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第6話 これで契約成立じゃな!

「絵馬?」


「そうじゃ! これらの絵馬の願いを叶えていけば、ご利益があったと皆は気付き、話題になる! そしたら神社に足を運ぶ者が増えていくじゃろ!」


「ああ、なるほどね……」


 確かに願い事が叶う神社なんて言われたら、来る人は間違いなく増加するだろう。ただ願い事なんて、そう簡単に叶えられるようなものなのか……いや、神なら何とかなるもんなのか?


「まぁそれは、出来そうなやつを選んでいけば良かろう。ウチも協力するし」


「協力するって……え、何。もしかして僕に願い事を叶えろって言ってるの?」


「うむ、そうじゃよ! お主ならウチも見えるし、神社の外にも出られる……こんな特別な人間は中々おらんぞ!」


 えっ……いや。いやいやいや、ちょっと待ってくれ。


「そんなの無理だって。神にお願いするようなことを、どうやって僕が叶えるって言うのさ?」


「じゃからー、それはウチがサポートすると言っておるじゃろ。ウチの力をお主に分け与えることだって可能なのじゃからー」


「だから無理だってば。それに僕は学生で、アンタみたいに暇じゃないんだよ」


「えっ、サボっておるのにか?」


「……」


 いや、それは……今日はたまたまなんだって。昨日までは模範的な生徒だったんだってば。


「とにかく……そんな面倒なこと、僕は手伝えない。他の人を当たってくれ」


「じゃーかーらー! 当たる人がおらんから、お主に頼んでおるんじゃろ! ウチが見える人なんて、ほんっっとにおらんのじゃから!」


 少女は感情を込めてそう言った。まぁ何十年も見える人がいないって言ってたし、僕を逃がしたくないって気持ちが凄くあるんだろうけど……でも僕は自分の時間を使ってまで人助けするほど、お人よしなんかじゃないんだ。だからここはどうにか断らないと……。


 そしたら少女は僕の心を読んだのか、焦ったように。


「ああー分かったのじゃ! それじゃあお主がこの神社を復活させてくれたら、お主の願い事も1つだけ叶えてやる! それだったらどうじゃ!」


「えっ……何でも?」


「ああ、何でもじゃ!」


 ……だったら話はちょっと変わってくるんだけど。別に、今すぐ叶えてほしい願いがある訳じゃないけど……相手は神だ。やろうと思えば億万長者だって、不老不死だって叶えてもらうことが出来るかもしれない。


「……まぁ、出来んことはないが。ずっと生きていくってのも結構大変なんじゃよ?」


「そうなのか……そういや、アンタって何歳なんだ?」


「それは乙女の秘密じゃ」


「あ、そう」


 ちょっと気になったけど、普通にはぐらかされてしまった。まぁ結構長いこと生きているんだろうなぁ……。


「ともかく。どうじゃ? この条件なら協力してくれるか?」


「まぁ……少しだけならいいかなって、思い始めてる自分がいる」


「ふふっ、そうか! それは良かったぞ!」


 そして少女はご機嫌に尻尾を振りながら、小指を差し出してきたんだ。


「ん?」


「これは指切りの約束じゃ! 早く春も指を出すんじゃ!」


「ん、ああ……」


 何だ、そんな子供みたいなことするんだな……と、この時の僕は対して深く考えていなかった。だが、この指切りには想像以上に重い意味が含まれたものだったんだ。


 そして僕は小指を出して、少女と指を交わす。そしたらフッと一瞬だけ意識が飛んだような……そんな感覚を覚えたんだ。


「……おーい、春。もう終わったぞ!」


「えっ、あ、ああ……」


 僕は少しフラフラっとしながら、彼女から指を離す。その時、自分の手の甲に何か付いているような気がしたんだ。僕は腕を近づけて、それを確認してみた────


「え……なっ……!? 何だこれッ!?」


 そこには、デフォルメされた狐のキャラクターが浮かび上がっていたんだ。僕は急いで手の甲を擦ってみるが……それが消えることは無かったんだ。慌てて僕は少女を見た……そしたら彼女は今日一番の笑顔を見せて、こう言うのであった。




「んふふっ! これで契約成立じゃなっ! 春!」

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