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「では本日の授業は終わります。姫様もライアン様も授業の復習をしっかりと行って下さいね。」
「分かりましたわ。」
教師が教室から出たのを確認すると、リリアはライアンの服を掴んだ。服を掴んでない手にはピンク色のドレスを持っている。
「さあ交代の時間だ。今日も頼むよ偽姫様。」
リリアとライアンは特別学級で他にクラスメイトはいない。リリアは教室では可愛らしいドレスに身を包み、立派なレディーを演じていた。しかし、一歩教室から外に出ると姫の護衛騎士として、女子に大人気のライアンになりきるのだ。国王から話を事前に聞かされた信頼できる数少ない教師たちは、リリアの教室と外とのギャップに戸惑い二度見するほど、リリアの態度は違っていた。
「ハイハイ、とっととドレスに着替えますよ。」
何で毎回女装するのかと不満が募る。だが、文句を言った所で女装が中止になる訳ではない。ライアンは特に反論せずドレスに着替えようと、服のボタンを外していく。
「ちょっ、まだ私が更衣室に行ってないんだけど。」
「別に姫様しか教室にいないし、俺は見られても気にしませんよ。」
「わ、わわ、私が気にするのよ。バカ。」
リリアは手に持っていたドレスをライアンに投げると、教室の中に設置されたリリア専用の更衣室に入った。
「あんなに顔を真っ赤にして怒ることかよ。ドレスもシワがあるし、本当にリリアには困ったものだ。」
ライアンはため息を吐くと、シワを伸ばし慣れた手付きでドレスに着替えた。そして棚からウィッグを取り出し装着する。メイクはまだだが、これだけでライアンは既に男の子には見えない。
「失礼します。ライアン様のメイクをさせて頂きます。」
ライアンはメイクが苦手だ。なので毎回リリアの用意した侍女にメイクを頼んでいた。だがメイクと言っても対したことはしない。頬にうっすらチークを入れ、口紅を塗る程度だ。これだけでも不器用なライアンは出来ないのだ。
「流石はミラね。ライアンが可愛い女の子にしか見えないわ。」
「ありがとうございます。」
いつの間にか騎士の服に着替えたリリアが横に立っていた。リリアは軽く口角を上げると、ライアンの手を取り立ち上がらせる。
「さあ姫様行きましょう。」
「ええ。」
リリアのエスコートで食堂へ向かうライアンは、不満を抱きながらも完璧に偽姫になりきるのだった。