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A fused world / 融合した世界  作者: あにゃこ
1-10 奴隷都市
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10-4

 もう闘技場内での用事は無いので、俺達は入口に戻った。


「なあ、さっきの女が闘う理由の仲間って何処にいるんだ?」


 兵士長に尋ねる。


「ん? ここにはいないぞ。ガジン様の居城の尖塔に幽閉中だ。あの女を闘わせるために、朝と晩だけ尖塔から顔を出させて会わせるだけだ」


「それって無傷なのか?」


「うむ。そっちの二名には何もしとらん筈だ。まだガキだしな」


「そうか。そっちの二人には会えないのか?」


「・・・・・・何故会いたがる? 何か企んでいるのか?」


「バカ言ってんじゃねえよ。あれだけボロボロになりながらも闘う理由って奴を見てみたかっただけだ。無理なら別に構わねぇよ」


「成程な。まあどの道無理な話だ。あの尖塔に行くにはガジン様のおられる広間からしか行けん。我々では通る事も出来んよ」


「へー。何でそんな所に入れてるんだろうな? 奴隷小屋でもいいじゃねぇか」


「ああ、それはな、あの女はここに来たばかりの頃大暴れをしてな。ほら、俗に言うマナ中毒だ。中毒者は前後の見境が無いと言われているが、あの女は違ってな。二人の仲間を守りながら闘っていたんだ。まあ結局はギゼ様と傭兵共にやられたんだがな」


「あー、マナ中毒か。タイミングが良かったのか悪かったのか」


「全くだぜ。お陰で百数十人の兵を再起不能にされたよ」


「そんなに殺したのか?」


「いや、殺したのは数人だ。で、その後目を覚ました女に取引を持ち掛けた訳だ。二人を助けたかったら闘技場で闘えってな」


「ふーん。で、今に至ると」


「そうだ」


 ガジンの居城の尖塔ね・・・・・・あそこだろうな。・・・・・・今窓側は影になってるな。行けそうだな。


「解った。色々すまんな。きっちり準備したらまた来るよ」


「ああ、人斬りサイガなら盛り上がる事間違いない。こちらとしても待っているよ」


「解った。じゃあな・・・・・・まぁすぐに戻って来るがな」


「ん? 何か言ったか?」


「いや、またな」


 闘技場を後にし、尖塔へ向かう。年齢的にさっきの女がタカオの妻なんだろうな。って事はカズマの方は尖塔だろう。しかし二人いるって言ってたな・・・・・・あと一人は誰だ?





 俺は影の中を自由に動ける術を持っている。ルード達が俺の事を神出鬼没と言っているのはその術の所為だ。人の影に入って移動する事も可能だからな。だからガジンの居城の裏の方へ周り影を探す。


 ふふふ、おあつらえ向きに尖塔の影が城壁の外まで来ている。早速陰に入り移動する。


 尖塔の出窓から中を覗くと、二人の女がいる。二人共若いな、どっちがカズマの女だ? まあいい、タカオの妻が守ろうとしているんだ、どちらにしろ敵ではないだろうからコンタクトをとるか。


