第1話 紅き雫
ザー ザー
雨が降る街中を闇夜に紛れて動めく一つの影があった。
その影は、美しく艶やかな赤色の長い髪に、血のように染まった奇麗なルビー色の瞳を持った幼き少女の姿をしていた。
タタタタタタタタッ
少女は風を切るようにして走り、髪を風になびかせながら今日の晩御飯を見つける。
ダッ!!
彼女は勢い良く屋根から飛び降りた。
──そして次の瞬間、
「キャァァァーー!!」
っと悲鳴が響き渡った。
悲鳴を聞きつけた二人の衛兵たちが路地裏に駆けつけて来る。
暗闇の路地裏を見たその先には、首元が何かに食いちぎられた跡がある女性の見るに堪えない無惨な姿があった。
「これで……二十五件目か……」
年配の衛兵は女性の死体の側に寄り、悔しそうに歯を食いしばる。
「奴の姿さえ分かれば、紅き雫を探し出せるのに! クソッ!!」
若い衛兵が悔しそうに怒気を孕んだ声で強く地面を踏み付ける。
騎士団は、未だに紅き雫の正体に辿り着けないでいた。
紅き雫は、ここ最近で起きている連続殺人事件の犯人であり、男、女、構わずに人を殺し必ず血塗れの状態で被害者が発見されることから紅き雫と呼ばれていた。
騎士団は紅き雫の手掛かりが見つけられず、捜査が難航していたのだ。
彼女に狙われたが最後、生きていた者はいない。
何故なら、常に生殺与奪の権を握っているのは紅き雫だからだ。
被害者のツンとくる血の匂いが雨で薄れていく中、衛兵二人は黙祷を捧げた。
◆
「おっはよーー!!」
見た目は六、七歳ほどの可愛らしい少女が元気良く戸を開けた。
「う〜、太陽さんがギラギラしてる〜、やっぱり朝は嫌い〜」
少女は、右手で太陽の光を遮りながらいつものように愚痴をこぼす。
そこに部屋の扉を開けて入って来る人物が居た。
「あら、スカイ今日も早いのね」
部屋に現れたおしとやかな女性はゆっくりと歩きながらスカイに微笑む。
「うん! 今日も、スカイは早起き〜!! お母さーん、褒めて褒めてーーッッ!!」
スカイは、褒めて欲しいと言わんばかりに母に向かって走りだし抱きつく。
「うんうん、スカイは早起き出来て偉いわ〜」
マリアは、優しく抱きしめスカイの頭をクシャクシャと撫でた。
スカイはマリアに頭を一撫でされて、気持ちよさそうに目を細めた。
「スカイ、お母さんの手、好きっ!!」
「ありがとう、スカイ。お母さん、嬉しいわ。さて、朝食が出来たから食べましょうか。今日はスカイが大好きな魚の塩焼きよ」
「さっかなー!さっかなー! おさかっなさーんっ!!」
「あらあら、もうスカイッたら──」
陽気なスカイは、大好きなお母さんであるマリアと手を繋いで階段を降りて行った。
その後、スカイは大好きな、おっさかっなを食べて外へ遊びに行くのだった。