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公爵令嬢な私が世界で唯一のなにかを確立するまで  作者: 狂った帽子屋
幼女な公爵令嬢
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公爵令嬢の日々。その2

「これは、ちょっと今日のお披露目には大人っぽくしすぎかしら」

「そうですね。私には少し早いような気がします」

「こっちは、…可愛いわね」

「ありがとうございます。しかし、少々ふりふりしすぎな気がします」

「ティファニー様、発言をお許しください」

「許すわ」

「ありがとうございます。私としては年相応な愛らしさと、ケイティ様の知的さを思わせるこちらのドレスがお似合いになるかと。」

「ケイティ、ちょっと着てみてくれる?」

「はい、わかりました」


 さっきから中々決まらなかったが、クラリッサのお陰でこれに決まりそうな予感がする。クラリッサの説明は的を射ているし、やっぱり出来るメイドなんだなぁとしみじみする。


「どうでしょうか?」

「とても似合っているわ。そうね。これにしましょうか。」


 やったぁ!普段は落ち着いた行動をとる様に思考も多少気をつけているが、こればかりは喜ばずにいられない。やっと着せ替え人形から卒業できるのだ。選ばれたのは青を基調にしたドレスだった。ヒラヒラとレースはついているのだが、シンプルさもある。背中が大きく開いていた一着目やこれでもかとヒラヒラしていた二着目よりは私も落ち着いて着ていられる。


「さて、ドレスの次は髪飾りよ」

「待ってください、お母様。聞いていません」

「ええ、言ってないもの。貴女、ドレスの他にも選ぶと言えばなんとか逃げ出そうとするでしょう?」

「もちろんですよ!」


 数週間前に完成したばかりの認識干渉の術式を描いた紙を使い逃走を試みるが、当然のごとくお母様に魔法で拘束される。


「あらあら、言った側から逃げだそうとするなんて」

「実の娘を魔法で拘束するなんて」

「まあ、酷い言い方ね。優しくしてるでしょう?」

「もうすぐ三歳になる子供からすると強烈ですけどね!」

「それで、いつの間に作ったの?」

「……空いた時間に」

「つまり、幼い貴女の空いてる時間といえば、ずっとね」

「……はい」

「いい?これから、こういうものは、私に一度見せなさい。一流の魔法使いには、通用しないわよ。このままじゃ」

「はい。…はい?」

「私が教えてあげるわ。天才魔法使いなんて言われてた頃もあるもの。未だに衰えてないのよってところ見せてあげる。」


 忘れていたがお母様の旧姓はタイラーなのだが、ティファニー・タイラーは、魔法の才に溢れているのみならず、魔術においても優れた成績を残したらしい。これらの話はお母様にベタ惚れしているお父様から聞いたものなため、信憑性は少し薄れてしまっているが、事実タイラー家は魔法の分野において優秀な魔法使いを多く輩出してきた名家であることから、事実であると思われる。

 私もしっかり才能を引き継いでいるようで、自宅にある魔力量測定器を(隠れて)使ったところ壊れているような数値が出た。この年齢からしたら壊れているというレベルで、一流魔法使いの中ではそう珍しい数値ではない。とはいえ、やはり今でこれなら将来的には化け物レベルまで行く可能性はある。魔力の他にも魔法の練習も順調だ。少なくとも、家名に泥を塗ることにはならないだろう。


「お願いします!お母様」


 今日からお母様は私の母親兼魔法の師匠となるのだ。

 壮大な物語が始まりそうな一文だが、今はそんなことよりパーティーだ。私の初お友達が出来るかもしれないのだ。この屋敷には多くの使用人がいるが、年の近い子はいない。だから、楽しみで楽しみでたまらない。面白い子がいるといいな。私は興味が湧くと、とことん知りたくなる性格してるから、変人に思われないように、今日は少し抑えめでいこう。そんな決意を胸に抱く。


