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A fused world / 融合した世界  作者: あにゃこ
1-2  遭遇
11/75

2-6

「こっちの世界に攻め込んだのってやっぱり魔族ですか?」


 一馬が言った。うん、俺もそう思う。定番的にな。前科もあるようだし。実際TVで見た奴らは魔族っぽかったしな。


「いや、違う。始めたのはヒト種じゃ。魔族は機甲種の件以来保守的になっての。それに魔族と言うのは元々それ程好戦的ではないぞ」


 ああ、まあそれも有りがちだよな。しかし保守的な魔族ってなんだよ? 魔王いるんだろ? 好戦的じゃない魔王って何だ?プシュ!


「去年の8の月だったかのう? 儂等は各々が高ランクの冒険者なのでの、特殊個体の討伐依頼などを受け丁度首都に誰もおらんかったんじゃ」


「ちょっと待ってくれ」


 話の最中だがどうしても気になる。


「そもそも儂等って言っているが、ルード達は何人いるんだ? 何人でこの世界に来たんだ?」


「ふむ、まだ言って無かったかの? まあいい、まずイグナスの今代勇者であるルシア・アナ・メイシールド、ヒト種じゃ。神から授かった白銀の鎧を纏い、世界最強と言われておる。歳は22じゃの。それと魔導士であるミカ・クリンゲル・サガ、あやつもヒト種じゃな。19じゃ。ミカは魔導士としては世界で2番目と言われておる。」


「一番じゃないんだな」


「魔法関係で世界最強は魔王ムーアじゃ。魔族を統べるだけあって中々凶悪な魔法ばかり使いこなすぞ?」


「でも今は保守的なんだろ?」


「うむ、言い方が悪かったかの。今回の騒動から魔族領を守っていると言えばよかったの」


「ああ、守りを固めている訳ね。」


「そうじゃ。後で説明するが魔王ムーアの代わりに来とる者がおるでの。で、次が武闘家のアデルと舞闘家のジゼルのモンザ姉妹、双子じゃな。こやつらは獣人族で獣王アルゴ・ブラッドファングの娘じゃ。二人ともトラ種じゃな。この姉妹は一人一人の武力もさることながら、二人で連携を取ると手に負えなくてのう。若さに任せた勢いもあるから儂でも手古摺るわい」


「若いって幾つなんだ?」


「あーっと確か14歳じゃったかのう?」プシュ!


 一樹と同い年だな。・・・・・・若い同年代の獣人・・・・・・以前一馬と一樹がバカ議論していたな。

 本当に獣人が存在していたら? ケモミミの他にヒトミミはあるのか? 無かった場合ヒトミミがある場所はどうなっているのか? 耳の穴はどうなっているのか? 尻尾は? 尻尾は何処からはえているんだ? 腰か? 尾てい骨か? 見せて貰う時は何て言えばいいんだ? “お尻見せて下さい“ かな? バカ一樹お前ストレート過ぎ! もうちょっと遠まわしにさぁ! それに獣人って言っても人ベースなのか、獣ベースなのかでまた変わる訳だし――とか何とか・・・・・・


 何を真剣に話しているのかと、耳を澄ませて聞いていたのが馬鹿らしくなる内容だった。


 ちらりとプシュ!一馬を見ると・・・・・・おい、何目ぇ輝かせてんだよ、ルードでも持て余すんだぞ? 余計な事すると殴り殺されんぞ? 佐々木さんにチクるぞ。


「と、ここまでがおなごじゃな」


「なんで獣王の娘なのに獣王と苗字が違うんだ?普通娘ならブラッドファングを名前に付けないか?アデル・ブラッドファング、みたいに」


「ああ、なるほどの。獣人族に限っては男は父方の姓、女は母方の姓を名乗ると決まっておるのだ。まぁ文化の違いだの。」


「ふーん、そんなものなのか」


「そんなものじゃ。で、男は魔弓士のザック・シャルダー、こやつは魔族じゃ。先程言った魔王の側近とはこやつの事じゃ。擬態能力を持っておる。戦闘力もそれなりにあるが、擬態能力を使っての潜入工作が主な役割じゃの。

 次に神官であるエルフのヒューレット・フリューゲル。神官である事とエルフ特有のマナとの親和性も相まって、治癒魔法で右に出るものはいない。即死以外なら下半身が吹き飛んでも治してくれるぞ。あと防御魔法に特化しておるな。その反面攻撃力は今一つじゃな。後は商人のジークフリード・ヨハン・ヴェンデンハイムだが――」


「おおおい!」プシュ!


