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息ができないこの世界で  作者: 琴
創造主マリアの物語
5/5

王との交渉 リース、ヴィーンとの再開

豪華な城の、豪華な応接間にマリアは通された。


『久しぶりだな、マリア。』


『ええ、お久しぶりね王様。ヴィーンもお久しぶり。』


王と対になっておいてある椅子に、マリアは腰かけた。後ろにはヴィーンと数名の護衛がついている。


『王には敬語を使え。お前はいつも、失礼極まりない。』


『自分よりも18歳も年下の女性に対して、警戒しすぎじゃあないかしら。』



ヴィーンは眉間に皺を寄せた。少しの沈黙の後、王様は咳を切って話を始める。



『それで、今日はどうしたんだ。君から訪ねて来るなど、珍しい。』


『ええ、実は契約をしに来たの。』


『契約……?』


首を傾げた王に、マリアは説明をする。ホーリーの民たちへの資源のことや、森で起きた不可解な状況のこと。そして……。


『あなたがホーリーに手を回してくれるのなら、私はこの国の護衛につくことを約束するわ。不思議な現象のことは耳にしていたから、そろそろ捜索でもしようと考えていたのではないのかしら。』


『何故、それを……。』


『このくらい、察しが付くわ。私なら兵たちの安全も確保することができるのよ。どうするの?』


王様にとって自分自身が味方につくことは大きいと、そしてこれは断れないとマリアは分かっていた。


『あ……あぁ、わかった。資源のことは私がどうにかしよう。だが……魔法の交渉は難しそうだぞ?』


『ありがとう、交渉は私がやるわ。』



王様の承諾をもらうことができれば、あとは魔法石を使用しての魔法の転送の件だ。魔法石の量のほうは王がいるから大丈夫だろう。問題は魔法だ。


『あいつは今日、期限が悪いぞ。明日にした方がいい。』


『いいえ、大丈夫よ。女の気持ちを分からないあなたには口を挟む権利はないわ。』


マリアという客人にはヴィーンが付添人を任されていた。長い廊下を歩いてある部屋へと向かう。

やがて、大きな扉の前へ着いた。




マリアは少し明るめの声で、うれしそうな顔で、扉へ向かって名前を呼ぶ。


『リース!!!』


その直後、ガタガタと物が落ちたかのような音が響き、勢い良く扉が開かれた。


『マリア!!!』


真紅の長髪のハッキリとした顔立ちのリースが、強くマリアに抱きついた。

少し露出の多い部屋着から、きれいな肌が見え隠れしていた。


『だっ……誰だ……。あのリースが……信じられない。』


ヴィーンは目を丸くして立ち尽くすばかりだった。



『どうしたんだ! 私のために来てくれたのか? 何でも言ってくれ!!!』


『ありがとう、大好きよリース。今日はあなたの力を借りたくてここに来たわ。』


『そうか……魔法のためか……。』


『そうよ。でも、あなたにもすごく会いたかったのよ。』


『っ!!!……そっ、そうか!!! 私もだ!!!』


ヴィーンには耳と尻尾がリースについているように見えた。

(リースなはこんな面もあるのか……知らなかった……いつの間に仲良くなったんだ。)


慣れない状況に驚きながらも、事を進めようと口を開く。


『じゃれあいもそこまでにしろ……。マリア、要件を伝えに来たんじゃないのか。』


『うるさいぞ、ヴィーンは黙っていろ!!! 私とマリアの邪魔をするな!!!』


勢い良く、反論が返ってくる。


『そうだったわ。後で二人きりで楽しみましょうね。』


『ああ! そして、私の魔法に用があるのなら試しながらのほうがいいだろう?試験場に移動しよう。』





三人は魔法の使える試験場へと移動した。その間にマリアは説明を済ませた。


『つまり、私の魔法と魔法石でホーリーに何かを転送してみればいいんだな!』


『ええ、じゃあまず私たち自身があちらへ行けるかどうかやってみましょう。』


リースが少しうつむき、技名を唱える。


『対象確認、ルーク!!!』



三人の足元が白く光りだす。マリアが魔法石を使用すると、広範囲にわたってまぶしいほどの光が地面から三人を照らした。そのすぐ後、その場から三人は一瞬にして消え去った。


眩しさが収まり、ヴィーンは薄く目を開いた。どうやら、転送は難なく行えたようだ。その後も魔法石を使用し対象物を増やして行った。量が多くなっても何ら問題は生じなかったので、これからはリースの魔法がホーリーの人々にとっての命綱となることが今、確定した。


(これで、皆との約束が遂行できるわ。)


嬉しそうなマリアの横顔をヴィーンは見つめている。


『……良かったな。』


マリアには聞こえない小さな本音が、ヴィーンの口から漏れ出した。



『そういえば、マリア。』


リースが何かを思い出したのか、マリアと視線を絡める。


『もう少しで、森での出来事についての調査隊が出されるんだ。私とマリア、そしてヴィーンは恐らく前線に出ることになるだろう。』


『そうなのね。』



護衛を務めることになったマリアの実益になると思い、リースは現段階で予定されていることを話した。

リースによると数日後、ステラ大平原にて不可解な消滅を目撃したものが多数いたため、調査はそこで行われるそうだ。


(ミツの可能性につながる捜査だわ。必ず、私がミツを……。)


強い意思を燃やし、マリアは綺麗な目で明日を見つめた。





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