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A fused world / 融合した世界  作者: あにゃこ
1-9  腐王
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9-6

すいません。予約ミスで遅れました。

 ヨットが見える辺りまで来たが、途中からゾンビの追撃が無くなった。オーラは俺達の事を諦めたのか? それとも全てのゾンビを倒したのか?


「ゾンビ達が出て来なくなったな」


「ええ、私達の周囲のゾンビを焼き尽くしたら、周辺地域のゾンビを全て焼き尽くして来るようにしたから」


「へえ、そんな事も出来るんだな」


「ミカ、マナは大丈夫なの?」


「結構広範囲に渡って散ってるみたいだからね。空っぽにはならなくても大半は無くなるかも」


「それって大丈夫なのか?」


「今はまだ全然平気よ。炎龍を維持制御するのに少しずつマナが減っていくから、最終的にって話よ」


「そうか。・・・・・・もうすぐヨットだな」


「ええ、でも警戒を怠らないで。オーラが諦めるとは到底思えないわ」


「その通りさ。使い捨てとは言え大半のゾンビを失ったんだ。このまま逃げられると思わない事だね」


 また何処からかオーラの声がする。


「あれだね、あんた達をガジンに渡すのは勿体ないね。それだけの戦闘力を持っているんだ、ゾンビ化して私の配下に入れる事にするよ」


「・・・・・・ルード、オーラの居場所は解らない?」


「うむ、さっきから探ってはおるのじゃがな。近くにはいるんじゃろうが、正確な位置が解らんのじゃ。ミカはどうじゃ?」


「私も解らないのよ。どうも最近霧がかかったみたいになって探知出来ないのよね」


「ミカもか。これも融合の影響かの?」


「恐らくそうね」


「面倒な事になったのう」


「さて、そうと決まったらもう捕らえよう何て思わないよ。こんなのはどうだい? “死を育む腐れし海より来たれ 腐死龍” 」


 進行方向に巨大な魔法陣が描かれ光を放つ。魔法陣から何かが出て来る。何だ? デカいぞ?


「あれは・・・・・・ドラゴンゾンビか!?」


 あれがドラゴンゾンビか・・・・・・ドラゴンって言うと二足歩行のタイプを想像していたが、目の前に現れたのは四足歩行のタイプだった。


「うむ、サイガの言う通りじゃ。しかもデカいぞ。ちと厄介じゃのう」


「あの大きさだと魔法に対する障壁を持ってるんじゃない?」


「そうね、試してみるわ」


 ミカは火球を作り出し、二階建てのアパート位の大きさのドラゴンゾンビに向けて撃ち出すが・・・・・・


 バシュン・・・・・・


 火球はドラゴンゾンビに当たる前に霧散してしまった。


「やっぱり駄目ね」


「だね。じゃあ私が行こうか?」


「そうね。でもオーラが何をしてくるか解らないから、一応気を付けてね」


「うん、解った」


「ルシア! お前また一人で行くのか!?」


「タカオ。ゾンビなどの不死属性の敵には、ルシアの聖剣が一番有効なの。いえ、勇者の力がって言った方が良いわね」


「そうなのか?」


「うん、そうだよ。幾ら元がドラゴンでも、ゾンビになった時点でただのデカいトカゲ。何の問題も無いよ」


 返事をすると同時にルシアの身体が緑の光に包まれた。光が収まったそこには、出会った時の鎧を着込み聖剣を持ったルシアが、勇者のオーラを纏って立っていた。だが今回はフルフェイスの兜では無く、サークレットの様な物を着けている。


「じゃあ行ってくるね」


 ルシアは一足飛びでドラゴンゾンビに肉薄し、迎え撃つ咢を躱し胸元に聖剣を叩きつける。


 ズドン!


 おおよそ肉に剣を叩きつけたとは思えない音を出し、ドラゴンゾンビをよろけさせた。


 ドラゴンゾンビと言うだけあって、やっぱり肉も腐っているんだろう。聖剣を叩きつけられた胸元の肉が弾け飛び、骨が露出している。ドラゴンゾンビはその後も爪による攻撃や噛み付きを繰り出すが、ルシアは難無く躱し聖剣を叩きこんでいる。


「ほれ、勇者の力を纏った今のルシアにとってドラゴンゾンビなんぞ、言った通りに只のデカいトカゲ以下じゃ。今のうちに儂等はよっとの確保に行くぞ」


「そ、そうか」


 ドラゴンゾンビをルシア一人に任せるのもちょっと気が引けるが、付き合いの長いルード達が言うなら大丈夫なんだろう。


 そして、ヨットに向かう俺達の眼前に老婆が現れた。オーラだ。自分から出て来やがった。


「まだ終わりじゃないよ、そう簡単に行かせる訳がないだろう?」


 オーラは二つの魔法陣を形成する。


「腐の大地より生まれし忌み子よ、肉を持て来たれ」


 片方の魔法陣から現れたのは・・・・・・何だありゃ? 体高は2m位、全身ブヨブヨのの肉の塊? が3体出て来た。一応手と足らしきものは付いてるけど、あんなんで動けるのか?


