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A fused world / 融合した世界  作者: あにゃこ
1-10 奴隷都市
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10-13

 15分程経ち、ヒルダさんの体は修復が済んだ様だ。その間、何回か小さい地震があったけど、気にする程でも無かった。


「では、まずはミカからにするかの」


 ヒルダさんはミカさんの所に行き治癒魔法を掛ける。


「ヒルダ、タカオは元に戻ったの? ここからじゃ良く見えないし、話も聞こえなかったのよ」


「んーどうじゃ、カズマよ? 元を知らんからわらわには何とも言えんのじゃ。息子のお主から見て戻っておったのか?」


「そうですねミカさん。僕には戻っている様に思えました。皆さんに謝っておいてくれって」


「そう、良かった・・・・・・。で? タカオは何処に行ったの?」


「解らんがその辺におるじゃろ? 結界からはわらわの許可なくして出入りは出来んのじゃから」


「そう・・・・・・ん、ありがとうヒルダ。もう動けるわ」


「そうか。では残りは手分けしてやるとするかの」


「ええ。カズマ、あなたはタカオを探してきて。居場所だけでいいわ」


「解りました」


「ヒルダ。先にカズキとジルを治しましょう。私達は慣れてるけど、あの二人はこんなダメージ初めてでしょうから」


「そうか、わらわは構わんぞ」


 二人の治療をしながらヒルダが言って来る。


「あのタカオと言う男は何じゃ。あの攻撃力は尋常ではないぞ?」


「ええ、私も驚いたわ。ギゼ、あそこに転がっている頭の無い死体の奴だけど、あいつに刺されるまでは普通の人だったのよ。刺されて意識を失って、目を覚ましたらああなっていたのよ。タカオの別人格だって言っていたわ」


「ふむ、別人格のう・・・・・・」


「その後はご覧の有様よ」


「わらわなどはともかく、ルシアやルードも倒すとは・・・・・・恐ろしい力を身に宿したの」


「・・・・・・そうね・・・・・・」


 そう、あの力は異常と言っても良い。マナ中毒 + 半神化 の影響としか思えないけど。それに加えてあの別人格。今回は何故かは解らないけど、元のタカオに戻った。でもあの破壊的な思想のタカオが消えたとは思えない。もしあのタカオが再び出てきたら・・・・・・。


