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A fused world / 融合した世界  作者: あにゃこ
1-2  遭遇
10/75

2-5

 1月6日 AM11:06


 俺は今ダンプを運転している。荷台には一馬、一樹とジルそしてルードが乗っている。


「ガハハハ、これは面白い乗り物だのう。流石に御者は必要なようだが、馬や土竜に引かせずとも走るのか。ルシア達も乗せてやりたいのう」


 御者じゃねーよ、運転手だよ。ルードは楽しそうでいいな。こちとら遥の安否が心配でそれ所じゃ無いってのに。


 一樹とジルについては、明日になれば元気になると言うルードの言葉を信じることにする。実際二人の動きを止めてくれたし、わざわざ嘘を付く理由が見当たらない。


 それに今後だ。どうすればいい?遥を探しに行くのは当然として、生きている物ほぼ全てが消えて無くなったと言うのが事実なら、いつかは食料の供給が止まると言う事だ。


 未だネット環境が使えず検索とかは出来ないが、本屋に行けば野菜の育て方とかは解るだろう。問題は肉類だ。流石に野菜のみで生きていく自信が無い。ベジタリアンとかいる位だから出来なくも無いのだろうが・・・・・・ふふ、遥の生死が解らず生き物が全滅したかもしれない時に肉の心配か・・・・・・


 そんな事を考えている内に自宅に着いた。


「なんじゃ? 屋根はあるがここが家か?」


「いや、ここは仕事をする場所だ。工場だよ。家はこっちだ」


 一樹とジルを荷台から降ろそうとすると、ルードが二人を担いでくれた。


「重ね重ねすまない」


「気にせんでええ。酒を飲ませて貰えるんじゃろう?」


「ああ、好きなだけ飲んでくれ」


 二人をルードに任せ家に入る。半日しか経っていないのに凄い疲れた。


「そこに一樹、そっちにジルを寝かせてくれ」


「うむ」


「酒の用意をしてくるから適当に座って待っててくれ」


「おお、待っておるぞ。異世界の酒は楽しみだのう。今迄はルシアが煩くて飲ませて貰えなかったしのう」


 また重要なキーワードを・・・・・・異世界だと? それにルシア? 一馬が会った奴らの事か?まぁいい、飲みながら聞くとしよう。


「一馬はそこで一樹とジルの様子を見ててくれ」


「解った」


 一馬、元気が無いな。まあ原因は佐々木さんだろうが。これからの予定に佐々木さんの捜索も入れておこう。


「そう言えばルードはどれ位飲むんだ?」


「うん? 量か?そうじゃのう、これ位の樽で三つはイケるぞい」


 期待した嬉しそうな顔で言うなよ。これ位って、それドラム缶サイズじゃねえか。そんなにウチにねーよ。


「ウチにはそこまでの量は無いが・・・・・・まあ、あるだけ持ってくるよ」


「おお、早くたのむぞい」


 まったく、ドラム缶三つかよ。足りないようなら酒屋に行って頂戴してこなきゃな。




「ルードの好みが解らないから「構わん構わん。異世界の酒にそこまでケチは付けんよ。」


 言うが早いかワインを手に取り指でコルクを抜く。そしてそのままラッパ飲み・・・・・・

 コップ持って来たんだけど。


「うむ、これは果実酒か。ちと薄いのう」


「ああ、それは安いワインだからな」


「この小さいのはなんじゃ?」


 おい、もう一本飲んだのか? 水みたいに飲んだな。


「それは缶ビールだ。この部分を指で起こすと、そう、そうするとほら、そうそこから飲むんだ」


「ほう、これは儂らの世界のエールのようじゃの。しかしこっちのが断然美味い」


「本当はもっと冷やして飲むんだけどな。停電で冷やせてないんだ」


「これは? どう開けるんじゃ?」


 缶ビール秒殺かよ! 早いよ!