「闇に落ちた腐れし者よ、扉を開け放ち蘇らん」


 もう片方の魔法陣は小柄な奴が4体出て来た。


「何だありゃ?」


 サイガが肉の塊にナイフを投げ、ザックは小柄な方に魔弓を射る。


 サイガのナイフは当たり前の様に命中したが、“ブチュッ” と言う音と共に肉の身体に飲み込まれていった。ザックの矢は小柄な奴が取り出したナイフに弾かれた。


 ビタッ、ビタッと重たそうな身体を動かし近寄って来る肉の塊。小柄な奴は肉塊の背に隠れた。


「魔法はどうかしら?」


 ミカが火球を放つが、ドラゴンゾンビと同じように着弾前に霧散してしまう。


「こいつも対魔法障壁を持っているのね」


「ふむ、ならば儂が」


 ルードが肉の塊に近づき、棍を叩きつける。


 ドパン!


 棍を叩きつけられた場所の肉が爆発したかの様に弾け飛ぶ。弾けた肉はルードの左腕にも付いてしまっている。


 ルードは戻るなり、


「ミカ、解毒を頼む」


「どうしたの?」


「奴の身体は猛毒の塊じゃ。肉片少しでこの有様じゃ」


 だらりと左腕を見せるルード。肘の辺りに付着したようだが、その周辺が化膿してるのか? 膿んでるよな?


「解った、今すぐ解毒と治癒魔法を」


「ひょっひょっひょ。そ奴等は腐った肉を集めて作った肉人。そ奴の肉に触れると、一分とかからずにその場所は腐れ落ちるぞ。下手な攻撃はしない方がいいと思うがねぇ」


 魔法も駄目、飛び道具も駄目、打撃も駄目。どうするんだ? しかもそれが2体もいる。あいつを倒さないとヨットに辿り着けないぞ。


「・・・・・・なあ、小さい奴は何処にいった?」


 サイガが周囲を見回す。・・・・・・そう言えば、肉塊の後ろにいると思っていたが。


「後ろ!」


 一樹が俺達の後ろにナイフを投げると同時に、数本のナイフが投げ返されて来た。


 一樹が投げたナイフは小さい奴等の一匹に刺さり、投げ返されたナイフは一樹とサイガが弾き落としてくれた・・・・・・しかしいつの間にか小さい奴等に後ろを取られたんだ?


「・・・・・・あの小さいのは俺向きの相手みたいだな。まあ任せとけ」


「儂も行こう」


 サイガとルードが小さいのに向かう。


「・・・・・・おいタカオ。ジルに俺との模擬戦の時に撃ったヤツを撃たせてみろよ」


「あの口から吐いたレーザーみたいなヤツか?」


「なにそれ?」


「なにそれって・・・・・・見てただろ?」


「ザック。あの時カズキは気絶してたのよ?」


「ああ? そうだっけ?」


「ルシアの殺気に当てられて倒れたでしょ?」


「そうか、そうだったな。おいジル、言ってる事解るか? 俺に撃ったヤツをあいつに撃ってみろ」


 ジルは俺の顔を見る。


「ああ、やってくれ。このままじゃ不味そうだからな」


「わふっ」


 返事をしたジルは俺達の前に出て、肉塊に向き直り力を溜める。この前と同じように体内にエネルギー? を溜めてるんだ・・・・・・け、ど・・・・・・溜め過ぎじゃないか!? バチバチしてる放電が凄い事になってるぞ!


「グルルォアアア!!」


 ザックの時は直径1m程度だったレーザー? が、今回は直径3m位ある。ザックの時は手抜きしてたのか? 地面を抉りながら高速で発射されたソレは、まずは左にいた肉塊を “ボジュッ” と言う音と共に跡形も無く蒸発させた。次いでジルは顔を少し動かし、二体目の肉塊にレーザー? を当てる。


 一体目と同じ音を立てながら二体目も消え去る。 


「ギヤアアア!」 


 ついでにオーラも巻き込んだ様だ。発射されたレーザー? はそのまま進み、川の向こう岸で大爆発を起こした。


 ・・・・・・ジルゥ、威力高過ぎじゃないか?・・・・・・


「す、凄い威力ね」


「ああ、俺とやった時はジルも手加減してたんだな・・・・・・」


「アレを喰らったら流石の儂も只では済まんの」


「お前達、模擬戦とはいえあんなのと闘ったのか?」


 おいサイガ、嬉しそうって言うか楽しそうな顔するなよ? ・・・・・・ってもう戻って来たのか?


