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A fused world / 融合した世界  作者: あにゃこ
1-8  人斬りサイガ
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8-3

「あ、父さんおかえり。船あった? ・・・・・・新しい人?」


「あん? 新しい人だってうおっ! 何でサイガがいるんだ!?」


「サイガじゃと!?」


「よおルード、ザックもいたんだな。久しぶりだな」


「何でお主がここにいるのじゃ」


「ああ、俺もよく解らねぇんだけどな。スパインとドワーフ領の境辺りで、エルフの隠れ里の奴等に頼まれてゴアタイガーを狩ってたんだよ」


一馬! そこで目を光らせるな! いい加減佐々木さんにチクるぞ。


「一人でか?」


「そうだぜ? 俺に付き合ってくれる奴なんざいねーよ。解ってんだろ、ザック」


「また無茶苦茶な物を狩っておるの。アレは単独で狩る物ではあるまいに」


「もうお前達レベルじゃないと満足出来ねーんだよ。それともルードが相手をしてくれるか?」


「お断りじゃ。本気でお主の相手をするにはまだ早いわ。生き足りん」


「だろ? 最近じゃ俺の首を取りに来る奴もめっきり減っちまったんだよ。獣でも相手にしなきゃやってられねーんだ」


「殺し過ぎなんだよお前は」


「ははは。まあ否定はしないけどな。で、ゴアタイガーとの戦闘中にいきなり体が引っ張られてな。気が付いたらこの訳の解らない世界にいたって訳だ」


「成程の」


「ルード達もそうなのか?」


「ちょっと待った。なあ、長くなるだろ? 夕飯食べながらにしないか? 立ち話も何だろ?」


「うむ、それもそうじゃの。ではサイガよ、その話はまた後でじゃ」


「・・・・・・」


「どうした、サイガ。食料持って無いのか? ちゃんとお前にも食料やるぞ?」


「お前達この辺りに来たばかりか?」


「ああ、さっきサイガと会うちょっと前だな」


「じゃあ知る訳無いか。あのな、この辺りは夜になるとヴェノムトードが海から出て来るぞ」


「何だ? ヴェノムトードって」


「ん? タカオは知らないのか? カエルのモンスターだな。個体によって違うが、毒とか酸とか吐いて来るんだ。残り20匹位だったか?」


「アレは群れる事は無い筈じゃが、20もおるのか?」


「んー、そうだな。向こうの浜は見に行ったか?」


「いや、まだ行っておらんな」


「ちょっと見に行こうぜ。昨晩俺が倒した奴らが転がってる筈だからよ」


俺達は全員で、サイガが言う浜を見に行った。


防砂林を抜け浜が見えて・・・・・・あの紫の奴の事か?


「もしかしてあれか? あの紫の」


「ああそうだ。俺が昨晩倒した奴らだ」


浜には紫の塊が4つ転がっていた。しかも一匹がかなりデカい。チワワよりも大きくないか? 爬虫類博で

見たゴライアスなんとかカエル位デカいぞ。


「何故一か所に、こんなに集まっているのじゃ?」


「ああ、あれ全部ヴェノムトードだぞ。よく一人でこんな数を倒したな」


「4匹も凄いわね・・・・・・」


「こいつら面倒くさいんだよね」


イグナス人たちは皆知っているんだな。


「何が面倒なんだ?」


「攻撃自体は、さっきサイガが言った通りに毒とか酸を吐いて来るだけだから、大した事無いのよ。でもその表皮が厄介でね。常に体液を分泌しているの」


まあな、ヤドクガエルとかも体表に毒を分泌しているんだっけ? それを吹き矢の先とかに塗るんだよな。


「表皮自体も攻撃を通しにくいんだけど、その分泌液のせいで魔法は流されて効果が薄いし、斬撃も分泌液が絡んで通りが悪いのよ。だから依頼以外ではあまり相手にしないわね。どちらかと言えば忌避されているわ」


「じゃあどうやって倒すんだ?」


「叩き潰すの」


「叩き潰すって・・・・・・じゃあミカとかルシアは相手に出来ないのか?」


「出来なくは無いわ。効果が薄いってだけで、いつかは倒せるし。ルシアは聖剣を使えば問題無いわ。ただ時間が掛かるだけね。この中だとルードが一番相性がいいんじゃないかしら」