「なんじゃ?」


「突っ込みたい所は多々あるが、何で商人が一番勇者らしい立派な名前なんだよ!?」


「そんな事儂に言われても知らんわい。儂が名付けた訳でもあるまいに」


「そりゃあそうかもしれないけど・・・・・・なあ一馬?」


「まあ言いたい事は解るけどね」


 話を振られた一馬は苦笑いをしながらそう答える。


「まあ良い、ジークに会ったら自分で直接聞いてみろ。


 で、ジークフリード・ヨハン・ヴェンデンハイム、長いので略してジークだがこやつは商人だけあってやり手での。戦闘面では我らに2歩、3歩及ばんがマジックバッグを持っておっての。食料から武器から討伐対象の獲物から何でも入るのじゃ。


 それに高位の錬金術師での。自作した色々なポーションを山ほどバッグに入れて来たらしい。一度マジックバッグにどれくらい入るのか試してみたそうなんじゃが、王都くらい・・・・・・と言っても解らんか。まあかなり広い湖の水を入れて見たそうなんじゃが、湖が干上がってしまってもまだ余裕があったそうじゃぞ? 魚が取り放題で一儲け出来たと喜んでおったわ」


 ・・・・・・へーそうなんだ勇者ジーク(商人)凄いね


「で、最後に儂、以前にも言ったが武僧のルード・グランネル、ヒト種じゃ。全部で8人でこの世界にきた」プシュ!


「・・・・・・ルードの説明は無いのか?」


「何がじゃ?」


「ほら、何が出来るとか」


「ふーむ、儂は大した事は出来んぞ? そうじゃのう・・・・・・レッドドラゴンまでなら無傷で倒せるかの、ブラックドラゴンになるとエンシェントクラスになるから無傷ではちと厳しいかの? あ、あとルシアを物理的に止められるのは儂位か?」


「んん? ルシアって勇者なんだよな? 勇者がどれ位強いのか知らないが、人類最強とかそう言うレベルじゃないのか?」


「そうじゃの。イグナス全土で5本の指に入っておる。魔王ムーア、不死王ヒルダ、勇者ルシア、人斬りサイガ、そして儂の5人で上位を行ったり来たりじゃな。ミカもその気になれば入れるのじゃが、興味が無いようじゃの」プシュ!


 また新しい名前が・・・・・・


「何だよ、その人斬りって危なそうな奴は」


「うむ、人斬りサイガはヒト種なのだが、強くなる事だけを求めておっての、強者と見れば所構わず襲ってくるのじゃ。元は何処かの領主に仕えていたらしいが詳細は良く解っておらんのじゃよ。まあ不意打ちや闇討ちの類の卑怯な手段は使わず、正々堂々と正面から一声掛けてから襲って来るのだ」


「一声?何て言うんだ?」


「“やあ、あんた強そうだな。俺とやらないか“ じゃ。強い奴を見かけると何処でもじゃ。例えそこが王城の謁見の場でもな。全くもって面倒な奴なのじゃよ。どうやってそういう場まで来てるのかが全く解らんのだ。気付くと後ろに立っておる。見ていた者によると地面から湧いたとか上から降ってきたとか、全く要領を得んのじゃ。そして振り向くとさっきの一言じゃ。まあ、一声掛けてから斬りかかる辺りを見ると、悪い奴では無いのだろうがの」


 一声掛けたら何でも有りかよ! やっぱり危ねぇじゃねえか。


「やっぱり危なそうな奴だな。そいつも来てるのか?」


「来てる訳が無かろう。悪い奴では無いと言ったが、強者のみとは言えヒト種だけでなく獣人魔族見境無しに斬りまくっておるのじゃぞ。イグナスでは出現、即騎士団出動位の重犯罪者じゃ。手配書が出回っておるよ」プシュ!


