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A fused world / 融合した世界  作者: あにゃこ
1-4  昔話と現状説明
22/75

4-6

「あはははは、あなた面白い事を言うわね。数えきれない位の世界を、ほぼ永遠とも言える時を掛けて渡り歩いてきた私を? 殺すと? 

ふふふ、どこの世界にもあなた達みたいな輩はいたわ。勇者、武神、それに準ずる者。神の使徒や脱走兵、なんて言うのもいたわね。役に立ちそうな子は、眷属化してあるわ。あなた達も眷属になる? どの道あなた達程度では私を殺すのは無理よ」


「そんな事やって見なければ解らんじゃろう」


「そうかしら? 絶望の中死にたいと言うのなら、それを叶えてあげても良いけど。それよりも、もっと良い事を教えてあげましょうか? あなたとそこのあなた」


アーリマンは私とルシアを指さす。


「あなた達の運命の相手は向こうの世界にいるわよ。意味は解るわよね?」


ルシアは意味が解らず怪訝な表情をしている。しかし私は・・・・・・


「・・・・・・アーリマンと言ったわね。何でそんな事が解るの?」


「私の呼び名は何だったか覚えている? 破壊神アーリマン。ありとあらゆる物の破壊と創造を司る “神” なのよ? それ位簡単に解るわ」


「・・・・・・それを信じろと?」


「信じる信じないはあなた達の自由。そうね、私は神託を下したって所かしら」


「ねえ、ミカ。こいつ何を言ってるの?」


同じく指を指されたルシアが聞いて来る。


「意味が解って無いみたいだから教えてあげたら?」


「・・・・・・ルシア・・・・・・アーリマンは・・・・・・私たちの器の相手が、向こうの世界にいると言っているのよ」


ルシアは眼を見開いて私を見る。次いでアーリマンを見る。今の言葉にアデルとジゼルも反応した。


「本当よ。これでも神の端くれ。嘘は付かないわ。只、もしかしたら向こうでは導きは見えないかもしれないわ。だって世界の理が違うからね。でも会えば一目で解る筈よ」


一目で解るって・・・・・・本当なの? 横ではアデルとジゼルが騒いでいる。


「えー!! ずるーい!! 私のはー!?」


「わ、私も知りたいです!」


「・・・・・・あなた達はまだ成人していないでしょ? もう少し待ちなさいな」


・・・・・・まったくこの二人は・・・・・・恋愛相談の神じゃないのよ? でも、それが本当なら・・・・・・私は・・・・・・


「一つ聞いていい?」


「ええ、どうぞ」


「向こうの世界に行ったら、こっちには戻って来れるの?」


「出来るか出来ないかで言ったら“出来ない” ね。正確に言うなら、ゲートはこの場所に設置したの。こちら側はともかく、向こう側は見て分かる通り、空のはるか上、ここまで来れるならこちらに戻る事も可能よ。あなた達は空を飛べるみたいだけど、それでも届かないとおもうわよ? 只行くのは簡単。落ちるだけだから。真っ直ぐ落ちれば、ほら、あの細長い島国に落ちるんじゃないかしら?」


・・・・・・・落ちるだけって、この高さを?


「ふふ、落ちると言っても自由落下じゃないわよ? そんなやり方だと、送り込むレギオンが全部死んじゃうじゃない。転移って言った方が正しいわね。それに融合が完了するまで、そうねえ一カ月位かしら? それまではゲートは開きっぱなし。行くだけなら何時でも行けるわ。但し、あなた達が最後のレギオンに耐えて、この場所を確保できたらね」


「最後?」


「ええ、最後。私はこの世界と向こうの世界でのやるべき事は終わったの。ならば私は次元の狭間を漂いながら、次の世界に行くだけ。二つの世界が融合する事は決定された。それはもう回避し様が無い事。両方の世界にレギオンが溢れるのも時間の問題。もうここに残る理由が無いわ」