「もう小さいのは倒したのか?」


「ああ、速いだけで大した事無かったな」


「うむ、拍子抜けじゃったの」


「ジルゥ、凄いね。おりこうだねぇ!」


 一馬と一樹にうりうりされて、ジルも嬉しそうだ。


「オーラも一緒に消し飛ばしちゃったみたいだな・・・・・・」


「何今の!? ジルがやったの? 凄いね!」


 丁度ルシアも戻って来たか。


「ルシアは大丈夫なのか?」


「うん。心配してくれてありがとうタカオ」


 ルシアが闘っていた方をみると、原型が解らないほどグチャグチャにされたモノが転がっていた。


「えーっと、ルシアも凄いな・・・・・・じゃあ行くか」


「そうね。オーラもジルが倒しちゃったみたいだし」


 ヨットに向かおうとした時、


「腐れよ」


 進行方向の地面がグジュグジュと音を立てながら変質していく。


「タカオ下がって!」


 ミカが一歩前に出て障壁を張る。障壁に阻まれ地面の変質はそれ以上進んでは来ないが・・・・・・。


「ふぅーふぅー。こ、このまま逃がすと、ふぅー思っているのかい? わ、私にここまでやったんだ・・・・・・生きてここからは行かせないよ。配下にするのも、ぐふぅ・・・・・・ヤメだ」


 建物の陰からオーラが出て来る。オーラは右腕の肘から先を損失し、身体の殆どが焼け焦げている。かろうじて無事なのは顔の左半分と左腕だけだ。


「よ、よくも。私の身体をこんなに・・・・・・ひょひょ、うひょひょひょ! これはもう、お前達の身体を使って直すしか無いねええええ!」


「うるせえババア、さっさと死ねや」


 サイガが多数のナイフを投げる。一本残らずオーラに刺さっているが・・・・・・錆びてるのか? 茶色く変色してボロボロと崩れ落ちている。


「ひょひょひょ。そんな物効かないよ。私に触れた物、近づく物は一つの例外なく一瞬で腐れ落ちる。物だろうが生き物だろうがね。せいぜい私に触られない様に気を付けるんだね! ケェエエエ!」


 オーラは触れる物全てを腐らせながら無造作に跳ねて近づいて来る。オーラが足場にしたものは、鉄のコンテナもコンクリートの地面も木箱も、グズグズと嫌な音を出しながら変色し崩れていく。


「タカオとカズマはもっと下がって。ルシア、ザック」


「ああ、やってみる」


「解った」


 ザックは魔弓を引き絞り放ち、ルシアは聖剣を振り剣閃を飛ばす。


 ザックの矢はマナで作られた物だ。腐り落ちる事無くオーラの額に大穴を開け、ルシアの剣閃はオーラの上

 半身と下半身を切り離した。


 オーラは “ドチャッ” と言う音と共に落ちた。


「・・・・・・あれ? 終わりか?」


「えーっと・・・・・・そうなのかな?」


 あっけなさ過ぎる終わりに、ザックとルシアも信じられ無い様だ。勿論俺もだが。


「ジルの攻撃で相当弱っていたのかしら?」


「恐らくそうじゃろう。アレは中々の高火力じゃぞ」


「ふーん、まあ一応焼いておこうかしら」


 そう言ってミカはオーラの死体を炎で包んだ。


「・・・・・・この後はどうするんだ?」


「そうね・・・・・・もう近隣の敵は排除したから、予定通り一晩休んで行ってもいいし。それともこのまま出発する?」


「そうだな・・・・・・例の如く今回も俺と一馬は何もしていないからな、ミカ達の判断に任せるよ」


「そう。じゃあ今晩は予定通りここでキャンプをしましょう。消費したマナも回復させたいし」


「解った。敵がいないならその辺の建物でいいよな?」


「そうね。特に置いてきた荷物も無いから構わないわ」


 俺達は一番近くにあった港の管理棟で休むことにした。





 その後何事も無く朝を迎えた俺達は、ヨットに乗り行ける所まで川を遡ることにした。


 ヨットに乗り込んでいる時にミカが、


「ねえタカオ。アーリマンが言っていた “腐蝕に気を付けろ” ってオーラの事よね?」


「ん? ああ、そうだと思うけど。それが何だ?」


「いえ・・・・・・世界の理を変えられる程の力を持った存在が、わざわざ注意を促す割には大した事無かったなぁってね」


「んー・・・・・・ミカ達的にはそうかもしれないが、俺達だけだったら100%全滅してたぞ。俺的には大した事あったよ」


「そうかしら・・・・・・何か引っかかるのよね・・・・・・」


「仮にオーラが生きていたら、夜のうちに何かしらしてきただろ? それが無かったんだから、やっぱり死んでるんだろ? ほらミカ、また風を頼むよ」


「ん? ああ、そうね」


 そうしてミカの懸念を他所に、俺達は出発した・・・・・・・・・・・・船底にへばりついた肉片に、誰も気づかないまま・・・・・・。


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