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終焉『夢』

作者: 初倖


 悪夢を見た。ひどい悪夢だ。

 空を切る鳥が太陽を遮り、路地裏の生臭い風が漂う。いやに気分が悪くて、それでも走る。

 私は逃亡者で、世界中の人々から非難されている。確か二人だけ仲間が居たと思う。所詮夢だ、名前なんて忘れた。

 逃げている意味はただの手違い。ただの手違いで人を殺してしまった。その場で自主すればいいのに、隠れて逃げようとなんてしたから、私は立派な指名手配犯。

 あんなことをしたのは私じゃない。私なんかじゃない。人をオモチャのように扱い、ツメを剥がし、眼球を抉り、舌を引き抜き、四肢を千切り、全身に針を刺していくなんて、人間のやることじゃないもの。

 ゴミ箱の後ろに隠れたり、マンホールに下りて下水道に流れたり。それでもそれでも追手は来る。

 二人の仲間は居なくなった。一人目は追いかけてきた警察官に撃たれた。足を撃ち抜かれ、走れなくなったところを捕らえられてしまった。もう一人は……なんだったっけ。

 とにかく最悪な夢だった。最高の悪夢だった。

 悪夢は目が覚めれば終わるんだ。正常な意識をもって『ああ、夢か』と胸を撫で下ろす。

 夢でよかった。

 現実では、私はもっと全うに生きるのだ。犯罪なんかに手を染めず、無難に、平凡に、普通に生活するのだ。

 夢の中では、どちらが夢かわからなかった。夢が現実だって思ってた。

 きっと、これが現実だよね。

 ベッドに寝られるくらい、平穏な日常を送っているものが、私の日常。

 外からはスズメの声が聞こえるし、カーテンの隙間からは太陽の光が差し込んできている。

 大きく四肢を広げ寝転がったベッドの上で、引き戻された現実におはようをする。

 











































































 平凡な日常って、誰の日常だったかしら。


 夢から覚めた私は、きっと今から、オモチャのように扱われ、ツメを剥がされ、眼球を抉られ、舌を引き抜かれ、四肢を千切られ、全身に針を刺され、そして食べられるのだろう。私を見下ろす、憎悪に塗れた目をしたヒトたちの手によって。


 私が悪夢の中で殺したのは誰だったっけ? 私が空腹によって食べた人の名前はなんだったっけ?


 大きく四肢を広げられ、手足首を固定され寝転がった台の上で、引き戻された現実にさよならを告げる。


-了-



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