「それってさっき言ってた70億の半分って事?」


「それはヒト種だけの数字よ。動物は入っていないわ。なんだかんだで半分でも100億位はいるんじゃない?もっとかしら?」


「仮にアーリマン、あなたを倒しても止められないの?」


「止まらないわ」


「・・・・・・ジーク、今の話を連合に持ち帰って報告して。そしてレギオンを倒してここを確保する事が出来たら、物資を投下して頂戴」


「既に遠話の魔導具で報告済みですよ、ミカさん」


「ミカ!、行くの!?」


「ええ、私は行く」


「ミカ! 何を言っとるんじゃお前は!」


「あーそうそう、行くなら急いだ方が良いわよ。向こうでも魔物化はどんどん進んでる。急がないとあなた達の相手も――」


私は無言でアーリマンの頭を吹き飛ばした。


「・・・・・・もし、もし私の器の相手が魔物化していたら、どんな手を使ってでもあなたを探し出して・・・・・・殺すわ」


アーリマンは頭の再生をしていたけど、再生が終わる前、口が再生した時点で話し出した。


「・・・・・・あなた、中々マナの収束が上手いわね。どうやったのかは解らないけど、今のは本体、私自信まで届いたわ・・・・・・攻撃を受けるなんて何千年ぶりかしら」


頭部の再生が終わったアーリマンは、別人の顔になっていた。


「もういいわ、あなた達全員向こう側に行きなさい。眷属達には勢力を整えた後、あなた達を優先して狙うように言っておくわ」


途端に風が吹き始めた。いえ、違う! 穴に向けて吸い込まれている! 巨体のルードでさえズルズルと引きずられている。


「いいからさっさと行きなさい」


そう言ってアーリマンは指を鳴らした。吸い込む力がより一層強くなり・・・・・・そのまま私たちは穴に飲み込まれたわ





「で、俺らの世界に来たって訳か」


「そう、これが事の始まり。私たちが何かをした訳じゃ無い。破壊神アーリマンの気まぐれでこんな事態になったの」


「ふーん、破壊神アーリマンねぇ。聞いた事がある様な名前だな。やっぱり並行世界って事が事実だから、色々と似通っているのかもな?」


「それで、吸い込まれた時はほぼ一緒だったのに、落ちて来た時は場所も時間も随分と違ってたの。私とルシアじゃ半日位差があったわ。最初はゲートを通過した時に色々とズレたのだと思ったけど、実際は違った。世界が融合し始めた為、世界自体に歪みが出ていたの。何度か大きな地揺れが無かった? それも融合の影響ね。恐らくこの世界の地形はかなり変わったと思うわ。


それで私とルシア、ザックは飛べるからすぐに落ち合えた。空から見れば戦闘の爆発とか良く見えるしね。で、レギオンを倒しながら移動しててルードを見つけたの」


「そうか。あの地震で地形の変化ねぇ? この辺は変わって無さそうだけどな。で、ミカ達はこれからどうするんだ?」


「どうするって?」


「だから、そのアーリマンとたたかうんだろ? いつまでここにいるんだ?」


ミカはジト目で俺を見る。


「いや! 早く出ていけとかそういうのじゃ無いぞ!」


「ずっとタカオといるって言ったでしょ?」


「じゃあもう闘わないのか?」


「私達を狙って来るみたいだから無理かもしれないけど、向こうから何かしてこない限りはね。世界が融合しても、私はタカオを守り通すわ」


「ふーん。だけど俺は遥を探しに行くぞ? ミカだって合流していない仲間がいるんだろ? どうするんだ?」


「・・・・・・そうね・・・・・・放っといても大丈夫でしょ」


「・・・・・・まあ俺は他の連中の事は知らんからな。ミカがそう言うなら俺は構わないけど」


「種族中1、2を争う人達よ。ちょっとやそっとじゃ死なないわ」


「そうか、なら良いが、俺は遥を探しに行くからな」


「ええ、私とルシアも付き合うわ。で、カズマはともかくあの子と一匹は?」


「ああ、一樹とペットのジルだ。ルード曰くマナ中毒だったらしい。ルードのお陰で解消って言うのか?それで回復待ちだ」


「やっぱりそうなのね」


「やっぱり?」


「タカオ、さっきの話で私が宝珠を投げたって言ったの覚えてる?」


「ああ、流石に覚えているが。それが?」


「マナの宝珠ってこれ位の大きさで、青味のかかった透明な物なんだけど、それに触らなかった?」


そう言ってゴルフボール位のサイズを示すミカ。


「それって・・・・・・」


一馬と顔を見合わせる。


「触った?」


「ああ、庭に落ちていたから何かと思って、俺ら全員触っちゃったけど、不味かったか?」


ミカは涙を滲ませながら両手を組み祈り始める。


「主神フリージアよ、ありがとうございます。サラニアの鎖の導きによりタカオは助かりました。心より感謝致します」


「あー、ミカ? あれってもしかして」


「ごめんなさい。嬉しくてつい。そう、あれは私が穴に投げ入れた物。全部で6個投げ入れたわ。その内の一つがタカオの家に。あの時の感じはやっぱり鎖の導きだったんだわ」


「触ったら不味い物なのか?」


「とんでもない。あれのお陰でタカオ達は魔物化から助かったのよ。あれはマナの宝珠と言って、マナが凝縮して出来る物なの。只のマナタンクとしても使えるけど、超高濃度のマナは魔除けの効果もあるから冒険者、特に魔導士は何時でも数個は持っているわ。あの子達も触ったんでしょ? マナが無い体に急に宝珠から超高濃度のマナを摂取したから中毒になったのよ」


「それって触った人は生きているって事ですか!!」


一馬、急に大声出すなよ。びっくりするだろ。


「誰の事を言っているのかは解らないけど、魔物化が防げただけで生きているかは解らないわ。

只、触っているなら触っていないよりも可能性は格段に上がるわ。マナを体に取り込んだという事は、身体能力が格段に上がる。その子達みたいに、中毒になったのが敵陣のど真ん中でもない限り確率は高いわ。

もし敵陣の中で中毒になったら敵を全滅させるか、マナが切れてその後殺されるかの二択しかないからね。そう考えるとルシアもそうだけど、その子達も運が良かったのよ。ルードが近くにいたんだからね」


一馬・・・・・・佐々木さんか・・・・・・遥もそうだが可能性があるってだけましだな。


「一馬、お互い少しは希望が出て来たな」


「うん・・・・・・」


「タカオ、宝珠はどこにあるの?」


「ああ、触ったらバチッてきたから庭に置きっぱなしだ」


「そう、どこ? 持って来て」


「え? バチッて来るからやだよ」


「タカオも触ったんでしょ? ならもう大丈夫だから」


「ホントか?」


本当だろうなぁ。大丈夫って言うなら信じるけどさぁ。


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