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丘の上の大きな木の下で  作者: 菓子カンの中


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2/14

 放牧場に着いたので、留守番中の妹の事はひとまず置き、作業の指示を受けて、大きな水桶を洗い生活魔法で水を入れる事から始める冒険者二人組。店主は他の仕事があるからと、戻っていった。


「柵の中に入らなくても外から水も餌もやれる。考えてあるんだな」

「だな。騎獣だから大きいのもいるし、俺等みたいな知らない人間が中に入ると怒るヤツもいるだろうから。柵も頑丈にする為か?何か塗ってあるな。普通の木じゃあ無さそうだ」

 若さ故か体力も有り、単純な力仕事の合間に周囲を観察する余裕も出てきた。見た目には特徴が出ていないが、獣人混ざりの彼等の鼻には獣臭さが中々辛い。だが、広い敷地を吹き抜けていく風も、ゆったりと過ごす騎獣達を見るのも悪くない。

 先に洗って乾かしておいた、同じく大きい餌入れを黒い柵の切れ目から設置すると、数頭の馬系の騎獣が餌の気配で寄って来て覗き込む。


「まだ空なんだよ、今取りに行くからもうちっと待てよ」

 エルマーが騎獣に向かって言うと、不服そうに頭を振りながら大きな鼻息で返された。

「ご不満な様だから急ごう」

 フランツに急かされ、次は草食用の餌の為に移動する。それが終われば次は肉食の騎獣の水と餌やりにまた移動だ。


 仕事は単純だが敷地がとにかく広いし、桶一つでも大きくて力が必要だ。成る程、店主が人手不足と嘆いていたのにも納得の二人であった。


 街から来る時に目印にした大きな木の影が角度を変えて、気温も上がったこともあり汗が出る。子供達が呼びに来た頃には中々に疲れていた二人であったが、体が鈍らないし飯も付くなら悪くない仕事だと思っていた。やはり臭いにはうんざりだが。


 フランツは、親切な店主に一頭引きの獣車を借してもらって宿まで妹を迎えに行き、エルマーは子供達と一緒に、敷地内に植えてある果物を収穫するよう頼まれた。昼食に出してくれるし、いくらかは持ち帰っても構わないそうで、孤児院で他の子供が待っているリックやエリカにしても、若くすぐ腹の減るエルマー達にも有り難い事だった。


「何か店主さん、人が良いな。いつもあんな感じか?」

「そうだよ。この店の手伝いは疲れるけど、甘い物もくれるしご飯も孤児院より美味しい」

「うちの孤児院のお手伝いでも、取り合いなのよ。フレードさん優しいし、金髪で灰青の瞳でカッコイイし。絵本の王子様みたいでしょう?」


 成る程、幼くとも女である。食い気のリックはともかくとして、確かに店主は中々に整った顔をしているので、人気があるのも納得できる。親切なのは勿論だが、初対面ながら人付き合いも悪くなさそうにエルマーには思えた。


「あ!ご飯できたって、早く戻ろう!」

 鐘の音が聞こえると同時に収獲したスモモを籠に入れ、子供達が駆け出す。どうやらこの鐘の音は集合の合図らしい。その後を早足で追いかけながら、エルマーは故郷での暮らしを思い出した。

 (子供の頃はこんな風にフランツ達と走って家に帰ったっけ。母さんや兄貴は元気かな。近々手紙でも書いてみようかな)


 子供達を追い越すように、初夏の風が吹き抜けていく。緊張感があり胸躍る冒険者の暮らしも勿論大好きだけれど、偶にならのんびり過ごすのも悪くないな、等と考えながら開いてしまった子供達との距離を埋めるように、エルマーは走り出したのであった。


スモモは美味しい。馬はとてもきれいな生き物であると思う。脚の太い馬がとっても格好良い。サラブレッドもすてきだが、ポッキリ脚が折れそうで見ていると不安になる。

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