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A fused world / 融合した世界  作者: あにゃこ
1-10 奴隷都市
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10-7

 サイガ・一馬・一樹・ジルside


「ほら、あそこだ。この塔の上の方に窓があるだろ? 」


 サイガさんが指さす場所は、六階位はありそうな高さにある出窓だった。


「あそこまでどうやって行くんですか?」


「お前達は下で待っていろ。俺が上まで行ってくる。お前達三人でこの場所を確保していろ」


「解りました。一樹、ジル、頼むぞ」


「うん」


「わうっ」


「よし。じゃあちょっと待ってろ」


 サイガさんは塔の影に入ると、


「お前達には特別に見せてやる」


 そのまま影の中に沈んで行った。


「ええっ!?」


「俺は影の中に入れるんだ。このまま影を伝って出窓まで行って来るからな」


 そう言って全身を影に沈めた。と、思ったら、


「おにい、上」


 既にサイガさんは出窓にいた。窓から中に入り、数秒後には人を一人抱いて出て来た。あれは・・・・・・詩歩だ! サイガさんは片手で詩歩を抱き、もう片方の手と片足を影に入れたまま滑る様に降りて来た。同時にもう一人が窓から飛び降りて来た。その人は女性で、着地寸前で落下速度が遅くなり、何事も無かった様に地面に立った。


「詩歩!」


「一馬くん!」


 着地後駆け寄って来る詩歩。俺は詩歩を抱きしめた。


「遅くなってごめん」


「ううん、来てくれるって信じてた。遥さんとヒルダさんが私を守ってくれて、グスッ・・・・・・」


「ああ、大体はサイガさんから聞いた。母さんの方には父さんが行ってるから大丈夫だ」


「え!? そうなの?」


「おいカズマ。再開を喜ぶのは後にしろ。兵が来るぞ」


「あ、すいません。詩歩、後でゆっくり話そう。今は逃げるんだ」


「うん、解った」


「よし、俺が先導する。しっかり着いて来いよ」


 サイガさんを先頭に走り出そうとした時、


「おいおい、何処に行こうってんだ?」


 一人の男が現れた。・・・・・・何か・・・・・・装備が違う。この人が傭兵か。装備の文明レベルが明らかに違う。鎧の類ではなく、パワードスーツみたいだ。


「サイガさん。恐らくあれが傭兵です」


「何? あれが? 確かに見た事も無い装備だな」


「あん? 俺達の事知ってんのか?」


「ああ、金で雇われるハイエナみたいな傭兵だろ? 三人いるって聞いてたけどな」


「ははは、お前らみたいなガキ連れの侵入者なんざ俺一人で十分すぎてお釣りが来るぜ」


「ふーん、他の二人は何処にいるんだ?」


「城の前で暴れてん奴等を殺しに行ってんよ」


「そうか。じゃあお前は貧乏くじを引いたんだな」


「あん? 何で俺が貧乏くじなんだよ」


「だってよ、お前は今から俺らを殺そうとするんだろ? 勿論俺は抵抗する。って事は俺と殺りあうって事だよな?」


「おう、その通りだ。まあ俺からの一方的な殺戮になるんだけどな」


「おいカズマ。こいつは俺が引き受けるから、お前達は先に行け」


「え、一人で大丈夫なんですか?」


「おう、俺を誰だと思ってるんだ。ヒルダ、こいつらを守ってやってくれ」


「わらわも闘わんでいいのか?」


「ああ、こいつらを無事に連れて行ってくれ。カズキとジルもしっかり守れよ? 人は斬れませんなんて言ってる場合じゃ無いからな?」


「わ、解った」


「よし、行け」


 カズマ達は走って行った。ジルが先頭でヒルダが最後尾か。


「黙っていれば勝手に何言ってんだよ。誰も行かせねーっての」


 傭兵の男は丸いものを取り出し、カズマ達に向けて投げつけた。何だあれは? まあ良く無いものってのは確かだろうな。俺はナイフを取り出し、放物線を描いて飛んで行く “それ” に向けて投げた。


 カズマ達に届く前にナイフが当たった “それ” は、空中で爆発した。・・・・・・成程な。あの中に爆発の魔法でも込めているのか。


「おっとぉ、器用な真似するんだな。投げたグレネードにナイフを当てるとはな」


「ふん。俺が相手だって言ってんだろうが。女子供を先に狙ってんじゃねぇよ」


「そうだな。お前を先に殺してから、ゆっくりあいつらを狩るとするか」


 傭兵は、背中に背負っていた筒の様な物を手に持つ。先端に穴が開いているな。タカオが言っていた “銃” って奴か?


