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A fused world / 融合した世界  作者: あにゃこ
1-3  運命の赤い糸?
12/75

3-1

 12:50


 5分程度で〇〇リカーに着いた。ルードそわそわし過ぎ。アル中かよ。店先にあるカートを取り、一台をルードに渡す。


「飲みたいのがあったらこの中に入れてくれ。ただ瓶は割れやすいから投げ入れたりしないようにな。」


「これ一杯分しかダメなのか?」


「・・・・・・本当に誰もいないんだよな?」


「うむ、この近辺には―そうじゃの、あそこの山、それと反対のあの二つ目の山、それと同じくらいの距離のこっちとあっちには儂等と坊主達以外には誰もおらん。儂の仲間達もおらん様だ」


 あの山って・・・・・・確か直線距離で10㎞程度だったか? 半径10㎞四方は誰もいないって事か・・・・・・遥も・・・・・・


 早く店内に行きたいだろうに、俺の心情を察したのかルードは黙って待っている。何だよ平八の癖に気を使ってんのか? 見た目は豪快な江田島だがやっぱり良い奴なんだな。


「すまんルード。誰もいないなら好きなだけ持って行くといい。あ、でも乗ってきたトラックに積めるだけにしてくれよ?」


「うむ、あの乗り物一杯分じゃな。解った」


「ああ、それじゃあ行こうか」


 トラック一杯分と聞いたルードはカートを片手に2台ずつの計4台 “持って” 店内に進む。

 ルードさんや、歩くの速いですよ。それにカートはこうやって押す物だから。手持ちのカゴじゃないから。


「タカオよ、この酒は何じゃ?」

「こっちのは?」

「酒精の強い物が良いのじゃが」

「解らんから適当でよいか」


 どんどんカートに入れていくルード。


「なあ、こっちの言葉は話せるようだが、字は読めないのか?」


「んん? 言葉は翻訳の魔導具があるのでの、大丈夫なんじゃが字は読めん」


「へー、そんな便利な道具があるのか。異世界人同士だから言葉が通じるのが不思議だったんだよな」


「イグナスの民全員が持っている訳ではない。儂等の様な高ランク冒険者は他国からの要請に答える事もあるので各自持っておる。後は国の上層部、外交官や国境を越えて商売をするような行商人、それと各領主は最低一つは持っている筈じゃ」


「ふーん、それってどんなのなんだ?」


「うむ、儂のはこれじゃ」


 ルードは左腕に着けている腕輪を指し示す。


「儂はこの腕輪に付与したが、人それぞれじゃ。ルシアはピアスに付与しておるしの」


「それって外すとどうなるんだ?」


「やって見せようか?」


 そう言ってルードは腕輪を外す。


「ゲルモイト、イマラニ、ハニジュシオ」


「何を言ってるのかさっぱりだ」


 本当にさっぱり解らない。ルードは腕輪を付け直す。


「どうじゃ? 儂もタカオの言っていることが何も解らん」


「ああ、良く解った。で、今何て言ったんだ?」


「うむ、“どの酒が美味いのか解らん” と言ったのじゃ」


「そうですか。解った一緒に見るよ。って言うかルードは酔うのか?」


「さっき飲んだ量程度では酔わんの」


「そうか、じゃあ味見したらどうだ? 俺は大体は説明出来るがルードの好み迄は解らないしな」


「いいのか!? 解った。それは助かるのう。あ、タカオよ、まずさっき飲んだ“びーる”という物はどれじゃ?」


 ビールか・・・・・・350缶じゃ小さいって言ってたよな。500缶か?ビールコーナーに移動する。


「なあルード、ビールも色々な種類があるんだ。ほら、この辺は全部そうだ。原料のホップが効いていたり泡の細かさとか。一口なんだろ? ビールも味見してみてくれよ。」


 そう言って渡すビールを美味い美味いと言いながら片っ端から飲んで行く。ホントに一口だよ。どうなってんだ? 最初の方の味覚えてんのか?


「うむ! これが良いかのう?」


 ルードが選んだのは七福神の一人が描いてあるメーカーの物だった。


「そうか、そっちか。」


「なんじゃ? ダメなのか?」


「いや、これにすれば・・・・・・ほら、この大きさのがあるんだけどな」


 そう言って3ℓ缶を見せる


「じゃあそっちでいいぞ?」


 ゴロゴロとカートに入れる。


「では次は酒精の強い物を教えてくれ」




 ようやくルードの買い物?が終わり、ゴロゴロと数台のカートを押し車に戻る。生ビール一式も持ってきた。説明したらルードは喜々として運んでいた。


 俺は七福神の350缶一ケースとタバコを持って来た。こんな状況じゃそこまで飲む気にはなれないしな。


 ルードは生ビールの他にカート5台分の酒を運んでいる。ひょいひょいとカートごと荷台に積んでいるルードの動きが止まった。


「どうした? まだ足りないとか言わないだろうな。食べ物の調達もするし、一馬も待ってるから、もう行こうぜ」


「・・・・・・何かがこっちに近づいて来ておる」


「それって・・・・・・」


「・・・・・・大丈夫じゃ。この感じはルシア達じゃ」


 ルシア・・・・・・一馬が会った勇者だよな? それがこっちに来た? さっきは10㎞四方誰もいないって言ってたよな。ルードの探知範囲外から来たのか? どうやって?ああ、なるほど。凄いな異世界人。空飛んでるよ・・・・・・。


 俺とルードの前に3人が下りて来た。話に聞いていた通りだ。白銀の鎧を纏い、フルフェイスの兜を被っている。これが勇者ルシアか。黒いとんがり帽子に黒いローブ、見たまんまちんまい魔女っ子のミカ。身長180㎝はあるか、革鎧を着た金髪イケメンザック。魔女っ子ミカが青い瞳で俺を見ている。何だよ? 異世界人が珍しいのか? それはお互い様だ。


