閑話 5 雷帝 & 氷帝
私の名前はアリシア・スカーテイル。氷帝と言う二つ名を持っている。名前の通り生物だろうが無機物だろうが、液体だろうが気体だろうが。一瞬で凍らせることが出来る。
それに凍らせるだけじゃない。氷自体を自ら作り出し、それを武器として使う事も出来る。
今は空気中にある水分を凍らせて、鳥の氷細工を作っている。何故かって? エリシアがこっちに向かって来ているから、待っている間の暇つぶし。
エリシア・スカーテイル。私の双子の姉。雷帝と言う二つ名を持っている。エリシアは二つ名の由来その物の雷を使う。そして雷その物の激しい性格をしている。それに原理は解らないけどエリシアは空を飛べる。雷だから?
私は飛ぶことは出来ないけど、氷の足場を作って空に上がる事は出来る。
・・・・・・そろそろね。
・・・・・・ィィィィイイイッバシインッ!
雷が私の近くに落ちる。
「よおアリシア。お前も問題無くこっちに来れたんだな」
「そうね。エリシアも問題無い?」
「おう。只よ、飛ばされる前にバグヘッドのクソと殺し合いしてたんだけどよ、あとちょっとって所で飛ばされちまってよ。ったくよー」
「何やってるのエリシアは。闘う相手が違うでしょうに」
「だってよ! あのクソ野郎がアリシアの事馬鹿にしやがったんだよ! 殺したくもなるだろうが!」
「ふう。解ったわ、ありがとう。私の為に怒ってくれたんだもんね」
「おう、そうだ!」
エリシアは私の敵には烈火のごとく怒る。私もエリシアの敵には容赦しない。勿論自分の敵は言うまでも無い。私達は双子。自分の分身を互いに守り合う。エリシアがバグヘッドと闘うなら、私も手伝う。
「で? どうするアリシア」
「そうね、特にやる事も無いからね。この世界の文化でも見に行ってみる?」
「ええー? お前はほんっとそう言うの好きだよな。何が面白れぇんだよ」
「どちらにしろ、ここだと何もできないから、街の方でも行ってみましょうよ」
「まあ確かにな。つーか何でこんな山の中にいるんだよ?」
「飛ばされた先がここだったのよ。好きでいたんじゃ無いわ」
「そっか。来る途中に街があったからよ、そこに行こうぜ」
「遠いの?」
「歩いて行ったら半日はかかるかなぁ?」
「そう。じゃあ何時もので行きましょう」
「おう」
何時ものとは、私が氷の道を作る。そしてエリシアが指向性を持った雷を氷の道に流すと、かなりの速さで進むことが出来る。何故かって? そんな事解らないわ。出来るんだから理由なんてどうでもいい。
私達は氷の道を進み、一時間位で街に着いた。
「あの速度で一時間もかかってるんじゃ、歩いたら半日じゃ済まなかったでしょ」
「ぶははは。まあ良いじゃねぇか、着いたんだから」
「まったくもう・・・・・・で、どうしようか? 拠点にする場所でも探す?」
「アリシアが氷の家作ればいいじゃん」
「嫌よ。ふかふかのベッドで寝転がりたいわ」
「別に俺達は寝なくても平気なんだからよぉ、ベッドなんかどうでも良いだろうに」
「い・や。私はベッドを探します」
「解ったよ。アリシアは変な所に拘るからなぁ」
「エリシアが無頓着過ぎるのよ」
因みに私達は食事をする必要も無い。そう言った生命体なんだから。只、必要が無いだけであって、食べれない訳では無い。美味しそうな物は進んで食べるわ。お腹も膨れるし、お酒を飲めば酔いもする。要は私達にとって食べ物飲み物は嗜好品ね。無くても良いけど、あれば生を豊かにする。
「でもよ、知らない世界でアリシアの好みのベッドを探すって・・・・・・難しくねえか?」
「いいじゃない。別にやる事も無いんだし。それとも、エリシアは何かやりたい事があるの?」
「・・・・・・ねえな」
「じゃあいいでしょ? あ、エリシアはその辺でお酒でも探して来たら?」
「お!? いいのか?」
「ええ。別にそれを咎める理由も無いでしょ? 私はベッドを探してるから。適当に追って来てよ」
「むっはー! アリシア愛してる! じゃあちょっと行って来るな」
「ええ、適当に私のも持って来てね」
「おう、任せとけ!」
そう言ってエリシアは飛んで行った。・・・・・・空からどうやってお酒を探すつもりなのかしら?
