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『煙の向こう側』【8】黄金国の試練

黄金国に忍び寄る影――それは隣国からの戦の脅威でした。

大輔は王の信頼を受け、戦を回避する奇策を提案します。人を傷つけずに国を守る方法とは何か。黄金国の未来を懸けた試練の幕が上がります。


【8】黄金国の試練

黄金国では、栽培の成果が実り始め、国全体に明るい未来が見え始めていた。だがその矢先、隣国・海の国から不穏な知らせが届く。

「鮭が海から遡上して黄金国を豊かにしている。代価を払わなければ鮭の流れを止める」――。要求された金額は莫大であり、さらに海の国が軍を動かし始めたとの情報がもたらされた。

王は憂鬱な表情で謁見の間に座り、大輔とアニーを呼び寄せた。

「二人には苦労を掛けている。だが今、海の国が戦を仕掛ける準備をしている。国民は動揺しておる。何か妙案はないか?」

しばし考え込んだ大輔は静かに口を開いた。

「王よ、岩の国と軍事同盟を結ぶことをお勧めします。そして空中浮揚車を導入すれば、戦局を優位に運べましょう」

補佐官を乗せ、空中浮揚車を実演した大輔は説明を続けた。


「ただし、武器は用いません。上空から薄めた鶏糞や堆肥を撒くのです」

「作物の肥料となり、兵の士気を奪います。

「さらに人糞尿を撒けば、戦意は完全に喪失するでしょう」

王は目を見開いた。

「なるほど……人を殺さずに戦を終わらせる策か」

「はい。和睦を引き出せます」

すぐさま同盟の準備が進められ、湖畑から輸送された二機の空中浮揚車が城の広場に並んだ。オリバーも加わり、大輔とともに操縦して草原へ向かう。

侵攻してきた海の国の歩兵たちの頭上から、肥料が雨のように降り注いだ。混乱と嫌悪の中で兵は戦意を失い、やがて一斉に撤退していった。

「全軍撤退!」――勝利の報告に、王は大いに喜んだ。

「博士、大輔よ。そなたは国を救った。オリバーもまた素晴らしい働きだ」

こうして黄金国と岩の国は同盟を結び、国土は安泰となった。

別れの日、盛大な送別会が開かれ、オリバーも感謝の言葉を述べた。

「博士、本当にありがとう」

湖畑に戻った大輔とアニーは、黄金国からの贈り物を開いた。

そこには「大豆の形をした黄金の種子」が数多く収められていた。

大臣に報告すると、深く頷き言った。


「博士の功績を讃える」

その夜、役宅での祝いの席は賑やかに続いた。

翌朝、大輔はふとつぶやいた。

「私の使命は……これで終わったでは」

アニーは驚いた顔をして大輔を見つめる。


やがて大輔は大臣に告げた。

「大臣、私は帰ります」

すると大臣は静かに答えた。

「博士、アニーがそなたの国は素晴しくい国だという」

「そうなのか、博士……アニーは、『二人で帰えりたい』と言い切るんだ」と苦悩な表情をした。

大輔は黙って考え込んだ――。


戦を避け、知恵と工夫で国を救う――大輔の行動には、人間を殺さずに解決を探る強い意志がありました。黄金国に贈られた「黄金の種子」は、ただの報酬ではなく、次なる旅立ちの予兆でもあります。大輔とアニーの使命は、ここで終わるのか、それとも新たな扉が開くのか。

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