7-3
私はタカオの話を黙って聞いていた。
「って事だな、俺が意識を失っていた時? に起こった事は」
・・・・・・この話を信じろと?・・・・・・タカオを疑う訳では無いけど。世界の異変は既に起きている事だからいい。眷属の事も実際戦闘になったからいい。でも、何故タカオを眷属に?
「・・・・・・とりあえず意識が無い時に、何が起こっていたのかは解ったわ。タカオは今は何ともないの?」
「ああ、別に異常は感じられないな」
「今は判断材料が少なすぎて、私も結論を出せないわ。眷属化もそうだけど、タカオが会ったのが本当に神なのか、しかも今回の騒動を引き起こしたアーリマン自身なのかの判断も出来ないしね」
「まあそりゃあそうだよな。実際体験した事とは言え、俺も全てを信じている訳じゃないしな。皆には黙っていた方がいいか?」
「そうね・・・・・・まだ何も解らない状態だし、その方が良いかも。中途半端に話して混乱しても不味いしね」
「解った。皆には黙っておこう。倒れた原因は、精神的疲労から来た貧血って事にしておこう」
「ええ、それで良いわ。・・・・・・ちょうど来たみたいね」
山の方を見ると、全員が走って来ていた。つーか本当に早いな。一馬、一樹、ジルも付いて来ている。
「タカオ! 大丈夫!」
白銀の鎧を纏ったルシアが、俺を跳ね飛ばす勢いで近づいて来る。
・・・・・・おい、スピード落とせよ? おい! 緑のオーラが鎧から漏れてるぞ! その勢いで止まれるのか!?
ザザ――ッと言う音と砂煙を上げながら、俺の眼前で急停止したルシアが抱き付いて来る。
「ぐうっ! ちょっちょっと待てルシア! そのオーラは勇者の力を出して・・・・・・」
ヤ、ヤバい、あ、圧力が洒落にな、ならな・・・・・・
「タカオが急に倒れたって言うから! 私びっくりしちゃって! ねえミカ! タカオは大丈夫なの!?」
「ルシア、落ち付いて。さっきまで大丈夫だったのに、今死にかけてるわよ」
マ、マジでヤバい・・・・・・呼、吸が・・・・・・
「え? きゃあっ! ご、ごめんなさい! タカオ大丈夫!?」
「父さん大丈夫?」
「ああ、今死にかけたけどな」
「ごめんなさい」
「もういいよルシア。心配してくれたんだもんな。ありがとうな」
「でも、父さんが貧血なんか珍しいね?」
「だな、俺もびっくりしたよ」
「しっかしこれをジルが倒したんだって?」
「ああ、そうらしいな。よくこんなもん倒せたよな? ルードもルシアも歯が立たなかったんだろ?」
「うむ、これ程の防御を持った相手は中々おらんぞ」
その時、一馬が “ダ” を触ろうとしていた。
「一馬! 触るな!!」
「え?」
ペタペタと、“ダ” の身体を触っている一馬。
「・・・・・・お前何とも無いのか?」
「何ともって? 何が?」
「あ、いや、何でもない。勘違いだったみたいだな」
「ふーん」
俺はミカと目を合わす。やっぱり俺だけなのか・・・・・・?
「皆騒がせて悪いな。俺は何とも無いから戻るとするか」
「そうね」
「私もタカオと帰る!」
「うむ、では儂等は走って戻るとするか」
「ええ? 後ろに乗っていこーよー」
「カズキよ。走るのもまた修行の一環じゃ。えーじぇんとになるのであろう?」
「うん、じゃあ走る」
「うむ。お前は強くなるぞ?」
「へへへ、じゃあ先に行ってるね! ジル行くぞ! 家まで競争だ!」
一樹とジルは凄い勢いで走って行った。犬と競争なんかして勝てると思ってるのか?
「じゃあタカオ、俺とルードも行くな。ミカもルシアもいるから大丈夫だと思うが、気を付けてな」
「ああ、済まんなザック。ありがとう」
「へへ、別にいいよ。ミカとルシアの大事な人だからな。じゃあ向こうでな」
「じゃあね父さん、気を付けてね」
そう言ってルードとザック、一馬は走って行った。
・・・・・・結局何だったんだ? 世界がどうなっているのかが、やっと理解出来て来たと思ったら・・・・・・。
俺はぼーっとしながらトラックを走らせていた。誰もいないなら少なくとも飛び出しとかは無いだろうからな。自爆だけ気を付ければいいだろ。
牛丼チェーン店の前を通った。
「タカオ、ここは何?」
「牛丼って言う料理を食べられる店だな」
「美味しい?」
「んー、嫌いだから絶対食べないって言う人は聞いた事無いかな?」
ゴトン!