 勇者ルシアは俺を一瞥すると、兜を外そうとしていた手を下げ、


「ルード! ここで何をしてるの!? あなたの担当はここじゃ無いでしょ!!」


「なに、面白い奴らを見つけたのでな、ちょっと厄介になっていただけじゃ。ん? ルシアよ随分と――」


「・・・・・・ルード、お酒を飲んでいたわね。お酒の匂いがするわ。それに、その箱に乗っている物もお酒ね」


 魔女っ子が俺を見ながら言う。何で俺を見ながら言うんだよ。


「確かに酒の匂いがするな。何だよルード、一人で飲んでたのか? 一人じゃ無いか。なああんた、ルードすげー飲むだろ。酒の調達にでも来たのか?」


 金髪イケメンが俺に問う。ああその通りだよ。俺は頷き返す。


「なあルード、この人達が――「全くもう! だから私はルードを一人で行かせるのはダメだって言ったのよ! 状況が状況だから、今は飲むなってあれ程言ったのに!! まだアデルとジゼル、ヒューにジークだって見つかっていないのよ!! レギオンだって沢山いたんだから!!」


 ・・・・・・なんだよ?俺の事は無視か?シカッティングか?


「わ、儂はあれしきの量で酔いはせんわい。それよりルシアよ。ず、随分と元気になった様じゃな。大丈夫なのか? もしかしてそうなのか? 可愛い顔が台無しじゃぞ? ほれ、タカオが見ておるぞ? いいのか? のう、タカオよ」


 いやルードさん、フルフェイス被っているから勇者の表情解らないでしょ? 何言ってんの? 微妙に言ってる事も変だぞ? そして何故そこで俺に話を振る。全員が俺を見る。魔女っ子は最初からだけど。


「・・・・・・あ、あなたは何なの? また生き残り?」


 何なのって・・・・・・結構失礼な奴だな、兜取って顔も見せないのかよ勇者。ちょっとカチンと来た。こっちのセリフだよ。お前らがこっちの世界に揉め事を持って来てるんだろうが。 こっちは大迷惑被っているんだぞ? 人を誰何する前に自分から名乗れよ。勇者のくせに礼儀がなってない奴だな。しかも“誰?” じゃなくて“何?” だしな。俺は置き物じゃねぇぞ。


 礼には礼を、無礼には無礼を返すことを信条としている俺は・・・・・・


「ルード乗れよ。もう行こうぜ。一馬が腹減らして待ってるからよ」


 勇者が小声で「あっ」とか言ってるが、構わずに運転席に乗り込みエンジンをかけた。


「あ、ああ、それもそうじゃの。ではルシアよ、また後程な。心配せんでもやる事はやるわい」


「ルード! あなた何処に行くの!?」


 もういいよ、早く行こうぜ。一馬達が待ってるんだよ。その時運転席のドアが開いた。俺が乗るのを見て真似たのか、魔女っ子が運転席のドアを開け、青い瞳で下から俺を見上げている。


「・・・・・・何?」


「私もあなたと一緒に行く」


「だな、良かったなミカ。 おいルード! この酒? 飲むんだろ? まさか独り占めはしないよな? 俺も行くぜ。 ルシア! 俺もちょっと行って来る。ルードの言う面白い奴ってのも気になるしな」


 そう言って荷台に飛び乗るザック。


「あなた達何を言っているの! 私達にはやるべき事があるでしょ! そいつと一緒に行ってどうするの!!」


 魔女っ子は運転席から乗り込もうとしている。おい! 俺が既に座ってるから! 無理やり乗って来るな! 何だよ? もうちょっと行けばシートあるだろ!? なんで俺の膝の上に収まってんだよ!


「解った! 解ったから! 向こうのドアも開くから!そっちに座って「パッパ―――」そこ押すな! クラクション鳴らすな! おい止めろ!!」


 魔女っ子の脇に手を入れ助手席に降ろす。


「・・・・・・・・・・・・」


 魔女っ子は助手席に座って、また俺をじーっと見る。


「今度は何だよ?」


「・・・・・・異世界人のエッチ」


「はあ!? 何が!?」


「・・・・・・胸を触られた」


「はあ!? 触ってねーだろうが! 脇に手ぇ入れただけだろうが! 子供が何言ってやがる!」


「私は子供じゃ無い。名前はミカ・クリンゲル・サガ。ミカって呼んでいい。私はこれでも19歳。成人している。発育が人より遅れているだけで胸だってある」


 そう言ってミカは手の平をお椀型にして自分の胸に充てる。いやいやミカさんや、そのお椀大き過ぎでしょ? 隙間空きまくってるじゃないですか。


「そうか、それはご丁寧に。俺は鈴木孝雄だ。タカオでいい。で、自己紹介が終わった所で、俺は触って無いからな」


「・・・・・・ふん、認めないのね」


「だから認めるって何をだよ!? 何を認めるんだよ!? おいルード! 何だよこいつ!」


「こいつじゃない、ミカ」


「ガハハハ、ミカよ、もうタカオと仲良くなったのか? 楽しそうで何よりじゃ」


「だな。あってすぐにそこまで話すミカは珍しいな。そんなにそいつが気に入ったか? やっぱりそうなのか?」


「仲良くなんてなってねーよ! 気に入られたんじゃねえ! 冤罪懸けられてるんだよ!」


「触ったって認めなさい」


 はぁ・・・・・・もういいや。こいつは無視して出発しよう。もう疲れた。何かここ数日だるいんだよな。食料はあそこのスーパーで済ませよう。そうして俺はダンプを出発させた・・・・・・・・・・・・・・


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