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台所のすぐ隣りにあるダイニングに全員が揃って、やっと食事が始まった。
「さっきはほっといてごめんね。店主のフレード。よろしく。腕は痛む?」
食事の手を進めながらロージーに代わる代わる自己紹介をしていく。
「ロージーって呼んでね。今日はありがとう。腕はまだ腫れがあって、今は痛み止めを飲んでるの。」
大きめの根菜が入ったスープと、朝食にも使った燻製肉を薄切りにしてパンに葉野菜と挟んだものが出されている。燻製肉は軽く焼いてあり、香ばしさが増している。
子供達がエルマーと収穫したスモモも切られて並んでいる。
「スモモはさっきエルマーが子供達と取ってきてくれたんだ。早く採れる品種だけど、酸味はきつくないよ」
フレードがどうやら食事を用意しているらしく、面々にテーブルに並ぶ物を説明している。
「フレードは親御さんの後を継いだのか?俺らと歳は変わらないんだろう?」
エルマーの問いかけに苦笑いを返して、フレードは事情を説明する。
「父さんは……何ていうか、かなり自由な人で。大陸中の使役獣を見てみたいって言って、僕が16歳の成人を迎えたらいきなり旅立って行っちゃったんだよねぇ」
「え……。」
「あの時は困ったなんてもんじゃなかったよ。ヴァルターと住み込みの一家が居なかったらこの店は潰れてたね」
大袈裟では無いようでヴァルターも眉間に深い皺を寄せて、頭が痛いとでも言いたげな様子だった。
「母さんはその少し前に実家から呼び出されちゃって帰ってたんだ。その後病気で肺を痛めて、そのまま実家に居てもらってる。生き物の抜けた毛とか、山からの冷えた風も良くないって医者に言われてさ」
何でも無いように話しているが、成人を迎えたばかりで前触れもなく後を継がざるを得ない状況は、大変だったのだろう。
先代からの従業員がいなければ潰れていたというのも大袈裟では無い。
「まあ、ちゃんと黒字経営だから安心してよ。依頼料の未払いとかはしないから」
そんな言葉でフレードは締め括って、微妙な空気になった会話を切り替えた。
「今日は愛玩獣の引き取り人が午後に来るんだけど、来られる時間が分からないらしくて。その人が来たらこの笛を鳴らして教えて欲しい。空いている時間は店の中なら自由にしてくれて良いから」
鈍い銀色の笛をロージーに渡しながら、フレードは苦労を感じさせない穏やかな笑顔を向けたのだった。
レタスたっぷりのハムサンドが好き。シャキシャキパリパリ食べたい。