「・・・・・・カ、ミカ。聞いておるのか?」


「え? あ、ごめんなさい」


「タカオの事を考えるのは皆を回復させてからにせんか。あのまま放置しとくと死ぬかもしれんぞ?」


「そうね。先に皆を治さないと」


 私達は全員の治療に努めた。





「すまんのう。助かったぞヒルダよ」


「全くルードともあろう者が倒されるとはの」


「そう言うな。あんな攻撃を受けたのは儂だって初めてじゃ。一撃で儂の意識を刈り取るなど、自分でも信

 じられんわい」


「まあな。俺は基本後衛だから軽装備だけど、本気で防御力を上げる事考えちまったよ」


「ザック、俺達みたいのはそんな事すると動けなくなるぞ?」


「まあそうなんだけどよ、サイガだって一撃だったろ?」


「ああ、完全にやられたな。あれ程早くて重いとな・・・・・・一対一でやっても勝てないかもしれないな」


「だよなぁ・・・・・・俺も元の姿に戻ったとしても、あの攻撃を耐えられるとは思えないな」


「ところでタカオはまだ戻らないのか?」


「タカオならカズマに探しに行かせたけど・・・・・・確かに遅いわね」


 ・・・・・・タカオの変わり様にショックだったのか、ルシアは黙って俯いている。


 丁度そこにカズマが戻って来た。


「あらカズマ、丁度良かったわ。いた?」


「あの、ミカさん・・・・・・何処を探してもいないんですけど・・・・・・」


「・・・・・・全部回った?」


「はい、部屋も一つ一つ中に入って確認しました・・・・・・それと・・・・・・」


「何?」


「ちょっと来てもらっていいですか?」


 カズマの後を私達は付いて行った。





「あれなんですけど・・・・・・」


 ここは・・・・・・戦闘奴隷たちの牢ね。そこにはゾンビ化した戦闘奴隷たちの死体が山と積まれていた。


「おい、アレって・・・・・・」


 ザックが壁にめり込みぐちゃぐちゃの死体を指さす。全部折られているけど虫の足みたいな物が付いている。


「ん? こいつは俺が殺した傭兵だぞ? ザック、こいつにオーラが憑いてたんじゃねーのか?」


「ああ、そうだ。何で結界の中にいるんだ?」


「わらわの結界は出入りは出来ん。だから結界を張る前に、中に入っておったんじゃろうの」


「で、俺達を襲う為に奴隷をゾンビ化してたって訳か」


「恐らくはそうじゃろうの」


「じゃあこれを殺したのは?」


「「「「・・・・・・」」」」


「儂等じゃ無いって事は、タカオって事になるのかのう」


「で、そのタカオは? 何処にいるの?」


「そんな事儂が知る訳なかろう」


「ジルに探させてみますか?」


「そうね。ジル? タカオを探せるかしら?」


「わんっ!」


 ふんふんと鼻を鳴らしながらタカオの匂いを辿るジル。所々に頭が無い死体が転がっている。


「これってタカオがやったのかな?」


「お、少しは気分良くなったか? ルシア」


「うん、ありがとう」


「まあショックなのは儂等も同じじゃ。そう気を落とすな」


「うん」


「カズマ、こっちは見に来たの?」


「来ましたよ。ドキドキしながら。でもこの先は結界で行き止まりですよ?」


 ジルはそのまま進んでいる・・・・・・今はこの先にいるのかしら?


「ほら、確かに出入り口はあるけど結界で行き止まりなんです」


「・・・・・・ヒルダ。あなたの結界は自由に出入り出来ないのよね?」


「そうじゃ。わらわが許可すれば例外はあるが、今は誰一人として許可は出しておらんぞ」


 でもジルは結界の外を見ながらヒンヒン鳴いている。そして外には無数の死体・・・・・・ゾンビになり損ねた人達の物かと思ったけど、もしあれが全部ゾンビなら・・・・・・


「ねえジル、お父さんはこの先なの?」


「わうん」


「そうだって」


「馬鹿な! 有り得ん! わらわの結界を通り抜けるなど・・・・・・」


「ヒルダが結界を張る前に、ここの通路を通った人はいる?」


「儂とサイガは使っておらん」


「俺は入口自体を使ってないぜ」


「私達だってここは通ってないわ。ヒルダたちは転移してきたし」


「じゃあやっぱりタカオがここを通ったの? 外の死体もタカオが?」


「・・・・・・そう言えば、父さんが立ち去った後、ヒルダさんはミカさんの治療をしてたじゃないですか。あの時に何回も地響きがしたんですよ。また融合に伴う地震かと思って気にしてなかったんですけど・・・・・・」


「タカオが闘ってた音だって言うのか?」


「いえ、それは僕には判断できませんが・・・・・・」


「・・・・・・外の惨状を見る限り、それが一番可能性があるのかもね」


「しかしじゃなミカ、わらわの結界は・・・・・・」


「あなたがどうこうじゃないわヒルダ。タカオは普通じゃない力を手に入れたの。あなたの結界に干渉して、すり抜けられたとしても不思議じゃないわ」


「なあ炎帝よ、思うんだが。オーラはあそこで死んでいた。そして外はこの有様だ。殆どのゾンビは死んでんじゃねえか?」


「うむ、有り得る話じゃな。どうじゃミカ、皆で外に出て追ってみんか?」


「・・・・・・ルード、私がタカオを探しに行かない訳が無いでしょ? ヒルダ、結界を消して」


「待つのじゃ。この奴隷達も連れて行くのか?」


 奴隷? ああ、シグたちの事ね。


「シグ、あなた達はどうする? ここで待っていても良いわよ?」


「いえ、我らもタカオ様の捜索に協力させてください」


「即答なのね。ニナとナディアもいいのね?」


「「はい」」


「って事よヒルダ。結界を消して頂戴」


「解った。・・・・・・ほれ、消えたぞ」


 目の前に張られていた膜の様な物が綺麗さっぱり無くなった。


「じゃあ行きましょう。みんなあまり離れないようにね」


 私達はジルの後を追ってタカオを探しに行った。





 ジルは真っ直ぐガジンの居城に向かっている。


「・・・・・・ルード。ゾンビを殺した奴って、どう見てもガジンの居城に向かってるよな?」


「そうじゃな。群がるゾンビ達を蹴散らしながら、何者かがガジンの元へと向かっている様じゃな。それに

 さっきから聞こえるこの戦闘音」


 進行方向から、明らかに何者かが戦闘しているであろう音が聞こえる。


「どちらにしろ凄え数だな。これをタカオ一人でやったってのか?」


「まだタカオだって決まった訳じゃ無いでしょ!」


「ルシアよ、そうは言ってものう・・・・・・」


「あれがガジンの居城だ」


「この音はやっぱり居城からだな」


「ええ、急ぎましょう」


 急がなくては。早くタカオを見つけないと、このまま会えなくなってしまう気がする。タカオとの戦闘で負った傷を癒す為に、全員かなりのマナを消費している。私だってそう。だから身体にマナを纏って身体を強化する事が出来ない。消費を抑える為に、普通に走らなければならない。もう少しなのに、遠く感じる。


 ズドオォン!!