「じゃあ死ねや」


 傭兵が俺に ”銃“? を向ける。どれ程の威力か解らんが、初見だからな。避けておくか。塔の影に入り移動する。


 ・・・・・・何だ? 撃たないのか? 傭兵は俺を見失って辺りを見回している。まあ俺が影に入れることなんて知らない筈だからな。見失いもするか。


 影を伝い傭兵の後ろの城壁に回る。上半身を影から出して、ナイフを投げようと振りかぶった時・・・・・・


 ドンッドンッドンッ!


 後ろを見もしないで正確に俺の位置に撃ってきやがった。影に入ったから当たってはいないが、何で解ったんだ? 気配も消していた筈だが?


「おいおい、威勢のいいこと言っておいて隠れてるだけかぁ? 出て来ないならガキ共を先に始末すんぞ」


 くだらない挑発に乗らないのは当然としても、さっきの攻撃は城壁を少し砕く程度か・・・・・・炎帝の火球の方が余程威力があるな。穴が向いている方向さえ気を付ければ、避ける事も難しく無さそうだな。


「城壁を少し削る程度の攻撃で何言ってやがる。拍子抜けしちまったんだよ」


「ふはは、そうか? じゃあこんなのはどうだ?」


 傭兵は銃から何かを外し、他の物を取り付けた。何を付けようが穴の向きさえ――


 バシイッ!


 うおっと! 何だ、雷も撃てるのか? 魔法と変わらないな。


 傭兵は銃から何発も雷を撃ち出して来る。雷は城壁や地面に大穴を開けているが、撃ち出す方向が丸解りだから避けるのも簡単だ。


 パシュウッ


 ん? 今回撃ち出した物は遅いぞ? こんなの見てからでも躱せるぞ? なんて事を考えていたら、撃ち出された物は広がって網になった。成程。こういう物も発射できるのか。わざわざ捕まってやる必要も無いので飛び退く。


「なあ、こんなもん幾ら撃っても俺には当たらないぞ?」


「そうみたいだな。飛び道具じゃお前は殺れなさそうだな。面倒だが接近戦で殺るしかないか・・・・・・」


 傭兵は60cm位の棒っきれを手に持った。


「今度は何だ?」


「さあな、何だろうな?」


 ここで持つ武器だ。只の棒って事は無いんだろうが・・・・・・傭兵は左右にステップを踏みながら近づいて来る。意外と速い動きだな。しかし目で追えないほどじゃない。右手に棒、左手には他の何かを持っている。


 傭兵は棒を振りかぶり、袈裟懸けに振り下ろして来る。・・・・・・軽く避けて様子を見るが、大振りだな。隙だらけだぞ? 剣術と言うか、何もやってない奴の動きだ。俺は背中のカタナに手を掛ける。次に空振りをしたら、後ろに回って首を落として終わりだな。


 案の定傭兵は大振りをする。死角に入り込みカタナを抜――


「掛かったな?」


 傭兵の首に斬りつけようとした俺の腹に、熱い何かが当たる。ぐっ・・・・・・何だ? 傭兵の背中から何かが生えて、俺の腹に刺さっている。


「どうだ? 中々いい仕事するだろ? これ」


 俺は一旦距離を取る。


「ぐうう・・・・・・何だよそれは?」


「これはな、お前みたいな奴用の装備だな。お前みたいな奴は、死角に入りたがるからな。わざと大振りの攻撃をして、死角に入らせておいてブスッとな」


 傭兵は四本の虫の足の様な物を背中から生やした。


「・・・・・・正面から来たらどうするんだよ?」


「それはそれで、こうやって前にも攻撃出来るからな――」


 肩の上から二本、腰の横から二本が俺に向かって斬りつけて来る。カタナではじき返し、宙を舞って更に距離を開けつつ薄暗い通路に逃げ込む。


「な? 死角なんざ無いぜ」


 ・・・・・・とりあえず、影で止血をする。要は手が六本あるって事だろう? 三人同時に相手にしているだけだ。いつもと何も変わらない。とりあえずナイフを投げてみる。


 カキン!


