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店先に獣車が着くと、店外に出ていたエルマーが出迎えてくれた。
「着いたか!丁度昼メシの用意が出来たってよ。ロージーほら、手」
駆け寄って真っ先に降りるのを手伝っている様子を、横目でフランツが複雑な心境で見つつ荷物を下ろしていく。
店の裏手から調教師のヴァルターがのっそりと歩いて来て、騎獣の手綱を取った。
「後はやっておく。自分らの荷物だけ仕舞っておけ。それと、ようこそ嬢ちゃん『丘の獣屋』へ。むさい所だがな」
「ありがとうございます。ロージーって呼んでね。一人でいるのは不安だったから助かったの」
ロージーの言葉に、内緒って言ったのにとフランツが愕然とした。危うく荷物を落とすところだった。勿論、肝心のエルマーもばっちり聞いていた。
「ゴメンな。この間の装備の買い替えを後に回しておけば良かった」
懐事情から、ロージーを留守番させてでも依頼を受けたのを気にしていた様だ。
「駄目よ!装備にだけはお金をかけなくちゃあ。何かあったらどうするのよ……。怪我した私が言うことじゃあ無いけど……」
「ロージー……。」
「ね?エルマー……。私はもう大丈夫だから……」
「ロージー……。」
「ふふ。そんな顔しないで、エルマー」
「……ロージー」
「うわぁ……なんか始まったなァ」
見つめ合う二人をよそに、ボソリと呟いてヴァルターが店の裏手に騎獣を曳いていくが、フランツは石像のように動けない。
あぁ、ロージー……もうお嫁にいってしまうのか……。絶望が体の力を奪ってゆき、遂に荷物を落とす。
(小さな小さなあの手が俺の指を握ってくれたその日から、俺の可愛いロージーだったのに!!)
落とした荷物が騒がしい音を立てたせいか、気付いた店主のフレードが外に出てきた。
「何の音……。え?何?フランツどうした?」
棒のように立つ魂の抜けたようなフランツを見るや、ふむ、とひとつ頷いてフレードは取り敢えず荷物を拾い集めて運んでいった。
建物の中で子供達に声をかけたらしく、リックとエリカが出てきた。
「何やってるのさ。ほら、昼だよ!」
「お腹すいちゃったから早くしてよぉー」
孤児院で下の子を見ているせいか、やたら手慣れた様子で前後からフランツを挟んで動かして行った。
ちなみにロージーはその間、落ち込んでいたエルマーを慰めるのに夢中でフランツは放置だ。
子供達に店に押し込まれていくフランツにやっと反応を見せ、エルマーを促して微笑み合いながら後に続いた。
兄の愛は変わらないと知っているので図太いし、何ならシスコンに気付きつつあってちょっとうざ……、妹離れしても良いんじゃないかなと思っている。
何だかんだ仲の良い三人組なのです。もうお前ら付き合っちゃえよ。