それから数日は、あちこちの街を転々としていたわ。街並みを見ながらベッドを探す。見つかったらその日はそこに泊まる。寝なくてもいいんだけどね。エリシアはお酒を飲んでいるから、それに付き合ってるの。そして翌日は次の街に移動する。それを繰り返していたわ。
そして次の街に着いた。
同じ様に適当に建物の中を見ながら散策する。・・・・・・エリシア? ・・・・・・いえ、違うわね。何かしら? エリシア以外の生命の反応を感じるわ。私はその反応に近づいて見る。
・・・・・・男が一人で歩いている。あら? 眷属みたいね。更に近づいて話掛けてみる。
「こんにちは」
「・・・・・・」
・・・・・・言葉が通じないのかしら?
「あなた眷属よね?」
「・・・・・・ああ」
なによ、通じるじゃない。警戒はしてるみたいだけど、敵意は感じないわね。
「何をしてるの?」
「食べ物を探している」
「ふーん。ねえ、あなたは拠点みたいな物はあるの?」
「・・・・・・いや、無い」
「ふかふかのベッドを探してるんだけど、心当たりは無いかな?」
「・・・・・・そうだな・・・・・・あそこに背の高い建物があるだろう?」
「ええ、あるわね」
「あそこの上の方ならあるかもしれない」
「・・・・・・そう、解ったわ。ありがとう」
男はそのまま歩き去った。・・・・・・ふーん。あれが新しい眷属か。大した事無さそうね。
私は男に言われた場所まで来ていた。
「んー、まあまあかな?」
背の高い建物の一番上の部屋。そこには大きなベッドがあった。
「でも上り下りが面倒ね。他を探そうかしら?」
それともこのベッドを下まで持って行こうかしら?
バシュウウゥゥン・・・・・・
「アリシア、良いの見つかったか?」
「まあまあね。エリシアこそ早かったじゃない」
「ああ、何か変な感じがしてな。戻って来たんだ」
「変な感じ?」
さっきの男の事かしら?
「感じないか? 向こうから何かが近づいて来てるんだ」
エリシアが指す方向は、男が行った方向とは逆を指している。
「・・・・・・言われてみればそうね。何かしら? 禍々しい物が近づいて来てるわね。真っ直ぐこっちに向かって来てるのかしら?」
「だろ? こっちに来てるよな? 何だろうな?」
「考えてもしょうがないわ。敵対するなら迎え撃つし、そうで無いならどうでも良いし」
目的は私達じゃなくて、さっきの男かもしれないし。
「そう言えばさっき眷属に会ったわよ」
「なに? 誰だ?」
「今回新しく眷属になった人みたい。あっちに歩いて行ったわ」
「じゃあそいつはこの気配とは関係ないのか?」
「方向が逆じゃない。違うでしょ?」
「んー、やっぱり気になるな。ちょっと見て来る」
「構わないけど、やたらに闘わないでよ?」
「相手によるな」
そう言ってエリシアは飛んで行った。まあいいわ。私はこのベッドでコロコロしてるから。
・・・・・・やっぱりこの気配はおかしい。近づいて解ったが、明確な殺意を持ってこっちに向かって来ている。そろそろ見えるか・・・・・・ん? あれは・・・・・・。
俺はそいつの近くに降り立つ。
「何だ、お前もこの辺に飛ばされたのか?」
「よおエリシア。お前一人か? アリシアは何処だ?」
「ここにはいねえよ。それはそうと・・・・・・お前殺気を放ちながらこっちに向かってたよな? 何のつもりだ?」
「そうか、お前一人か。そりゃあ好都合だ」
「てめぇ聞いてんのか?」
「おう聞いてるぜ? 殺気? 殺気を出してんのはお前だろ? エリシア。落ち着けよ」
そいつは一歩近づいて来る。
「殺気ねぇ・・・・・・そりゃあそうだろうよ、俺はお前らを殺しに来たんだからよ!」
そいつはいきなり殴りかかって来た。
「てめえ! 何しやがる!」
「うははは、何しやがるじゃねえよ。てめえ俺様にあれだけの事をやっておいて、只で済むと思ってたのか?」
「・・・・・・この野郎」
「おら、エリシア。あん時の続きだ、かかってこいよ」
「上等だ! このバグソヘッドが! こっちもやり足りねえ所だったんだよ! 今度こそ殺してやんよ!」
雷を呼び、トールハンマーを手に戦闘態勢を取る。
「ぐはははは! そうだ! 来いよ! てめぇを殺した後はアリシアも殺してやんからよ! 前からオメエら姉妹は気に入らなかったんだよ!」
「気に入らねえのはこっちだクソが! ぶっ殺してやる!」
雷帝エリシアと狂王バグヘッドの戦闘が始まった。