 俺は影から指先を出し、出窓を叩く。


 コンコンコン


 ・・・・・・二人共気付いたか。


 コンコンコン


 一人の女が窓を開けに来る。開いた窓から影を伝い滑り込む。流石に外は明るいからな、窓に人が張り付いていたら丸見えだ。


 室内に入り影から出ると、もう一人の女が襲い掛かって来た。指先の爪を20cm位伸ばし、斬りかかって来る。動きも早いな。何合か打ち合い、距離を取る。


「お主は何者じゃ! わらわ達を暗殺にでも来たか!」


「ちょっと待て! 暗殺じゃねえ! 助けに来たんだ!」


「嘘を付くでないわ! 助けに来る当てなど無いわ!」


「ちょっと待ってヒルダさん!」


「なんじゃシホ! こ奴は何処から見ても怪しいであろう!」


「ヒルダ? ヒルダって言ったか?」


「は、はい。言いました」


「何じゃ? わらわを知っておるのか?」


「不死王ヒルダなのか? ヴァンパイアロードの?」


「そうじゃが。お主は何者じゃ」


「不死王ヒルダなら聞いた事位あるだろ? 俺はサイガ、人斬りサイガだ」


「何っ! お主があの人斬りか! こんな所までわらわを狙いに来たのか!?」


「だから違うっつーの。いいから話を聞けよ。こっちの娘のが余程落ち着いてんぞ」


「ぬぬぬ、若造の分際で・・・・・・」


「あの、助けに来たって言っていましたけど・・・・・・」


「ああ、その通りだ。お前がカズマの女か?」


「えっ、そ、そんな。いきなり、ち違います!  確かに一馬君の事は、えっと、その・・・・・・」


「え? 違うのか? この街にタカオの嫁とカズマの女が囚われてるから、それを助けに来たんだけどな・・・・・・そうか。人違いか。」


「えっ、で、でも・・・・・・」


「何を言っておるのじゃ。気を利かさんか。照れておるんじゃろうが」


「ん? ああ、そうなのか? じゃあこの娘で合ってるんだな」


「はい。あの、一馬君は無事なんですか?」


「ああ、無事も無事。元気なもんだ。で、不死王はこんな所で何やってんだよ? お前一人ならこんな所簡単に逃げられるだろ?」


「アホか。わらわとハルカはこの娘、シホをガジンの手から守っておるのじゃ」


「ハルカってタカオの妻だよな。闘技場にいたボロボロの女か?」


「そうじゃ・・・・・・」


「やっぱりそうか・・・・・・」


「遥さんとヒルダさんは、私を守る為にヒック・・・・・・あんなボロボロになりながらも・・・・・・ヒック・・・・・・」


「その割には不死王は綺麗じゃねえかよ」


「わらわは治癒能力があるからの。しかしハルカにはそれが無い、日を追うごとに・・・・・・」


「そうか・・・・・・まあ朗報もある。ハルカの夫のタカオ、その息子のカズマとカズキ、犬のジル。それに炎帝と勇者、ルードとザックが近くまで来ている。目的はハルカとシホの救出と、ガジンの討伐だ」


「なんと!? ミカとルシア、ルードにザックまで来ておるのか!」


「ああ、だからもうちょっとだけここで待っていてくれ。今はまだ偵察段階なんでな、あまり時間も無いんだ」


「解った。ハルカの方はどうするのじゃ?」


「あっちはあっちで何とかする。いいか?俺達の誰かが来るまでここで待っていろ」


「はい、解りました」


「よし。じゃあまた来るからな」


 再び影に潜り、窓から出る。そろそろ時間だからな、倉庫に戻らないと。・・・・・・しかし、あの状態のハルカを見て、タカオは・・・・・・。





 ザックside


 サイガと別れた後、気配を消しつつ街中を移動しながら情報を集めていた。


 ・・・・・・兵達は・・・・・・まあ普通の人間だな。勇者と傭兵って奴の情報が欲しい所だが。仕方が無い、変身して城内に潜り込むか。


 俺はシェイプシフターだ。誰にでも変身できる。変身対象に触れなければならない、って言う制限はあるがな。差し当たっては、さっきの御者になっておく。


 御者の姿でガジンの居城を目指す。しかし何でこの街にはこんなに人がいるんだ? 真昼間から酒盛りしている兵もいるし。・・・・・・今の俺はガジンの兵だからな、ちょっと混ざって情報収集でもするか。


 六人の兵が飲みながら談笑している店に入り話かかける。


「よお、お楽しみだな」


「ん? なんだコルツか。もう帰って来たのか?」


 この御者はコルツって名前だったか。


「ああ、予想以上に狩りが捗ってな。」


「ギゼ様を呼んだのってコルツの所だよな。そんな強い奴がいたのか?」


 ギゼ。勇者だよな。シグがやられた奴だったな。


「おう、スノーウルフの獣人だ。流石に俺達だけじゃ無理だったな。まあギゼ様には全く相手になってなかったけどな」


「ははは、そりゃそうだ。ギゼ様とまともに戦えるのなんか、傭兵の三人位のもんだろ?」


「全くだ。ギゼ様も凄いがあの三人もおかしな武器で闘うからな」


 ・・・・・・おかしな武器? 