「こういった蓋の瓶は、ここをこう捻ると蓋が取れるから」


「ほう、面白いのう異世界の瓶は」


 ほうほうほうほうフクロウかよ。そう言ってルードは42°のジンを一気飲みする。おい大丈夫か? 俺はルードの正面に座り缶ビールを飲む。


「これは中々酒精も強くて良いのう。流石は異世界の酒じゃ。これは美味い」


「それ位の物になると俺らはカクテル――あー、薄めたりして飲むんだけどな。ルードは全然平気そうだな」


 俺の簡単な説明を聞きながらもルードはどんどんと瓶を空にして行く。マジでドラム缶三つか?一馬も呆れた顔をしている。


「うむ、この辺りのはまあまあ酒精はあるようだが龍岩窟の火酒と比べたらまだまだじゃ」


「そうか、じゃあこれはどうだ? その火酒とやらにも負けないと思うが。俺が知る限りではこの世界で一番酒精が高いはずだ」


 一本の瓶の蓋を開けルードに渡す。渡したのはポーランドのスピリッツ“スピリタス”だ。


 組合のゴルフ大会の賞品で貰ったものだが、なんで誰も飲めない様な酒を賞品にするんだよ。96°とか燃料レベルだろうに。当然だが飲まないで(飲めないで)死蔵してあった。


「ほう、それは興味があるのう」


「ただそれは本当に火が点く位強い酒だ。念の為今迄みたいに飲まないで、試しに一舐めしてからにしてくれ。下手に飲むと喉が焼けて死ぬぞ」


 って言ってるのにこいつラッパ飲みしやがった! マジで死ぬぞ!


「カアァァー! これは効くのう! 五臓六腑に染み渡るとはこの事じゃ! これなら樽半分で満足できそうじゃ!」


 ・・・・・・そうですか、それでもドラム缶半分・・・・・・凄いね異世界人。て言うかガソリンとかも飲めるんじゃないのか?・・・・・・


「なあルード、肩の怪我治ってないか?」


「ん? これ位の傷なら一時間もあれば治るわい」


「結構深かったと思うんだが・・・・・・」


「儂等はマナを身体に循環させておる。そのマナを傷に集中させる事により代謝を上げ、治癒速度を上げる事も出来るのじゃよ」


「成程な。中毒者だけじゃないって事か」


「まあ詳しくは多少違うが、大体そんな感じじゃ」


「ふーん、便利そうだな」


「便利は便利じゃが、マナの扱いに長けておらんと出来ないぞ。それにマナ不足の時も無理じゃな」



 12:06


 そんなこんなで飲みかけも含め、出した15本の酒と摘みとして出したナッツ類を全て腹の中に収めたルードは(本当に全部飲みやがった! まだ昼だぞ!)イカの燻製をくちゃくちゃとやりながら、ちびちびと缶ビールを煽っている。


 まだ(おそらく)酒を飲んだことが無い一馬もルードの飲みっぷりを見て驚いている。


「そろそろいいか? 色々と聞きたいことがあるんだが」


「うむ、ちと物足りんがいいぞ。儂に解る事なら答えよう」


 まだ飲み足りないのかよ・・・・・・


「まずは今この世界で何が起こっている?」


「うむ、その質問に答える前に、儂等の世界について知ってもらおう」プシュ!


 俺は頷き先を進める。


「まず儂等の世界はイグナスと言う世界での、この世界とは別の次元にある、所謂並行世界らしいのじゃ。まあ儂等から見ればこっちが異世界じゃがの。で、儂等の世界は大まかに分けて3つの大国と幾つかの小国に分かれておっての、その内の一国が自国の領土を広げようと周囲の国々に宣戦布告をしたのじゃ。」


 只の侵略戦争かよ。ありがちな話だ。


「イグナスには色々な種族がおっての、

 ヒト種の王ゴルド・フォン・サビアルが治める国 サビアル王国、

 獣人族の獣王アルゴ・ブラッドファングが治める国 ガリル、

 魔族の王、魔王ムーアが統べる国 チタニア。

 この3種族が先に言った3つの大国じゃ。そして小国にはエルフの国フォレスター、ドワーフの国エヴィロン、不死族の地下帝国、機甲種の空中城塞などが上げられる。その内一国が戦争を始めたんじゃ」


「ん? 何かエルフから後ろは説明が適当だったんだが、何か理由があるのか?」


「・・・・・・うむ・・・・・・特に理由は無い。説明が面倒じゃったんじゃ」プシュ!


