閑話 6 雷帝 & 氷帝 VS バグヘッド
勝手ですがストックが減ってきた為、月、水、金、18時の投稿とさせて頂きます。
この世界のベッドは素晴らしいわ。水が入ってるみたいだけど、全てのベッドがこうなのかしら? この沈み込む感じ、ひんやりとした心地良い温度。タプンタプンしていて波に揺られているみたい。・・・・・・もっと冷やしてみたら、更に快適になりそうね。後で試してみましょう。
冷えた果実酒を片手に冷えたベッドの上で、夜空を見ながら・・・・・・うん、最高だわ。エリシア早く帰って来ないかしら?
バシャアアアァァン!!
!! 今のはエリシアの雷!? さっきの気配の持ち主と戦闘になったのかしら? 行かなくちゃ!
「おらああああ!」
「・・・・・・」
「うらあ! とっとと死ねよバグソヘッドが!」
「・・・・・・」
俺はバグソヘッドをトールハンマーで滅多打ちにしている。ふん、何がこの前の続きだよ。てめえがボコボコにされる続きがしたかったのかよ。とんだ変態野郎だな、だからバグソなんだよ。
「ぶはははは! どうしたクソ野郎! 手も足も出ねえじゃねえかよ! 自殺願望でもあんのか?」
「クク・・・・・・」
「? どうした? 殴られ過ぎておかしくなったか? いや、元からおかしかったからな、正常に戻ったのか? ぶははは」
「ククククク」
・・・・・・何だ? 本当にイカレたか?
「グハハハハハハ!」
「ぶはははは! とうとうイカレたか! てめえみて―のがこのエリシア様に喧嘩を売るからこうなるんだよ! 死ねやボケ!」
「死ぬのはてめえだ!!!」
ゴギイッ!
バグヘッドが持つ棍棒が、俺の右の太ももに当たり吹き飛ばされた。
「ぐうっ・・・・・・」
や、やべえ。骨が折れたか。
「おいおい雷帝様よぉ、おめぇやっぱり口だけだな。この前もそうだったけどよ、お前の攻撃は痛えだけで俺様には効いてねえぞ? ぺチぺチぺチぺチやッてんだけじゃねえか。雷だって多少チクッとするだけで、なんの効果もねえぞ」
「な、なんだと? 俺の雷撃が効いて無い?」
「おう。それなのにてめえは馬鹿の一つ覚えで一生懸命殴ってきやがるからよ、ついつい笑っちまったぜ」
「ざけんな! 俺の雷撃が効かねえ訳ねぇだろうが!」
俺は渾身の雷撃をバグヘッドに撃ち込む。
ドガアァン!
落雷並の威力だ。死なないまでも、相当なダメージを与えて・・・・・・。
「だから効かねえって言ってんだろ」
そ、そんな馬鹿な・・・・・・。
「やっぱりよ、攻撃ってのは小手先の技や目晦まし的な奴じゃなくてよ――」
バグヘッドは俺に向けて横薙ぎに棍棒を振るう。
ボゴオッ!