何だ? 何か踏んだな。
クチュン!
ルシアがくしゃみをした。
「はは、随分可愛いくしゃみだな、ルシア」
「なによー、私だってくしゃみ位するよー」
他愛のない会話をしながら走らせていると、ミカが唐突に
「タカオ、誰かいる」
「ん? 本当だ・・・・・・男だな、生き残りか?」
その男は道路の真ん中に立っている。俺達を待ち受けている様にも見えるが・・・・・・まあそれもそうか。誰もいない世界で、車が走っていれば俺でも待ち構えるな。
「それは無いわ。この近辺に生き残りはいない筈」
・・・・・・でもアルマが、今はミカ達の探知魔法の正確性が無いって言ってたよな? その話はミカにはしてあるから、本人も解っている筈。
「しかし・・・・・・」
「タカオ、私を信じて」
ルシアもここ最近見せていたぽわぽわした表情では無く、険しい表情になっている。
男の前で車を止め、降りてみる。ミカとルシアも降りて来た。二人とも俺の左右に立つ。
男は20代後半から30代前半って所か。肌の色が浅黒い以外は、中肉中背でこれと言った特徴が無い。両
手をポケットに入れて俯いている。
「こんにちわ、生存者の方ですか?」
「・・・・・・」
返事が無いな・・・・・・気が動転してるのか? 日本人じゃないのかもな? 歪みとやらで外国から飛ばされて来たのか?
「大丈夫ですか?」
そう言いながら、もう一歩男に近づこうとした時、
「!!」
男が右手をポケットから出した。その手には短刀が握られていて、俺を刺そうと飛び込んできた!
「うっ!」
いきなりの事なので避ける間も無く、俺の腹に短刀が刺さっ・・・・てない?
「あれ?」
男の右手には短刀が、いや、手首から先が無くなっていた。
ルシアは剣を振り切った体勢にある。ルシアがやったのか。
「ぐううっ!」
男は更に左手に持った短刀を俺に突き立てようとするが、
ズドン!!
爆発音と共に男は吹き飛んだ。
今度はミカか。男に掌を向けている。
「タカオ、知らない相手に迂闊に近づかないで」
「ああ、すまん。助かった。次からは気を付ける。ルシアもありがとう」
吹き飛ばされた男は動かない。
「一体何だったんだ? 日本人じゃ無かったみたいだから、何処かから飛ばされて狂ったのか?」
「さあ? どの道もう死んでるわ」
「・・・・・・そうか・・・・・・まあ、ミカとルシアがやってくれなかったら、死んでいたのは俺だしな・・・・・・」
「そうよ。殺られる前に殺る覚悟を持たないと駄目よ」
「んーそれは無理っぽいが、気を付けるよ」
せっかくの生き残りっぽかったが残念だ。俺達はトラックに乗り走り出した。
俺はぼーっとしながらトラックを走らせていた。誰もいないなら少なくとも飛び出しとかは無いだろうからな。自爆だけ気を付ければいいだろ。
牛丼チェーン店の前を通った。
「タカオ、ここは何?」
「牛丼って言う料理を食べられる店だな」
「美味しい?」
「んー、嫌いだから絶対食べないって言う人は聞いた事無い? ん?」
ゴトン!
何だ? 何か踏んだな。
クチュン!
ルシアがくしゃみをした。
「はは、随分可愛いくしゃみだな、ルシア・・・・・・あれ?」
「なによー、私だってくしゃみ位するよー」
何らかの違和感があるが、他愛のない会話をしながら走らせていると、ミカが唐突に
「タカオ誰かいる」
「ん? 本当だ・・・・・・男だな、生き残りか? ・・・・・・さっきも・・・・・・え?」
その男は道路の真ん中に立っている。俺達を待ち受けている様にも見えるが・・・・・・
「それは無いわ。この近辺に生き残りはいない筈」
「あれ? ・・・・・・えーっと」
「どうしたのタカオ、私を信じて」
ルシアもここ最近見せていたぽわぽわした表情では無く、険しい表情になっている。
男の前で車を止め、降りてみる。ミカとルシアも降りて来た。二人とも俺の左右に立つ。
男は20代後半から30代前半って所か。肌の色が浅黒い以外は、中肉中背でこれと言った特徴が無い。両手をポケットに入れて俯いている。
「・・・・・・こんにちわ、生存者の方ですか?」
「・・・・・・」
返事が無いな・・・・・・気が動転してるのか? 日本人じゃないのかもな? 歪みとやらで外国から飛ばされて来たのか?
