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夕食はフレードとヴァルターの二人きりなので、静かなものである。
男二人なので、使役獣達の健康面での申し送りやら、仕事の会話がぽつぽつとされるだけで、酒の量を過ごす事もない。
今日は昼間に人が増えた分、作り置きでは足りずに根菜のチーズ焼きを足した。焦げ目が香ばしく、中々美味しく出来たとフレードは思っている。
フレードは食事を作るのが苦ではないので、食器の片付けをヴァルターにお願いしている。
店と廊下続きの居住部には一階に生活空間がまとまっており、二階は寝室と個人部屋がある。ヴァルターも二階の一室で寝起きしている。
労働者ギルドから従業員が新しく採用出来れば、退職した一家の住んでいた離れを貸し出すことも検討している。
「明日もギルドから人が来てくれると良いんだけど」
愛玩獣が猫系と犬系、それに鳥系も小型だが綺麗な声で鳴くので人気があり、取り扱いを減らすにも勇気がいる。
騎獣も馬系が人気ではあるが、二足歩行の大型蜥蜴系、大鹿系も個人所有に向くので中々に買い手が付く。
要するに取り扱いの頭数と種類を減らしたところで、その分の客も間違いなく逃がすことになる。取り扱うのが生き物なので、いくら毎日の業務が大変でも物と違って急に減らせないし、何より育ててきて愛着も勿論ある。
そもそも馬系に至っては年間の契約なので、急には変えられない。守衛相手の商いなので信用問題に直結しているし、何より亡き祖父の顔を潰すことになる。引退した方達の中には勿論祖父の元同僚も居るし、情けない姿を見せたくない。可愛がって貰っているのが解っているので尚更だ。
つらつらと考え事をしながら湯浴みを済ませて自室に戻ると、窓の外に鳥が来ていた。脚に筒が着けられている所を見るに、誰かからの急報らしい。
(普段見ている個体じゃあないな)
少しざわりと嫌な予感が過ったが、知らせの内容を見てみない事には確かめようも無いので、フレードは
早速と窓を開けて筒から丸められた紙を取り出す。
「母さんの実家?……え?」
『領軍 名誉顧問ダビット・オイゲンが報せる
我が娘 ナターリエが危篤
至急来られたし』
「……え、はぁ!?……はっ!ヴァルター!ヴァルター!」
フレードの母であるナターリエの危急を告げる内容に、一瞬思考が止まった。だが、次の瞬間一階にいるであろうヴァルターに、店を頼まなければと部屋の椅子を蹴飛ばしながら駆け出した。
「どうした!遂に産気付いたか?!」
普段穏やかなフレードの大声に、妊娠中の騎獣に何か有ったのかと、慌てたヴァルターが階段下に駆け寄るなり問うたが、フリードは慌てすぎて言葉が出ずに首を横に振るばかりだ。
「……!違っ!……母さん!…………母さんが!!」
余りにも動揺するフレードを見て、取り敢えず騎獣の事ではないと判断してから、その手に何やら紙が握られている事に気付いたヴァルターは、その紙を取り上げてざっと目を走らせ、その目を徐々に驚愕に開いた。
「僕、行かなくちゃ……。……皆の事頼むヴァルター!」




