第20話 アニメみたいな人物じゃな
「実は、わ、私……あまり話すのが得意じゃないんです」
「ああ、見れば分かる」
「春！ 思っとっても、言わないのが礼儀じゃろ！」
言いながらミミハ様は、僕を軽く叩いてきた。まさか神様に礼儀を問われる日が来るとはな……でも自覚しているのなら、それぐらい言っても大丈夫だと思うんだけど。
「えっと、それでですね。私には友達と呼べる存在が、今までできなくて。だから色々遊んだり、話したりする友達が欲しいんです……！」
「へぇ。でも友達って、雪丸さんが思ってるほど良いものじゃ……」
「ああ、もうお主は黙っとくのじゃ！」
そしたらミミハ様に口を塞がれた……正確に言えばミミハ様の謎の力によって、口が開かなくなったのである……ん？ この技使えば、エロいことし放題じゃないのか……？
「お主は黙っててもうるさいのか！？」
……勝手に心を覗くほうが悪いだろ……まぁいいよ。うるさいなら黙っとけばいいんでしょ。心を無にすればいいんでしょ…………無、無、無、むーん。
「ホントにこやつは……まぁ良い。春は放っておいてじゃな、栞。続きをウチに話してくれんか？」
「あ、は、はい……」
雪丸は若干引いていた。まぁ傍から見れば、ミミハ様1人でギャーギャー喚いてるようにしか見えていないもんな。
「あ、でも、内容は全部言った、と思います……」
「そうなのか？ 栞が友達になりたい人なんかはおらんのか？」
「や、えっと、特には……」
雪丸はたどたどしく言うが、明らかにそれは嘘っぽい発言だった……もちろんそれは、ミミハ様にはお見通しのようで。
「ほうほう……栞はイインチョウという人物と友達になりたいんじゃな？」
「えっ！ ど、ど、どうして、それを！？」
心を覗かれ、友達になりたい人物を当てられてしまった雪丸は、顔を赤らめて目玉をグルグル回すのだった。ああ、可哀想に……。
「それでイインチョウとはどんな人物なんじゃ？」
「え、あの、えっと……」
また雪丸は言葉に詰まる。このままだと話が進まなそうだと察した僕は、神様にジェスチャーで喋らせろと訴えるのだった。
「ほいほい……ほれ、解除したぞ」
「はぁ……二度とするなよ？ それで……委員長のことは僕でも知っている。成績優秀でスポーツマン。おまけに美人で誰にでも優しい人だ……って陽キャ男子共が騒いでるのを聞いたことがあるよ」
「ほーん。アニメみたいな人物じゃな」
……アンタが言うか？
「まぁ、それ以上の情報は僕は知らないけど、友達になるには良い人なんじゃないの？ 断るとは思わないしさ」
「春はその、イインチョウって人と喋ったことあるのか？」
「あるわけないだろ。この僕だぞ？」
「む、確かにそうじゃったな……」
ミミハ様は納得の表情を見せる。やっと僕のことを理解してきたみたいだ。
「ともかく……友達になる人物はイインチョウで決定して良いのじゃろ？」
「え、えっと……はい」
「そうか！ それじゃあ友達になる方法を今から考えていくぞ！」
「……大丈夫かな」
ぼっちを極めた僕と、人見知りの雪丸。そして人間のことをよく知らない神様の3人で、良い案が浮かぶとはとても思わないが……まぁ考えるだけ考えてみよう。そう決めた僕は、顎に手を当て……思考を巡らせるのだった。
