 冗談だよ、冗談。覚えてるに決まってるだろ」


適当に誤魔化した。佐藤はまだ不思議そうだったけど、とりあえず笑ってくれた。


「もう、びっくりした。でも、なんか如月くん、今日は話しやすくなったね。いいことだ!」


そう言って、彼女は前を向いた。


ふう。セーフか?


——


一時間目は数学だった。


……全然わからん。


黒板に書いてある数式を見ても、頭に入ってこない。前世、俺は勉強なんてほとんどしなかったからな。この「如月湊」の成績がどうだったか知らないけど、多分、俺が受け継いだ時点で下がる一方だ。


眠い。


ウトウトし始めたその時、後ろから誰かが俺の椅子を蹴った。


「……起きろ」


振り向くと、黒髪に細フチ眼鏡の男子が、冷めた目でこちらを見ていた。


ああ、こいつが氷室か。


思い出した。氷室司。数学の天才で、高嶺の花タイプの攻略対象。キャッチフレーズは「無口な天才」。


「悪い悪い、寝そうになってた」


「……どうでもいいけど、授業中は静かにしろ」


冷たく言い放って、氷室はまた問題集に目を落とした。


真面目な奴だな。


——


二時間目が終わった休み時間。


教室の前の方で、突然ざわつきが起きた。


「一条くん!」

「一条くん、今日の撮影どうだった?」

「サインください!」


女子たちに囲まれている男子がいる。茶色がかったセミロングの髪を後ろで軽く束ねていて、どこかミステリアスな雰囲気をまとっている。


ああ、一条蓮か。人気アイドルグループのメンバーだって言ってたな。


彼は女子たちに柔らかく微笑みかけながら、でもどこか距離を置いたような態度で対応している。さすがプロだ。


そして、一条は女子たちの輪を抜けて、まっすぐに——


「佐藤さん、ちょっといいかな?」


俺の隣の席、佐藤光のところへ歩いていった。


「え、一条くん? 私に用事?」


「うん、この前は応援ありがとう。すごく元気出たよ」


佐藤は顔を赤らめて、「そんな、私、ただ声かけただけだし……」と照れている。


なるほどね。


これが乙女ゲームの世界か。


ヒロインがただ「頑張って」と言っただけで、攻略対象が「元気出た」とか言って心を開くわけだ。


都合よすぎだろ。


その時だった。


「佐藤さん、生徒会の資料、届けに来たよ」


また新しい声。今度は教室の入り口から。


金髪で爽やかなイケメンが、書類を手に立っている。その背後には、女子たちの黄色い声が聞こえる。


「桐谷先輩だ!」

「かっこいい~」


桐谷英二。生徒会長で、王子様タイプの攻略対象。


彼もまた、まっすぐに佐藤のところへ歩いていく。


「わざわざありがとうございます、桐谷先輩」


「いいよいいよ、気にしないで。それより、昼休み空いてる? ちょっと話したいことがあって」


佐藤は困ったように、一条と桐谷を交互に見る。


一条も負けじと微笑む。


「昼休みなら、俺も話したいことあったんだけどな」


教室の空気が一瞬でピリついた。


おお……これが乙女ゲームの醍醐味ってやつか。


ヒロインを巡って、イケメンたちが火花を散らす。


って、氷室はまだ問題集を解いてるのかよ。お前も早く話しかけに行けよ、他の奴らに取られるぞ。


そういえば、俺も攻略対象の一人なんだっけ。


でも、まあいいや。天意に従ってヒロインを好きになる気はないし。


異世界に来たからって、別に平静に暮らしたいわけじゃない。でも、乙女ゲームのシナリオ通りに動くつもりもない。


だって、今の俺はイケメンの顔を持ってるんだ。恋愛するなら、好きな人を選べるだろ? なんで一人の女にこだわる必要があるんだ?

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