俺は吹き飛ばされ、建物の壁にめり込んだ。
「こんな感じの純粋な暴力が一番だよな」
バグヘッドが壁にめり込んだ俺に近づいて来る。
「おいエリシア、まだ生きてんか?」
「・・・・・・い、きてんよ、クソが・・・・・・」
「おうおう、流石雷帝様だ。こんなもんで死なれたら興冷めだからな、もっと頑張れよ」
く・・・・・・この野郎、何で雷撃が効かねぇんだ? ・・・・・・アリシアがこっちに向かって来てるな。それならバグヘッドをアリシアの氷で固定して、直接触れて雷を流し込んでやる。
「それはそうとアリシアは何処だ? アリシアも殺すリストに入ってんからよ。一緒にいたんだろ? 何処だ?」
・・・・・・会話を続けさせて、傷の修復と時間稼ぎをするか。
「・・・・・・俺とてめえの間にはいざこざがあったが、アリシアは関係無いだろう」
「まあそうだな。俺とアリシアには直接は何も無いな」
「じゃあ何でアリシアも狙うんだよ」
「ぐはははは、知りたいか? 答えは単純だ。気に入らねえんだよ。ただそれだけだが、殺意を持つには十分過ぎる理由だろ?」
「本当にイカレてやがるな、てめえはよ」
よし、もうアリシアが来るな。俺の傷も動ける程度には修復できた。
「・・・・・・ん? 誰かこっちに来てるな・・・・・・誰だ? アリシアか?」
辺りの温度が下がって来た。
ビキビキビキ・・・・・・辺り一面が氷で包まれる。
「・・・・・・何してるのバグヘッド。何でエリシアが壁に埋まってるの?」
アリシアは無表情でバグヘッドに問いかける。
「おうアリシアか。全くエリシアは何考えてやがんだよ。顔合わせたらいきなり襲ってきやがってよ。正当防衛ってやつだぜ」
「そうなの? エリシア」
「んな訳あるか。バグソヘッドが襲い掛かって来やがったんだよ。俺とアリシアが気に入らねえから殺すって言ってな」
「おいおいエリシア、やり返されたからって俺に擦り付けんなよ」
周囲の温度が更に下がる。
「ねえバグヘッド。私があなたとエリシアのどっちを信じると思うの?」
「ぐはははは。そりゃあエリシアだろうな」
「その通りよ。仮にエリシアに非があったとしても、エリシアの敵であるあなたは殺す」
「ふん。どうやって殺すってんだ? やってみろや」
「何言ってるの? もうやってるわよ?」
「あん?」
バグソヘッドの馬鹿が掛かりやがった。
「ねえバグヘッド、知ってる? 超低温の世界では、あらゆる物の動きは停止するのよ? あなたも例外では無いの。バグヘッドはどれ位の低温まで動けるのかしら?」
「ああ? 何馬鹿な事言って・・・・・・? ああん? くっ、マジ、か? 本当に身体が、動か、なく、なって、き・・・・・・」
「・・・・・・思ったより早く動かなくなったわね。で、エリシアは丈夫なの?」
「おう、足と腕を折られちまったからよ、修復を急がしていたから動けなかっただけだ」
俺は壁から這い出しバグヘッドに向かう。
「いててて。この野郎、バカみてぇな力で殴りやがってよぉ。アリシア、このクソ野郎まだ生きてんのか?」
「そうね、まだ生きてるみたい。しぶとい奴ね」
「もうちょっと凍らせりゃあ死ぬんじゃねえか?」
「そうね。あと少し温度を下げれば・・・・・・え?」
「ん? どした? アリシア」
ピキ・・・・・・パキ、ピキキ、ピキピキビキキキ!
アリシアの氷にヒビが入っていく。
「そんな!? 私の氷が!」
バキイィィン!
「うがああああああっ!」
「おいアリシア! 割れちまったぞ!」
「ふうー、ふうー、ふうううう・・・・・・危ねえ危ねえ。ちょーっと油断しちまったな」
「そんな事って・・・・・・」
「うははは。おら、マヌケ姉妹。第二ラウンドだ、かかってこいよ。うはあははは」
「けっ。てめぇ俺ら二人を相手にして勝てると思ってんのか? おいアリシア、このクソ殺すぞ」
「・・・・・・ねえエリシア、バグヘッドの身体・・・・・・大きくなってない?」
「あん? バグソヘッドが大きくなった? そんな訳・・・・・・あるな。どうなってんだ?」
「ああ、気付いたか? ちょっとばかり本気を出しただけだ。心配すんなよ」
「けっ、殺るぞアリシア」
「ええ。・・・・・・アイスジャベリン」
アリシアは、バグヘッドの周囲から氷の氷柱を撃ち出す。
「こんなもん効くかあ!」
「それは囮よ。あなたの頭は猿以下なの?」
氷柱を弾いた両腕を始め、頭以外の身体全体が再び氷で固められたバグヘッド。
「よっしゃ、ナイスだアリシア! その小さい脳みそ焼き崩してやるぜバグソヘッド!」
俺はバグヘッドの肩に乗り、頭を挟み込むように両手を添える。
「喰らえ! ペネトレイト!」
バチチチチッ!
