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じさつ

作者: しるひくん

だいたいこの世はずっとおかしかった


誰かだけが人一倍の苦労をする


誰かだけが人と関わりづらい


誰かだけがずっと悩んでいる


そんななか頑張って、

他の人の手を煩わせてまで、

生きていたからって、

なにもない



こんなこの世に 嫌気がさしました

























電車に揺られる


ただ下を向いて


電車に乗っている時間はなんとも長い


ガタンゴトンと代わり映えのしない音、それに合わせて揺れる座席


こんな場所でどれだけ退屈な時間を過ごしたことか




退屈だといろいろと無駄なことを考えこんでしまう


ぼんやりとあの人達の顔が浮かぶ


なんともすごい形相で、口々に冷たいことを言ってくる


でも、こいつらはあの人達じゃない

似てるだけの、内側だけの生命体


こんなやつらに追い詰められて

こんなやつらにも迷惑をかけたくなくて




聞いたこともないベルの音が鳴り響く

非常ベルにより電車が急に止まった

安全確認だとか

ざわつく乗客、かすかな溜息


偶然にしては上出来なタイミング

やっぱり、迷惑がかかるよなと再認識


気が付いたらひとつ手前の駅


なにを考えてたか忘れたので

このままなにも考えずに降りようと決めた




近づくにつれ、いろいろ思いつく


降りた瞬間飛び出そうかとか、

帰らずにあてもなくどこかに行こうかとか、

近くに流れる川に、立ち寄ろうかとか、




結局降りたら、いつもの通りに足が動く


こんな臆病者で、こんな怠け者が、いつもと違うことなんて出来るはずがなかった

ただひたすら泣きながら、誰もいない部屋まで歩く


スマホが鳴る。

もうこれに苦しむ必要がなくなるというのが、嬉しいことのひとつかな


冬のひたすらに寒い風が、今晩ははっきりと感じとれる

寒いのはいやなので、帰ったらまずコタツに入ろうと思った



ポストを覗かずに部屋に戻るのは、4年目にして初めてだった



それにしてもきたない部屋だ


生ごみは玄関先に溜まり、

プラスチックごみはいつかまとめようとしたまま一ヵ所に散らばり、


洗ってないので使えない食器はキッチンを埋め尽くし、

なんの身にも付かなかったテキストが、部屋狭しと積み上がる。


こんな部屋のものたちのために、いったい何万円ものお金がかけられていたのだろう

これからもきっとかけられたであろう、お金の量を想像し、ホッと胸をなでおろした気分になる。


ひとまずコタツの電源を入れ、コタツに入った。寒いのはいやだから。




コタツに入ったら、また下を向いて考えごと




いまの立場を思い浮かべて、背筋が凍る


またあの人達のそっくりさんが現れる

彼らに、ひたすらひたすらひたすらに謝り続ける


何度も

何度も


何度も手を差し伸べられたし

何度もそれを振り払っていた

それもいつのまにか

気が付いたら振り払っていた


そのたびに

あの人達に似た人達は、凶暴に、冷酷になっていく


謝り続けてもなにも変わらなかった


やっぱりおかしいと思った


みんな苦労して生きてるだろうが

こんな苦労をするやつなんかこの世にいるのだろうか?


ずっと、ずっと考えて見つけた、どうしようもない答え



こいつがちゃんとした苦労ができない

この世か

この世でちゃんとした苦労ができない

こいつが

おかしいんだ



よし! それならば話が早い!

このままずっと同じなのは嫌だし、

おかしいものは消さなきゃね。


さあ……どっち?


うーん


そりゃあできることならこいつを消したくはない。


でも、

ねぇ

この世なんて消せるはずないでしょう?


もし

もし消せたとしてもよ、この世でちゃんと出来ているみんなが困るじゃないか。


というわけで――




なんか、いつのまにか、

奥の奥の小さなやつらが、そう決めたみたい


そしたらいつからか

背中あたりから黒い手がいっぱい生えてきていた



それからというもの

駅のホームなんかで

その黒い手は現れて


そっと背中を押しやがるんだ


電車の音が聞こえたりすると、より強く、


でも

度胸無しな足は動かないので

あきらめたのかすぐ消える、意気地なしなやつらだった


それからほぼ毎日、黒い手はいろんな提案をしてきた

それが、もう本当に面倒で、鬱陶しくて、邪魔だった。




でも、今日はそういう意味でもうれしい日


邪魔でしかなかったあいつらと、一緒にたくさん考えられる!


得るつもりはなかったけれど

いつのまにか

いろんなものから知識は得ていたんだよね


縄をつかったり

水につかったり

包丁を手に取ったり

ベランダに身を乗り出したり


黒い手との思案が弾む。


できるだけ

できるだけ

いたくないのがいいな

苦しくないのがいいな

迷惑がかからないのがいいな


なんて






















あるわけないよね そんなもの




発売前のゲームだってある

ずっと話をしてない友達だっている



でも、今はとりあえず



いまはとりあえず、こうしたい



最低で



失敗作の



なんの



いみもない





こいつを
































はやく
































何かに頭をたたかれた。

いや、ような気がしただけ。

たぶん、

こんなこと考えるのに、飽きただけだろう。


おまえは

本当は

こんなことしてる場合じゃない

こんなことしてる暇なんてない


急に饒舌にしゃべりだした

おまえもこいつのくせにさ




自分が頑張れば全部解決する


あの人たちはただ自分を心配してくれているだけ


そんなことする暇があるなら

LINEのひとつでも送れよ

送って安心させろよ



はい正論正論お疲れ様



気が付いたら朝ですよ。

またずっと考え事してて、眠れなかったんですか?


その朝まで持ち越した眠気は、またまた今から消費するんですか?




結局、いつもの落ち着かない日。

意気地なしは、今日も妄想だけしてご就寝。


結局こいつは、

どうしようもない出来損ないから、

哀れな悲劇の少年に成り下がることはありませんでした。


結局、これからもそうなので、安心してください。


















でも




ああ

つらいなあ

疲れるなあ

冷めないうちにできたもの。

なんなんだこれは



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― 新着の感想 ―
[一言] そんな日もあるけれど 俯瞰してみることにしているよ
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