「うむ、それはそうなんじゃがの」


「サイガ。お前よく一人でこの数を倒したな。どうやったんだ?」


「ザック。聞かれてはいそうですかと答える訳ねーだろ? それは秘密だ」


「まあそれもそうだな」


「で? これ以外にもあと20もいるんでしょ?」


「ああ、日が沈んでから海からやってきてな。一時間位は闘ってたけど、4匹目でいい加減面倒になって逃げたんだよ」


「じゃあ今晩も来るのかしら?」


「そうだと思うがな」


「なあ、本当にこれってカエルなのか? カエルって海水駄目じゃ無かったか?」


いや、見た目はまんまカエルなんだけどな。


「そうなのか? イグナスでは海辺にいるカエルもいるぞ?」


「でもどうするんですか? もうすぐ夜になりますよ?」


「って言うか、カエル如きでそんなに大変なのか? いまいち想像できないんだが。そもそも何で闘う事が前提みたいな話になってるんだ? 逃げたら何か不味いのか?」


「タカオ。確かにこっちが移動すれば良いだけの話だけど、今からまた寝る場所を探すの?」


む、それもそうか。一馬達は荷物を下ろし終えている。


「ただいまー!」


ん? 一樹とジルか。


「何処まで行ってたんだ? 一樹、この人はサイガだ。暫く一緒に行動するからな。サイガ、息子の一樹とペットのジルだ。あとこっちは一馬だ」


「・・・・・・おっちゃん忍者? それ刀でしょ? いいなー」


一樹がサイガに話しかける・・・・・・こいつ誰とでも話せるな・・・・・・。


「ん? 俺か? 忍者って何だ?」


「忍者は諜報活動とか暗殺とかをやる人だね。あまり表には出ないで、裏で暗躍する感じ?」


「成程。じゃあ俺は違うかな。諜報活動はやるが、暗殺は一切しないな。後ろから殺したって何も面白くな

いからな。あとこのカタナはやらんぞ。・・・・・・って何だよこの犬は? じーっと見やがって」


「ああ、ジルか? はは、俺もそれやられたぞ。サイガ、機会があったらジルと模擬戦でもしてみろ。案外お前もやられるかもしれないぞ?」


「何? ザックはやられたのか?」


「ああ、この姿で、殺すのは禁止ってルールでな。俺はやられちまったがルードは勝ったぞ」


「ほう、この犬はそんなに強いのか」


「そうだな。でも今は止めてくれよ? せめて明日の昼間にしてくれ」


「ああ解ったよザック。夜は奴らが来るからな。そうか、この犬はそんなに強いのか」


「なあそんな事はいいから、今晩はどうするんだ? 闘うのか? 逃げるのか?」


「サイガよ、数は20で間違いないのか?」


「そうだな。海の中にまだ隠れていたらその限りじゃないが、おれが確認したのはそれだけだ」


「このまま出発してもいいけど、方角がなぁ。・・・・・・建物に立て籠もったりはどうだ?」


「余りお勧めはしないぞ? 奴らの吐く酸は城壁や騎士団の鎧も溶かすからな」


サイガがそう言って来る。


「弱点とかは無いのか?」


「あまり聞かないな」


皆口をそろえて言う。埒が明かないな。


「闘えない俺が聞くのも悪いが、はっきり聞こう。20匹と仮定して全員でやれば勝てるのか? 勝てないなら来た道を引き返す事にする。わざわざ危険な場所で一晩過ごすことも無いからな」


「俺も数に入っているのか?」


サイガが訪ねて来る。


「それはそうだろう。行動を共にするなら一緒に闘ってくれないと」


「まあそれもそうか」


「カズキとジルは数に入れるのか?」


「ザックは、と言うか皆はどう思うんだ?」


「私は大丈夫だと思うよ? 酸と毒だけ気を付ければ大丈夫でしょ」


「儂はどちらかと言えば反対じゃな。カズキは人型とは戦った事はあるが、獣は初めてじゃろう? 予想外の動きをされて、万が一という事が有りかねん」


「何お父さん、次の敵はあのカエル?」


「ああ、今は闘うか逃げるか話し合っているんだ。夜になると20匹位海から来るらしいんだ」


「なんだ20匹か。洞窟の中のがいっぱいいたね、ジル」


「わうっ」


「・・・・・・そうだろ? だからカズキが皆と一緒に闘えるかなぁって思うんだけど、洞窟がなんだって?」


「だよね。タカオ聞こえてないのかと思ったよ・・・・・・」


「ジルと向こうの方に行ったらさ、海岸沿いの岩場に洞窟があるんだよ。でさ、奥まで探検に行ったら、このカエルが山みたいにいたんだよ。で、こんなの確実に地球の生き物じゃないでしょ? 多すぎて気持ち悪いからさ、ジルに雷撃たせたらみんなひっくり返るんだよ。見てて面白い位に。その後はひっくり返ったカエルのお腹を刺して、止めしといた」