「ん? お前傭兵たちが闘う所を見た事あるのか?」


「おう、あるぞ。コルツは無いのか?」


「ああ、無いな。どんななんだ?」


「んー、あの三人は動きはそんなに早くないんだけどな、何やら良く解らん魔導具を使っているんだよ。何て言ってたっけな? “ゴウタイパンチキ” と “ジゾウゲイデキソーチ” だっけ?」


「ああ、そんな感じだったな」


 何だそりゃ? タカオに聞けば何か解るか?


「何だそりゃ? 聞いた事無いな」


「俺もよく解らんがな。噂じゃ周囲で動く者が解るのと、攻撃を勝手にするらしいぞ?」


「らしい? 何だよ、見たんじゃないのか?」


「見たけどよ。見たからって解らない物だってあるだろ? 何しろ完全に死角からの攻撃を見もしないで避けていたからな」


「他にも色々持っているらしいしな」


 やっぱりタカオ達に聞いた方が良さそうだな。


「ふーん。じゃあギゼ様はどうだ?」


「今回見たんじゃないのか?」


「見たって言っても一瞬だからな。何も解らなかったんだよ」


「あー、成程な。光る剣は出したか?」


「おう、それは出してたな。でも出しただけで使わなかったんだよな」


「あの光る剣は凄い切れ味だぞ。岩だって音も無く斬っちまう」


 やっぱりルシアと同じ勇者なのか?


「あー、でもよ、来た当初は空飛んでたけど、最近飛んでないよな」


「それって飛ばないだけじゃないのか? 飛ぶ必要が無いとか」


「いや、高官の話だと飛べなくなったみたいだぞ?」


 飛べたのに飛べなくなった? ・・・・・・どういうことだ?


 その時もう一人の兵が店内に入って来た。


「あれ? 何でコルツがいるんだ? さっき門から出て行ったよな?」


 む・・・・・・門兵か?


「ああ、ちょっと忘れ物があってな」


「それにしちゃ戻って来るのが早くないか? 走ったのか?」


「ああ、そんなとこだ」


「ふーん、まあいいや。 おい! エールをくれ!」


「はいよー」


「でもいいのか? 急用って言ってたよな? こんな所にいて時間は大丈夫なのか?」


 余計な突っ込みをされる前にずらかるか。


「いや、流石にギリギリだ。もう行くよ」


「そうか、じゃあまたな」


「じゃーな、コルツ」


「おう、またな」


 どの道そろそろ時間だな。このまま倉庫に向かうか。





 倉庫に着いたはいいが、サイガはまだ来ていない様だ。・・・・・・いや、隠れているのか。


「サイガ、待たせたな」


「ザックか?」


 建物の陰からサイガが出て来る。


「ああ、情報を集めるために変身したんだ」


「良いなそれ、便利そうだ」


「ああ、確かにこういう時は便利だな」


「どうだった」


「こっちは勇者と傭兵の情報だが、あまり集まらなかったな。サイガは何か解ったか?」


「おう、俺はタカオ達が探している人物を見つけたぞ」


「そうか! タカオ達が喜ぶな」


「ただちょっと問題があってな・・・・・・」


「問題? 何だそりゃ? って今はいいか。先に転移結晶で戻ろう」


「ああ」


 俺達は転移結晶を使い、皆の元へと戻った。


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