不思議な少女との出会い
「あなたの願いを3つだけ叶えてあげましょう!!」
ジリジリと照りつける日差しを浴びて白いTシャツが汗でじんわり濡れていて気持ち悪い。何故こんな炎天下の中を歩いているのか‥足を止め考えた。瞬間、ぐうぅぅ‥と音がした。ーああ、そうだ。ご飯買いにスーパーに向かってたんだった。ーゴールまでの道のりを想像しながら鬱々とした気持ちで再び歩き始めた。
「‥やっと着いた‥‥。」
日差しと空腹に耐えながら、ようやくゴールにたどり着いた。これでグルグル鳴らしている腹を鎮められる‥とスーパーに足を踏み入れようとしたら、自動ドアが開いた。反対側から買い物を終えた客が出てきたようだ。とっさに横に避けその客が出ていくのを待った。その客が視界に入った。俺は視界に入ったその客に目を奪われた。黒髪黒目の目鼻立ちの整った容姿、白いワンピースに白いサンダルのまるで天使なような可愛らしい女の子だったから‥‥。ではなく、その女の子が溢れんばかりの買い物袋を大変そうに両手で抱えていたからである。手伝ってあげた方がいいのだろうか‥と考えている間に女の子はスーパーから出て行ってしまった。
(まぁ‥いいか‥。)
声を掛けるのを諦めてスーパーに入ろうとした時、わずかに音がした気がした。
「ん?」
振り向くと白い物が道端に転がっていた。
「あの子が落としていったのか‥?届けた方がいいよな。」
少女に落とし物を届けるため、小走りでそれを拾った。
プラスチックのパックに入っている白くて丸っとしたそれはーーーーー
「‥‥‥‥ゆで卵‥‥‥‥。」
そのゆで卵をジッと見つめていたが、これが少女の落とし物でえることを思い出し再び歩を進めた。
「あの‥!君!!」
「?‥私ですか?」
若干ふらつきながら少女は振り返った。
「‥そう。これ、そこに落ちてたんだけど君のじゃない?」
一息ついて少女にゆで卵を差し出す。それを確認すると少女は慌てて両手に抱えていた荷物を下ろし、俺の手にあったゆで卵をそっと掴んだ。
「落としたことに気付きませんでした‥拾って下さってありがとうございます!!」
「いや‥別に。それより、その‥荷物運ぶの手伝おうか?って、変な意味じゃなくてな?家まで持って帰るの大変そうだったから‥‥」
言ってから自分の発言の怪しさに弁解したが、余計に怪しくなってしまった気がする‥。
「いいんですか?ありがとうございます!」
全く疑うそぶりもなく了承する少女。
(‥俺が言えることでもないけど、大丈夫かなこの子‥)
少女から荷物を受け取ると、見るつもりはなかった買い物袋の中身が見えてしまった。
(‥‥ゆで卵??)
中はほぼゆで卵‥‥というかゆで卵しかなかった。ゆで卵パーティでもするのだろうか?ゆで卵パーティてなんだ。
「えっと、ゆで卵‥好きなのか?」
「はい!!!!!!」
少し食い気味にとても元気の良い返事が返ってきた。そうか、好きなのか。
「ゆで卵は本当に素晴らしい食べ物なんです!そのままでも美味しいし、塩をかけたりマヨネーズをかけたりケチャップをかけたりブラックペッパーをかけたりしてお手軽に味変も楽しめますし、茹で時間によっても黄身の熟度も変えられますし‥万能な食べ物ですよね!!!!3食ゆで卵でもいけます!!!!!」
思ってたより愛が深かった。
「そ、そうか‥。」
若干引いてしまった俺は悪くないと思う。
「じゃあ家まで案内してくれ。」
「はい!!」
大体10分くらい歩いたところで住宅街に入った。
「荷物持って頂いて、ありがとうございます!家すぐそこなので!」
「いいよ。気を付けてな。」
少女に荷物を返し、踵を返す。と少女が俺の服の裾をギュっと掴んできた。
「あの‥お礼させて下さい!ゆで卵を拾ってくれたお礼と、荷物を運んで頂いたお礼!」
「いや、別に大したことしてないから‥‥」
「いえ!お礼させて下さい!でないと私の気がすみません!!」
(‥別にいいんだけど‥)
何故か押しの強い少女に押されながら、ゆで卵でもくれるのかな‥と少女のお礼を想像する。あまり気にしないようにしていたが、先程からずっとギュルギュルと腹が鳴いていた。空腹の腹を満たすために買い出しに来ていたのに、何も買えずじまいだった‥と心の中でため息をつき少女の言葉を待つ。
少女は荷物を一度地面に置き、こほんと咳払いをして声高らかに言い放った。
「私、実は【カミサマ】なんです!」
「‥‥‥は?」
ぽかんとする俺を置いて少女はとても可愛らしい笑顔で言葉を続けた。
「あなたの願いを3つだけ叶えてあげましょう!!」