「「「「・・・・・・」」」」


「・・・・・・で?」


「で? 続き? カエルがいなくなったから帰って来た」


「えーっと・・・・・・どうするんだ? ミカ」


「え? 私? そうね。えーっと・・・・・・対処法が解ったって事ね。うん」


「なんだ・・・・・・お腹刺せば簡単だったんだね・・・・・・」


「なあルード、ザック。何なんだこいつら?」


「何なんだと言われてもな・・・・・・」


「うむ、返答に困るんじゃが、強いて言えばあの一人と一匹は才能の塊って所かの」


「ああ、そうだな。だからサイガも色々教えてやってくれよ」


「そ、そうか。前向きに検討しておく」





日が暮れるまで時間があるので、全員で一樹が行ったという洞窟を見に行った。


「ここだよ。あれ? 動いてるのがいる? さっき全部殺したよね、ジル。見逃したのかな?」


「わふっ!」


洞窟内部のカエルは、殆どが白っぽい腹を出しその腹を切り裂かれている。しかし5匹ほどのカエルが健在で、ぴょこぴょことこちらに向かって来ている。


「どうするの? またやる?」


「そうね、カズキのやり方を見せてくれるかしら」


「解った。じゃあジル、雷撃って」


「あうっ」


ジルは返事をすると、唸りながら帯電する。


「この犬は雷を使うのか・・・・・・」


ぼやくサイガをよそに、ジルは5本の細い雷を撃ち出した。


バシイッ! 


寸分違わず5匹のカエルに命中する。


「見てて、これからが面白いから」


雷を受けたカエルは、ピクピクしながら二歩三歩と歩いた後にごろんとひっくり返った。


「ね、ね、面白いでしょ? わざわざひっくり返るんだよ? で、後はこうして、剣にマナを入れて――お腹を刺すだけ。ね? 簡単でしょ?」


「え、ええ、そうね・・・・・・」


「カズキ? 随分マナの扱いが上手になったね・・・・・・魔剣にマナを纏わせるなんて凄いよ」


「そうでしょ! 車の中でジルとずっとやってたんだ。 コツが掴めたら簡単だったよ! 色々試したし!」


ひっくり返った5匹のカエルの腹をザクザクと刺して回る一樹。ミカ達が驚く程凄い事なのか?


「あー、これで夜の対策は万全って事でいいのか?」


「いやザックよ。全滅したのではないか? 数からしてここが巣だった様に思えるんじゃが」


「そうだな。俺は海から来たと言ったが、確かにこっちの方向から泳いで来ていたしな」


「じゃあとりあえず戻るか?」


「そうだな」


・・・・・・イグナスグループは、何か納得して戻り始めた。


「ほら、タカオ達も行こうよ」


そう促してきたルシアを呼び止める。


「なあルシア、何がそんなに変なんだ?」


ミカも立ち止まる。


「ん? 変では無いよ? 凄い効率的な方法を発見しただけ」


「一樹のやり方がか?」


「うん、そうだよ。やらなきゃ解らないかな? じゃあちょっと見てて」


そう言ってルシアは、2匹のカエルの死体を持って来て岩に乗せる。一匹は背中が上、もう一匹は腹が上。


そんな色のカエル掴んで平気なのかよ。


「まずは聖剣の切れ味を見て」

ルシアは聖剣を振りかぶり、横にある岩を音も無く斬った。


ゴドドン・・・・・・


「ね? 岩位簡単に斬れるの。次はヴェノムトードの背中ね」


ルシアは同じように振りかぶりヴェノムトードの背中へと振り下ろした。


ブニュルッ・・・・・・ほとんど聖剣の刃?が通っていない。


「聖剣でもこんななんだよ? 他の武器もたかが知れるでしょ? 最後はお腹ね」


聖剣をヴェノムトード腹に振り下ろす。


ブチュッ・・・・・・聖剣はヴェノムトードの腹は切り裂いているが、その下にある背中で止められている。


「どうかな? 解った? ヴェノムトードの討伐には時間が掛かるって意味」


「ちょっと待った。分泌液がどうとか言わなかったか?」


「ええ、言ったわ。分泌液が刃物や魔法の通りを悪くしていると言うのも事実。斬撃を絡めとり、魔法を流しているって言ったわ」


「これがもっと大きい魔物なら腹への攻撃にも気付いたんだろうけど、この大きさじゃねー」


「わざわざ足元にいる様な生き物をひっくり返さないって事か」


「そんな所ね。魔法だって撃ち下ろす感じになるしね」


「ジルの雷の方は? 誰も撃った事が無かったのか?」


「そこが解らないのよ。仮に何かの属性の魔法が効かなかったら、他の属性の魔法で試すでしょ? どの属性が効果が有るのかって。私だってそうよ? 一番効率の良い属性を探すわ。当然イグナスでヴェノムトードの討伐依頼の時に、雷の魔法を使ってるわ。その時だってこんな効果は無かったの。だから驚いているのよ」


「ふーん。俺には良く解らないが、まあ対処法があったって事でいいか」


「私的にはかなり納得が行かない結果なんだけどね」


「これも世界の理が変わったからって奴じゃないのか? ほら、そろそろ行こうぜ」


「そうだね、行こうミカ」


「おらー、一樹行くぞー!」


「はーい。ジル行こう」




その後、夜になってもヴェノムトードは現れなかった。


俺達は夕食後に眠りについたが、ルード、ザックは、


「まだ生き残りがいるかもしれんじゃろう? 飲みながら儂等で見張っておるから、タカオ達はゆっくりと眠るがよい」


「ついでに何が起きているかも話しておくからよ」


そう言って、サイガも交えて朝まで飲んでいた様だ。


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