「・・・・・・・・・・・・」


 固まる俺と一馬。


「面倒じゃったんじゃ・・・・・・じゃねーだろー!? 何言ってんだよ! ちゃんと説明しろよ!」


「解った解った、そこまで怒鳴らんでもいいじゃろうに。ちょっとした冗談じゃよ」


 んんっ!と咳ばらいをし、缶ビールで喉を潤し説明を再開するルード


「ドワーフの王はセラム・イシスと言う女王での。ドワーフらしく酒に目が無くてのう、会う度に大宴会じゃ。鍛冶を始め生産技術に優れる種族だの。」


 やっぱりドワーフってそうなんだ。見た目もずんぐりむっくりで男も女も筋肉質なのか?あと髭も。


「不死族の王はヴァンパイアロードのヒルダじゃ。国の名は無い。地下帝国と名乗っておるのじゃ。ヒルダは二千年ほど生きているらしいぞ」


「不死族って事はアンデッドなのか? ゾンビとかもいるのか?」


「いやゾンビなどと言った知性の無い者は含まれん。こう言ったら元も子も無いが、魔族と不死族の種族の違いは余り無いのじゃ。空の下で暮らすか地下で暮らすかの違い位じゃな。ヴァンパイアにしても不死族だけでなく魔族にもおるしの」


「ヴァンパイアって太陽の光で焦げたりしないのか? 平気なのか?」


「ん? 何がじゃ? 何故ヴァンパイアが日の光で焦げるのじゃ?」プシュ!


「こっちの世界では、ヴァンパイアは太陽の光に当たると灰になるとか言われているんだよ。あと十字架とかニンニクとか」


「こっちにもヴァンパイアがおるのか。十字架とニンニュク? が何かは知らんが、儂等の世界のヴァンパイアは苦手なものなど無いぞ? 不死を唄っているだけあって生半可な事では死なん。ヴァンパイアロードともなれば、肉片一つ残っていればすぐに再生しよる。奴らを殺すには体をバラバラにして身動き取れなくしてから、超高火力の魔法で一気に焼き尽くさんと死なんのだ」


「ふーん、面倒くさそうだな。エルフと機甲種は?」


「その2種族は特殊での、ん~何と言ったら良いのか・・・・・・エルフには王と言った個体はおらんのじゃ。その代り精霊王と呼ばれるものはおるが精霊の集合体での、実体は無く重要な神託を下したりする時だけ顕現するのじゃ。自然と共に暮らすエルフらしいと言えばらしいがの。プシュ!まあエルフの事はヒューに聞くがよい。


 最後になるが機甲種はもっと良く解らんものでの、金属の体を持った種族なのじゃ。二本足で動くヒト型から四足の獣型、虫型など色々な型をしている。空を飛ぶ物もおるな。ファーザーと言われる何かがおって、それを頂点として側近が一人おり、他は全て平等な立場らしい。空中城塞で世界中を流れておっての、地上に降りてくることは無く延々と風に任せるように飛んでおるよ。


 極稀にその側近が、ドワーフの国エヴィロンに鉱石や油を大量に買いに来る事がある。対価に地上では見た事が無いような魔導具を置いて行く時もあれば只の金貨の時もあるらしい。


 20年程前かの? 今代の魔王ムーアでは無く、先代魔王ワイヤーが一度城塞の宝を奪いに戦争を仕掛けたのじゃよ。500匹を超えるグリフォンやワイバーンに騎乗して攻め入った。


 しかし城塞から青白い光が放たれ、一匹たりとも城塞に到達することなく全て撃ち落とされたのじゃ。ワイヤーはそれに懲りることなく何度も攻め入ったのだが尽く返り討ちに遭っての、最終的にはチタニアの10分の1が焦土と化す程の魔法を、王城に打ち込まれておったよ。


 儂はその時ヒュージバトルクラブの討伐中だったから見る事は出来なかったので、これはアデルから聞いた話じゃが、天まで届く程の煙のキノコが出来上がったらしくての。その爆発の光は隣国の王城からも見えたらしい。


 未だにその場所には何物も住めぬ程の毒素が蔓延しているらしいぞ?皮膚が爛れ、体の内部から壊死して行くそうじゃ。」


 ・・・・・・ほかの種族はともかく機甲種って・・・・・・金属の体ってロボットとかじゃないのか? 話を統合するとオートメーション化された武器工場が空を飛んでる様にしか思えないんだが・・・・・・それに打ち込まれた魔法って・・・・・・キノコ雲、皮膚の爛れ、体内の壊死。それって核爆弾じゃないのか? なんなんだ機甲種って!?プシュ!


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