右手から高威力の雷撃を放ち続け、左手で受け取める。両手の間にある物は、雷撃により焼け焦げる。今迄頭にこれを喰らって生き残った奴はいない。脳その物を破壊するんだからな。
「どうだ? 死んだか?」
俺はバグヘッドの肩から離れる。バグヘッドは顔にある穴という穴から煙を出して、微動だにしない。
「ふん、俺ら姉妹に喧嘩を売るからこうなるんだよ」
「死んだみたいね。じゃあ行きましょぶぐうっ!」
いきなりアリシアが吹き飛んだ。地面を抉りながら転がって行く。
「アリシア!!」
「ああ~、今のはちょおぉっと効いたな。一瞬意識が飛んじまったぜ」
「お前・・・・・・」
「ん? 何だエリシア、あんなもんで俺が死ぬとでも思ったのか?」
バグヘッドは俺の両腕を掴む。
「全く手癖の悪い女だな。もうちょっとお淑やかにしろよ? 一応女だろ?」
ボギィッ! ビキィッ!
「ぐあああああっ!」
この、クソ野郎、俺の、俺の両腕を折りやがった!
「手癖が悪いって事は、足癖も悪いよな?」
ぐしゃっ、ぼぐぅっ・・・・・・
バグヘッドは俺の右足の甲を踏み砕き、そのまま左の膝を蹴り壊す。俺は地面に投げ捨てられた。
「これで逃げられねえだろ? アリシアは・・・・・・後でいいか。先にお前だよエリシア」
バグヘッドは右足の膝を蹴り抜く。
ぐしゃあっ!
「ぐむううっ!」
「んー・・・・・・転がってんと殴りにくいな。ちょっと待ってろ」
くっ、この野郎好き放題やりやがって。だが先に傷の修復をしねえと。両手両足を壊されたら、流石に動けねえ。
「おいエリシア、いいのがあったぞ」
バグヘッドは数本の棒を持って来た。
「そこの柵から取って来た。おら、来いよ」
バグヘッドは俺の髪を掴み、そのまま引きずって行く。この野郎、殺す。絶対殺す。・・・・・・しかし何でだ? 何でこいつには俺の雷撃が効かないんだ?
バグヘッドは俺を壁に押し付け、
ドズウッ!
「ぐああっ!」
俺の手に棒を突き刺し壁に固定しやがった。
「おら、反対もだぞ」
グズウッ!
「ぐうっ!」
俺は両手を広げた状態で壁に固定された。
「ふう、これで殴りやすくなったな」
「てめぇ、絶対に殺してやるからな」
「うひゃひゃひゃひゃ。口の減らねえ女だ。お仕置きが必要だな」
ドスウッ
「ぐううう・・・・・・殺す、殺してやる」
「ひゃひゃひゃ、何だ? 反対もか?」
グリグリグリ――
「両手両足刺さっちまったな。まだ生意気な口が利けるか? ん? どうだエリシア」
「凍りなさい、アブソリュート・ゼロ」
バグヘッドの胸から槍が生えて来た。いや、アリシアの氷槍か。アリシアが刺した槍から冷気が広がって行く。
「ちっ、もう戻って来やがったか。まあ探しに行く手間が省けたか」
「・・・・・・何で平気なの?」
「あん? 心臓でも刺したつもりか? うひひひ。俺の心臓がそこにあるって誰が言った?」
「ダメだ! 逃げろアリシア!」
バグヘッドは振り向きざまに裏拳を繰り出して来る。背中から氷槍を突き入れていた私は、避けられずにまともに喰らって殴り飛ばされた。
「アリシア!」
「ふん、オメエは次に殺してやるからもうちょっと待ってろや。さてエリシア。お楽しみの続きだ」
ドゴン! ボグン!
・・・・・・壁に張りつけられた俺を殴りつけて来る。流石の俺も、躱しようが無い無抵抗の状態で殴られ続ければ・・・・・・。
「ひゃああっはっははぁー!!」
駄目だ、い、意識が・・・・・・。俺達の攻撃が全く通じないなんて・・・・・・こんな事は初めてだ。このままじゃ俺達2人共・・・・・・。
「女串刺しにして何やってんだ?」
ん? だ、誰だ? ・・・・・・バグヘッドの後ろに男が立っていた・・・・・・。