「じゃあ、髪飾り。張り切って選んでいくわよ」

「え、あ、はい」


 パーティーへの道のりは長く険しいことをすっかり忘れていた。

 そのあとも次から次へと髪飾りを付け替えられ、長い時間をかけ、結果としては紫の髪飾りに決まった。私の髪色はいわゆる白銀しろがね色と言われる色だ。お父様は深い青でお母様はクリームのような色合いの髪をしているから、何処から私の髪色は来たのかと聞くと、父方のお婆様が若い頃から綺麗な白銀の髪をしていたらしい。

 お婆様は今年で三十九歳になるらしく私の誕生日の約一ヶ月後にこの屋敷にやって来て誕生日会を開くらしい。先ほどから、らしいというのは私は、お婆様にまだ会ったことがないためである。貴族の子は三歳の誕生日を迎えるまで両親や兄弟、屋敷の中心的な使用人にしか会うことが出来ない。そんな仕来たりがあるが故にそれはもう美しいと評判のお婆様にも、逞しいらしいお爺様にも会ったことがないのだ。

 父方の祖父母には一ヶ月もすれば会うことが出来るが、母方の祖父母には少なくて数年長くて一生会うことは叶わないだろう。お母様は他領の出身なため仕方がないのだが、少し寂しくはある。


「ケイティ」

「はい?」

「ぼうっとしてたわね。ほら、髪飾りこれが一番ドレスにも合うわ」

「……わぁ、これは、綺麗ですね!」

「あら、珍しくお気に召したわね」

「綺麗なものは好きですもん」

「ふふ、そういう所は小さくてもちゃんと女の子よね」

「小さいは余計ですよ!」


 お母様が選んでくれた髪飾りは寒色系の花飾りがいくつかついているものだ。私の白銀しろがね色の髪にはよく合っている。赤やなんかも私の髪色には栄えるだろうが、ドレスが青を基調にしているから、暖色の赤は喧嘩するだろう。

 お母様は私と目線を合わせ、髪を撫でてくれる。ふわりふわりと撫でられる。するりと髪に触れられる。私はその手に頭を委ねる。赤ん坊の頃からしている親子の触れ合いだ。段々と少なくなってきている親子の触れ合いだ。

 貴族の子は下町の子より早く、子供らしさを押し込めなければならない。立派な一人の貴族としての振る舞いを強いられるのだ。私は些か早熟過ぎたようだが、どちらにしても、あと数年で親離れしなければならなくなるのだ。なら、早くて困ることはないだろう。たまに、お母様が寂しそうな顔をしているのを見ると、もう少し子供らしくいても良かったのかもしれないと思うことはあるが、今さらどうにもならない。私はラトクリフ家の長女として恥ずかしくないように過ごすだけだ。好奇心のせいで時より暴走してしまうが、それはそれ、これはこれである。

 考えることは大袈裟だが、自分らしさは忘れずにいようと思っている。知りたいことがあれば、それを知るためにひたすらに努力は欠かさない、そんな自分と上手く付き合って行くことも大切だと思う。

 おそらく、好奇心により令嬢らしからぬ行動をとってしまう時も来るだろう。そんな時こそ後々のフォローであったりが重要になってくるのだ。とはいえ、一人でこなすのは難しいので、いずれ私にも私だけの従者が必要になるのだろう。そんな存在が出来るのは何時いつになることやら、先は長そうだ。


「じゃあ、身につける物も決まったことだし、体を清めに行きましょうか」

「お風呂ですね!」

「貴女は昔からお風呂が好きね」

「お風呂は心の洗濯。というそうですよ!」

「あら、そうなの?また、本で読んだのね」

「はい!」


 お風呂のときはお母様が体を洗ってくれるのだ。自分でも思うが、本当はまだお母様に甘えていたいのだ。親離れには少々早いのもあるからだろう。貴族らしくというのも、難しいものだ。

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