 その時、ひときわ大きな音がした。


 駄目、駄目よ。行かないでタカオ。


 ガジンの居城に着いた。そのまま城内へ向かう時に、大きなマナが発動されるのを感じた。


「ミカよ、何じゃこれは?」


 ヒルダも感じた様だ。いや、全員か。


「・・・・・・おいおい、これって転移門じゃねえのか?」


「サイガ、解るのか」


「ああ、あちこち行くのに良く使ってたからな。マナの波動で解る。ガジンが逃げようとしてんのか?」

 

 私達が王の間に着いた時には、マナの気配は消えていた。転移は完了したみたいだ。


「・・・・・・何だこりゃあ? これって闘いの跡だよな? どんな攻撃でこんなになるんだ?」


 壁一面、いえ、王の間全体に何かで削り取られたような跡がある。ここにドラゴンでもいたの?


「おい、こっちの通路に戦闘痕が続いてんぞ」


 私達は王の間の横にあった通路を進む。狭くて薄暗い・・・・・・ガジンの逃走用の通路なのかしら? それにしても、この通路の戦闘痕も凄いわね。割れ、抉れ、崩れ、燃えた跡もあるわね。


「あー、やっぱり転移門があるぞ」


 先頭を走っているサイガが言う。


 通路の奥の小部屋。そこには転移門と・・・・・・あちこちが破裂して死んでいるガジンが、壁の中に埋まっていた。


「・・・・・・ガジンだよな、これって」


「そうじゃな。殆どが打撃痕の様じゃな。完全に死んでおるわ」


「ぐちゃぐちゃじゃんかよ・・・・・・」


「ジル? お父さんは?」


 ジルは必死に転移門の所を行ったり来たりしている。


「・・・・・・転移門を起動するわ」


「はあ? おい炎帝、ちょっと待て。お前だって俺らの治療でかなりのマナを消費した筈だよな? 転移門を起動するのに必要なマナの量知ってんのか?」


「知ってるわよ! でもやらない訳にはいかないでしょ! タカオが、タカオが・・・・・・」


「ミカ、私も手伝うから」


「わらわも勿論手伝うぞ」


「サイガ、俺達もやるぞ」


「そうは言ったってよ、お前等だってろくにマナが残ってねえだろ?」


「微々たる量でしょうが我らも手伝います」


「・・・・・・ありがとうシグ」


「ミカ、勇者の力を出しても10秒が限界だから。それまでに・・・・・・」


「ええ、解ったわ」


「僕も出来るの?」


「ええ、カズマとシホは無理だけど、カズキはできるわ」


「どうやるの?」


「ここの石板にマナを流すだけよ」


「解った」


「はぁー。解ったよ。俺もやるよ」


「ありがとうサイガ・・・・・・じゃあ始めるわ」


 カズマとシホを除いた全員で、転移門を起動する為の魔導具である石板にマナを流す。


 ・・・・・・5秒、カズキとザック、シグとニナ、ナディアがマナの欠乏で倒れた・・・・・・10秒、ルシア、ルード、サイガが倒れた・・・・・・15秒、ヒルダ、ジルが倒れた・・・・・・20秒、何で? どうして起動しないの? 25秒、ポタッポタッ。くっ鼻血が・・・・・・あちこちの毛細血管が切れ始めたわ・・・・・・


 バシュウウウゥゥゥ・・・・・・


 私はがっくりと膝を付く。


「ミカさん? 大丈夫ですか?」


「・・・・・・ええ。みんなも、マナの欠乏で気絶してるだけだから大丈夫よ。暫くすれば目を覚ますわ」


「・・・・・・えっと・・・・・・失敗ですか?」


「・・・・・・いいえ。」


 シホが私の肩を掴む。


「ミカさん、しっかりしてください。私を助けてくれた人の家族なんですよ? 何があったか教えてください!」


「・・・・・・転移門は入口と出口の両方が使える状態じゃないと起動しないの・・・・・・こっちの転移門は正常だったわ・・・・・・」


「じゃあ何処にあるか解らないけど、出口が壊されてるって事ですか?」


「・・・・・・ええ、そうなるわ」


「そんな・・・・・・いったい誰が・・・・・・」


「・・・・・・この門を最後に通った人よ」


「え? ちょっと待ってください。最後に通った人って・・・・・・」


「・・・・・・タカオよ・・・・・・」


「え? 父さんが? 何で?」


「・・・・・・グス・・・・・・ヒック、ヒック・・・・・・うぅぅ、タカォォ・・・・・・」


「ミカさん・・・・・・」




 この日、父さんは何処かへと消えてしまった・・・・・・。




一部 完 です。

数日後に二部を開始します。

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