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明日の予定

 スペリーナ散策を終えた三人はその足で屋敷へと戻った。

 リザはそのまま鍛冶屋を開店させると言うので、二人は何か手伝えないかと声を掛ける。


「手伝い? 大丈夫よー。気持ちのリフレッシュができたなら、今度は体のリフレッシュをオススメするわよ」


 そう言ってすぐに鍛冶屋へ行ってしまった。

 残された二人は屋敷の椅子に腰掛けて明日の予定を立てることにした。


「明日も朝から依頼を受けるの?」

「そうだな。というか、それ以外にやることもないだろう」

「それもそっか。あー、でも今日は本当に驚いちゃったよ」

「本当にな。……俺たち、よく生きていられたよな」

「……うん」


 今になって考えてみても、恐ろしいことだと実感できる。

 双剣士ツインソードとして戦ったわけではなく、剣士ソードマンとして戦い敗れている。

 また同じことがあったとしたら、今度は生き残れないだろう。

 冒険者ギルドもあり得ないことだと言っていたが、そのあり得ないがあり得たわけだから二人が警戒し過ぎるのも無理はないだろう。


「……明日は、薬草採取にしようか?」

「うーん、それもいいとは思うけど、普通に魔獣討伐もありかなって」

「常時依頼の魔獣討伐ってことだよね?」

「あぁ。依頼になっているものは、少しだけ気が引けるんだよな」


 ジルの意見に関してはメリも同感だったので大きく頷いた。


「それじゃあ、明日は薬草採取に魔獣討伐でアトラの森に向かおう」

「うん! そう言えば、今日のジルは双剣士としても少しは戦えてたよね。あれってどうしてなの?」


 メリはゴブリンナイトと遭遇する前までのジルを見ている。

 双剣士だとゴブリンにすら負けそうになっていたジルが、今回はある程度の戦い方をこなせていた。

 多少見ることができる程度なのだが、それでも最初に比べると大きな進歩だった。


「リザ姉から貰った双剣のおかげだろうな」

「そうなの?」

「両手で使うために作られた剣を無理やり片手で使ってたし、短剣も片手では扱えるけど双剣に比べて長さが足りないからな」

「リザ姉って、やっぱりすごいんだね」

「……リザ姉も、二級の職業なんだよな」

「ジル……」


 高鍛冶師ハイスミスという天職を得ているリザを羨ましく思うと共に、生産職では自分の目的を達成できないことも理解している。

 ジルは、今日に至り戦闘職の天職でよかったと思えるようになっていた。


「大丈夫だよ、メリ。剣士も立派な戦闘職だ。そのおかげで今日も生き残れたわけだしな」

「……うん!」


 ジルの気持ちの変化を垣間見ることができたメリは嬉しそうに頷くと、その後は他愛のない会話で盛り上がったのだった。


 ※※※※


 ──日が暮れたとある屋敷の一室。

 そこでは三人の男女が酒を飲みながら話し合いをしていた。


「まさか、ゴブリンの巣の殲滅で出した依頼が完了されるとは思わなかったわね」

「完了するにしても、二桁は被害が出てからだと思っていたんだがな」

「まさか、あの原石げんせき等級のガキたちで倒したわけじゃないんだろ?」


 ジルとメリが受けたゴブリンの巣の殲滅なのだが、実のところゴブリンナイトがいると分かった上で偽りの内容が記載されて受理されたものだった。


「噂だと、等級の高い冒険者がたまたま近くを通り掛かって助けたらしいわよ」

「面倒なことをしてくれたものだな」

「ちっ! そいつが誰だかは分からないのか?」

「そこまでは噂でも流れてこないわね」

「誰だか分かればぶっ殺してやるのによ!」


 ミリアの名前は冒険者ギルドには伝わっておらず、リザにしか告げられていない。

 三人が誰かに話をしない限り知られることはないので、髭面の男性は無謀なことを口にする。


「相手が真珠パール等級以上でなければな」

「そんな奴、スペリーナにはヨルドの野郎しかいないだろう! あいつくらいなら俺だけでも倒せるぜ?」

「甘くみないことだな。もしヨルドが敵になるなら、三人がかりで確実に殺す。いいな?」

「へぇへぇ、つまんねえ男だなぁ」

「作戦のためだからな」

「うふふ、私は好きだけどねぇ」


 不穏な空気を残したまま、唯一の女性が立ち上がり部屋を後にする。

 続いて髭面の男性も部屋を出ると、残された細身の男性は窓から顔を覗かせている月を見上げた。


「……我らが目的のために、スペリーナには犠牲になってもらおう」


 そう口にした細身の男性もゆっくりと立ち上がると、そのまま部屋を後にした。

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