「大丈夫ですか?」
そう言いながら、もう一歩男に近づこうとした時、
「!!」
男は両方の手に短刀を握り、俺に向かって斬りかかって来た!
しかし、俺の視界の端でルシアが動いたと思ったら、男の右腕は肘から先が無くなっていた。しかし男は残った左手の短刀で俺を刺そうとする。
ズドン!!
爆発音と共に男は吹き飛んだ。
今度はミカか。男に掌を向けている。
「タカオ、知らない相手に迂闊に近づかないで」
「・・・・・・」
「タカオ、聞いてる?」
「あ、ああ・・・・・・」
「どうしたの? “また” なの?」
「また? あ、いや違う。そのまたじゃない。いや、何でもない大丈夫だ」
「じゃあ行きましょ。みんな待ってるわよ」
「そうだな・・・・・・」
俺達はトラックに乗り走り出した。
俺はぼーっとしながらトラックを走らせていた。誰もいないなら少なくとも飛び出しとかは、って何だと!?
牛丼チェーン店の前を通った。
「タカオ、ここは何?」
「・・・・・・」
「タカオ?」
「・・・・・・え? ああ、何?」
ゴトン!
何だ? 何か踏んだな。
クチュン!
ルシアがくしゃみをした。
「・・・・・・」
「なによー、私だってくしゃみ位するよー」
するとミカが唐突に
「タカオ、誰かいる」
「え!?」
「ほら、誰か道路に立っているわ」
その男は “また” 道路の真ん中に立っている。さっきと同じ放置車両、さっきと同じ店。さっきと同じ場所に男は立っている。
「どうするの? この近辺に生き残りはいない筈だけど」
「なんで・・・・・・」
「何でって? 降りて確認するの? 眷属かもしれないわよ?」
「そうだよね、明らかに怪しいよね」
ルシアもここ最近見せていたぽわぽわした表情では無く、険しい表情になっている。
男の前で車を止め、降りてみる。ミカとルシアも降りて来た。二人とも俺の左右に立つ。
男はやっぱり20代後半から30代前半って所だ。肌の色が浅黒い以外は、中肉中背でこれと言った特徴が無いのも同じ。両手をポケットに入れて俯いている所も同じだ
さっきまでよりも距離を取り話しかける
「あんた何者だ?」
「・・・・・・」
返事が無いな・・・・・・
「タカオ、どうしたの?」
「それがな――!!」
男がいきなり短刀を二本投げて来た! 狙いは俺か!
「うわっ!」
飛んで来る刃物を躱す技術など持っていない俺は、いきなりの事なので避ける間も無く短刀の餌食に――
ガギンキンッ!!
飛んで来た短刀は、ルシアが斬り落としていた。
「ちっ!」
男が舌打ちをすると同時に
ズドン!!
爆発音と共に男は吹き飛んだ。
またミカの魔法か。男に掌を向けている。
「タカオ、大丈夫?」
「え? ああ、大丈夫って言えば大丈夫なんだが」
ミカとルシアは気付いてないのか? 俺だけなのか? 俺は吹き飛ばされた男に近づく。
「何? 知り合いだった? でもタカオを殺そうとしたのよ?」
吹き飛ばされた男は動かない。誰だこいつは? やっぱり眷属なのか? さっきから同じ事を繰り返してるよな?
「タカオ、本当に大丈夫? 何か変よ?」
「なあミカ、ルシアも。気付いてないのか?」
「ん? 何を?」
「・・・・・・この男と会ってこういう結果になるのが三回目なんだが・・・・・・」
「タカオ、“また” なの?」
「いや、違うって。本当に三回目なんだよ」
「大丈夫だよタカオ。短刀が飛んできてびっくりしちゃったんでしょ? でも心配しないで? 勇者たる私の目の前で、タカオに飛び道具なんて届かせないから」
「・・・・・・いや、そうじゃなくて・・・・・・」
「タカオ? 仮にこれが何回目だろうと、こいつは完全に死んでるわ。だから次は無いでしょ?」
「それはそうなんだが。でも・・・・・・」
「ほら、何回でも私が斬るから。行こう」
「・・・・・・ああ、そうだな・・・・・・」
俺達はトラックに乗り走り出した。




