ビーンズ! 神が世界を終える時
奴は突然やってきた。
平穏に暮らしていたオレ達に怪物が現れたのだ。そいつは遥かに巨大な存在で、腕の一振りはオレの仲間達を空に吹き飛ばす。
奴は街を蹂躙しながらオレの元に近づいていた。
逃げる者は誰彼も宙に飛ばされている。
奴はどうして攻撃するんだ?
オレは神と崇めた存在に目を向ける。
そう、奴はこの街の神だ。この地を守り、ずっと恵みを与えてくれる存在だ。
オレ達はその恵みに感謝し平和に暮らしていたはずだった。
その神が今やオレ達の街を破壊している。一つ残さず更地にするつもりなのだ。
許さん! 例え神であっても許さんぞ!
そう叫んでも現実は非常だった。存在が違いすぎたのだ。
何もできないままオレも宙に飛ばされ意識が途切れた。
次に目が覚めた時には街がなくなっていた。
オレの下には街の仲間達が折り重なるように積まれていた。皆意識が無いのか、死んだように眠っている。
ここはどこだ、オレは一体どうなるんだ?
オレの疑問に答える者はいない。どうやらここに奴はいないようだ。白い空間にオレ達だけが詰め込まれていた。
これからどうする、逃げ道はあるのか?
そんなことを考えていると、突然別の空間に投げ入れられた。オレ達は雪崩のように落ち、どこが上かしたかも分からなくなった。
しかし悪夢は続く。
仲間の重みで動けない所に大量の水が流れてきた。
嘘だろ!
オレ達を溺死させるつもりか!
焦るオレを嘲笑うように水は全てを呑み込んだ。だが意外なことに水中は苦しくなかった。むしろ心地いいくらいだ。
呼吸ができているのか?
まさかオレにこんな能力があるとは驚きだったが、今は喜んでおこう。
だがそれも束の間の安らぎだった。しばらくするとオレは灼熱の空間に投げ込まれた。
ぐあああああ!
オレは熱で身が裂ける痛みに耐えきれず叫んだ。
やがて痛みは全身を支配し、オレは体が崩れていくのを感じた。
オレはもうすぐ死ぬのか。だがこの痛みから解放されるのならそれもいいかもしれない。
薄れる意識の中、死の救済を受け入れていると、オレの中に仲間達の意識が混ざってきた。
皆混乱したように騒いでいたが、体を焼く痛みが引くと静かに消えていった。
そこで初めて体の異変に気付いた。オレの体は皆と一つになり、白い立方体となって水中に浮いていた。
そうか、オレは生き残ったのか。
まあ、散々な目に遭ったが、生きているなら何とかなるだろう。
オレは生き延びたことを喜んだ。これから迫りくる絶望など知らずに。