 簡単に払い落とすか・・・・・・まあいい、おら、通路に入って来いよ。


「何だ? ちょっと腹に刺さった程度で終わりか?」


「アホか」


「だよな。まあすぐに止めをさしてやるからな」


 バカが。俺を追って通路に入りやがった。傭兵の足元に向けてナイフを投げる。


「おいおい、いくら薄暗くたって当たりもしない場所に投げてどうすんだ? 諦めたか?」


「んな訳あるか。これでも喰らえ。 “影槍”(シャドウランス)」


 “影槍” は敵の周りの影から、高質化させたマナを槍状にして突き出す技だ。影が多ければ多いほど槍を出せる場所が増える。その分マナの消費も多いがな。影の範囲=本数=マナの消費量だ。まあ任意でマナの消費量や範囲を変えられるが、減らし過ぎると威力的に問題があるからな。


 要は、暗い通路に入った時点で傭兵の命は終わったって事だ。通路を塞ぐように壁、床、天井から、黒い槍が突き出している。そしてそのほぼ中央で、全身を槍で貫かれている傭兵。


「な、何が・・・・・・何で・・・・俺が・・・・・・」


「これだけ貫かれてまだ息があるのか? しぶといな」


「ふ・・・・ざけ・・・・・・って・・・・・・」


 ・・・・・・死んだか。さて、カズマ達を追うか。 俺は “影槍” を消し、待ち合わせ場所の倉庫へと向かった・・・・・・・・・・・・傭兵の死体に向かう小さな肉片に気付く事も無く・・・・・・。




 ルード・ザックside


「ルード、あれがガジンの居城だろ? この辺で良いんじゃねえか?」


「そうじゃな・・・・・・しかし、陽動と言ってものう・・・・・・」


「居城に矢でも撃ち込むか?」


「ん? そのままガジンの所に攻め込めば良いのではないか?」


「・・・・・・そうだな。陽動としか言われて無いけど、ガジンを討ってはダメとも言われて無いもんな」


「その通りじゃ。どの道ガジンは討たねばならんからの」


「よし、じゃあ攻め込むか」


「うむ」


 儂とザックはガジンの居城の正面入り口の前まで来た。


「何だ貴様らは? ここはガジン様の城だ。用が無いなら邪魔だから消えろ」


 門番か。さて・・・・・・。


「用件ならあるぞ。ガジンの討伐だ」


「・・・・・・はあ? 二人でか?」


「そうじゃ。ほれ、仕事の時間じゃぞ」


「ぶっ、ははははは! 何だお前ら? 二人でガジン様の討伐だと? おい! 皆仕事だぞ!」


 詰め所から兵達が出て来る。・・・・・・たった10人か。


「何だよ仕事って?」


「おう、この二人がよ、ガジン様の討伐に来たんだと。仕事だろ?」


「二人で? 本気か?」


「ああ、本気だぜ。もっと兵を集めた方がいいぞ? 10人程度じゃ一瞬だぞ」


「たまーにいるんだよな、こういう奴等って。何を勘違いしてるんだかよ」


「勘違いしてるのは己等じゃ」


 ルードは棍を振り払い、三人まとめて吹き飛ばした。


「な? もう三人減っちまったぞ? あと7人で大丈夫か? 待っててやるからもっと兵を呼んだらどうだ?」


「・・・・・・し、侵入者だ! ふ、笛を吹け! 兵を正面入り口に集めろ!」


 ピー、ピーと笛が吹かれ、ワラワラと兵が集まって来る。


「さってと。じゃあやるか」


「そうじゃな」


 只の雑兵など儂等の敵ではない。儂は数人をまとめて叩き潰し吹き飛ばす。ザックは適当に矢を討っている様でも、きっちりと急所に当てている。敵兵を薙ぎ倒しながら正門を抜け、庭を進む。城の中からも外からも、かなりの数の兵が来ておる。陽動としては成功なんじゃが、勇者や傭兵とやらが出て来んな。タカオの方やカズマの方に行っていなければ良いが・・・・・・。


「なあルード、雑魚ばっかだな」


「うむ。儂も今それを考えておった。勇者や傭兵が出て来ないとなると、ここにはおらんのかもしれんな」


「ま、いいだろ。それならそれでガジンを殺して、他の場所の援護に行こうぜ」


「そうじゃな」


 居城に入ろうとした時、


 チチチチチチ、バガン!


 いきなり床が爆発しおった。儂とザックは余裕を持って飛び退いたが、何じゃ? 何が起こったのじゃ?


「なんだ、避けられちまったぞ? だからもう少し爆薬の量を増やしとけば良かったんだよ」


「いや、どの道避けられてたと思うぜ? 爆発してから飛び退きやがったからな」


 入り口の奥から二人の男が出て来た。



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