「そうか。ルード達の事は何となく解った。じゃあ一馬が会ったのは勇者ルシアと魔法使いのミカと、魔族の男、名前何だっけ?」


「ザックじゃ」


「そう、そのジャックで「ザックじゃプシュ!」ザックで間違い無さそうだな、一馬」


「話を聞いた感じではそうだね。ただザックさん?は金髪のイケメン外人にしか見えなかったけどな」


「それは擬態しておるのじゃ。あ奴の本来の姿は無いのじゃ。シェイプシフターじゃからの」


「へー、シェイプシフターなんて本当にいるんだな。こっちにも存在するとは言われてるけど、実在するとは・・・・・・本当に異世界なんだな」


「今更何を言っておる。既に散々見たであろうに」


「まあそう言われるとそうなんだけどな。」


「ふん、儂等から見ればこの世界だって不思議な物ばかりじゃ」


「だよな。じゃあそろそろ本題に入ってもらおうか」


「・・・・・・・・・・・・ねえ、父さん・・・・・・」


「ん? なんだ一馬」


「・・・・・・いいの?・・・・・・アレ」


「何が?」


「缶ビール」


 は? 缶ビールが何よ? ルードが座っている場所を見る・・・・・・はあ!? 空き缶だらけじゃねーか

 ルードが抱えている段ボールケースを奪い取り中身を確認する・・・・・・までもない! 段ボールケース空じゃねぇか! こいつひと箱全部飲みやがった! 俺は一本しか飲んでないぞ!? さっきからプシュプシュ鳴ってたのはその音か! 目の前に座っているのに全く気が付かなかった!


「おい! 真昼間から飲み過ぎじゃないのか!?」


「あん? まだまだ飲み足りんわい。さっき飲んだ酒精の強い物も良いが、このかんびぃるという物も中々良いな。だが一口サイズじゃから余り飲んだ気がせんのじゃ。もっと大きいのはないのかの?」


 マジかこいつ・・・・・・流石はドラム缶三本だ・・・・・・


「・・・・・・まだ飲みたいのか?」


「あるのであればの」


 はぁ、仕方がない。一樹とジルの恩人だしな。


「本当に人はいないのか?」


「じゃからおらんと言っておろうが。それが何じゃ?」


「じゃあ俺と一緒に来てくれ。一馬、ルードと一緒に〇〇リカーに行って来るから。留守番しててくれ」


「え、持ってきちゃうの?」


「誰もいないなら良いだろ?」


「そうかな?・・・・・・うん、そうかもね。じゃあ何か食べ物も持って来てよ」


 ああ、もう昼過ぎか


「解った、一樹の分も何か探してくるよ。ルードは探知魔法は使えるのか?」


「ん? ミカ程広範囲なものは無理じゃが、ある程度の範囲で気配を探る事は出来るぞ? 何処へ行くんじゃ?」


「ルードの大好きな酒を調達に行こう「任せろ!!」かなって」


「坊主達の心配をしているのであろう。レギオン共が来ないかとな。案ずるな! 儂がちょっと本気を出せば、さっき儂等が闘った場所でさえ余裕で探知範囲内じゃ。あの場所より遠いのか?」


「いや、あそこよりは全然近い」


「そうであろう。だからタカオよ! 何の心配も要らんぞ!」


「本当か?信じていいんだな?」


「無論じゃ。儂はいい加減な事は言うが嘘はつかん。だから早く行くぞ、日が暮れる」


 まだまだ暮れねーよ。まあ、ルードがそう言うなら大丈夫なんだろう。


「解った。じゃあ一馬、頼んだぞ」


「うん、了解。一応飲酒運転だから、気を付けてね」


 そうして再び運転席に俺、荷台にルードが乗り2トンダンプで酒屋へ向かった。




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