表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
五日間戦記  作者: のりまる
1日目:辺境の街「スール」
8/22

第8話:冒険者学校①

メリーの店を出た後、武器を買おうかと思ったが、

(魔法使いなら杖なんだろうけど、そもそもまだ魔法は使えないし。剣や槍や斧や弓矢ってのもあるが、将来的にはどう考えても魔法使いだしな。予備で持つにしても何が向いているのかも検討がつかないな)

そう思い、武器屋に入ることを止めた。

(ゴブリン程度なら、木の棒で何とかなるし。ゲームと現実は異なるってことか)

何となくRPG的な感覚で武器屋に行こうと考えていたが、自分の浅慮に溜息をつく。

宿屋に一旦戻って着替えた後、屋台で適当に腹ごしらえをした。

それでもまだ、12時には時間がある。

どうやって時間を潰そうか考えていると、

(あ、そういえば回復薬ってどこで売ってるんだ?ポーションやマジックポーションの材料がヨーギ草やキナ草のはずだからな)

そう思い、屋台のおじさんに聞いてみる。

「ポーション?そんな良いもんはスールじゃ売ってないよ。大体、錬金術師すらいないから、調合の仕様がない。」

「じゃあギルドで買い取ってくれる、ヨーギ草やキナ草はどうなってるんだ?」

「それなら、アバラの街に定期的に売りに行っているはずだ。確かギルドの中で乾燥させているんだと。」

「ふーん。なら街の人達が怪我をしたらどうするんだ?」

「大怪我だったら館付きの聖魔術師様にお願いするが、それは余程の時だけだ。大体はヨーギ草の汁を塗っておけば血止めには十分だ。」

「そうか。ありがとう。大体様子が分かった。話のお代の代わりに、その焼鳥串を2本くれ。」

「まいど!」


そんな話をしながらブラブラしていると、12時の鐘が聞こえてくる。

リョウはギルドに入り、ミミを探す。

ミミはいつもと違って酒場で他の職員と話していたが、リョウの姿を認めると話を切り上げてやってきた。

「待たせたか?」

「ううん、丁度お昼を食べ終わったとこ。リョウさんは?」

「ミミと一緒で食べてきた。」

「あれ?私の名前知ってるの?」

「ああ、すまん。つい癖で最初に鑑定したんだ。」

「そういうことね。何だかんだで自己紹介し忘れてたから、気にしてないわ。改めまして、ミミです。よろしくね。」

「よろしく頼む。」

そんな会話をしていると、他の職員達やまだ10代に見える冒険者達が、何とも言えない目で見てくる。

(ミミは可愛いからな。嫉妬されてるな)

リョウはミミに気付かれないようにちょっとだけ肩を竦めると、そそくさと扉を開ける。

「そんなに急がなくても、時間はたっぷりありますよ。」

ミミは明るい声で話しかけてくる。

(そういう問題じゃないんだがな。もしかして、本人は人気があることを気付いていない?)

そう思い、もう一度酒場の方に振り返ると、「やれやれ」といった感じの職員達。

(やっぱり、ミミは気付いていないんだな)

そう思い、外に出た。


リョウとミミが外に出た後、職員達は会話を再開した。

「あれが噂のミミの一目惚れの相手か?ミミと同い年位か?」

「確か20歳のはずだ。ちゃんとしているようには見えるが、正直どこに惚れたのかよく分からんぞ?」

「まあ、スールの外からやってきて冒険者になった人は久しぶりだからな。物珍しさが勝ってるんだろう。」

「ミミはこの街から出たことが無いからな。普段ならもっと落ち着いているのに、ちょっと舞い上がっているな。」

どうやら、気付いていないのはリョウの方である。






リョウとミミは20分ほど歩き、冒険者学校の前まで来た。

街の門から見て丁度左奥隅、商業区のどん詰まりにそれはあった。

大体50m×100m程の敷地の中に、建物がいくつか並んでいる。

そして、その奥に広いグラウンドのような広場が見える。

(元の世界でいう、都会の中学校ぐらいの敷地はあるな)

リョウは自分の出身中学校を思い出しつつ、建物を眺めた。

「結構大きいでしょ?」

ミミは自慢げに言う。

「正直、もっと小さいと思っていた。驚きだな。」

「実は、警備兵の練兵場を兼ねているの。だから、場所だけはたっぷりと取っているの。」

ミミはそう言うと、スタスタと建物の中に入っていく。

「ザイルおじいちゃん。」

「おう、ミミちゃんか、大きくなったのう。」

ザイルと呼ばれた老人は、そう言ってミミの頭、いや豊かなその胸に手を伸ばす。

「このエロじじいめ、いつもボケた振りしてんじゃないよ。」

ミミはペシッと手を払いつつ、可愛い顔に似合わない鉄火な台詞を吐くと、ザイルの顔を軽く睨む。

「ふぉふぉふぉ。相変わらずミミちゃんは厳しいのう。」

2人の顔に笑顔が浮かんでいるところを見ると、どうやらいつものやり取りらしい。

苦笑しつつリョウは口を挟む。

「ミミ、このエロじじいは誰だ?」

「ああごめん、このザイルことエロじじいはここの管理人兼校長よ。これでも一応、元Sランク冒険者よ。」

ミミは俺の振りに軽く乗りつつ、ザイルを紹介する。

「こら。エロじじいだの一応だの、余計な言葉がつきすぎだわい。まったく、年寄りを大事にせんかい。」

「自業自得でしょ。こちらがリョウさん。昨日スールに来たばかりの新米冒険者よ。」

「初めまして、ザイル校長、リョウといいます。」

元Sランク冒険者という言葉に驚きつつ、改めて挨拶をする。

「校長なんて堅苦しくていかん。ザイルでいいぞ、若いの。」

ザイルは目を細めてリョウを見る。

「若いのに、鍛えているようじゃな。中々見どころがあるわい。」

「解析鑑定、ですか。」

リョウはザイルと反対に目を見開き、驚いたように呟いた。

この世界では、「レベル」や「ステータス」という概念は存在しない。

正確に言えば、「解析鑑定」のレベルを9以上にすれば見えるのだが、何故か普通の人はそこまでレベルが上がらないらしい。

更に、何故かレベルが10にならないと、年齢も見えないらしい。

リョウがステータスを見ることができるのは、「解析鑑定」にSPを最大限割り振ったからだ。

ちなみに、ザイルの目からはリョウのステータスはこのように見えている。


リョウ・ヒヤマ

人族


魔法:

攻撃スキル:

能力スキル:身体能力強化10、解析鑑定10

生活スキル:採集3


称号:


どう見ても身体能力強化10が浮いて見えるからこそ、細身のリョウに「鍛えている」と言ったのだ。

「お主ほどではないが、解析鑑定持ちでな。」

しかし、リョウが驚いたのはザイルが「解析鑑定」持ちだからだけではない。

なぜか、リョウが「解析鑑定」を発動させてザイルを見ても、何も見えてこないのだ。

それこそ、名前すらも。

「そして、『隠蔽』ですね。」

リョウはセーラから貰ったスキルに関する知識の中から、該当するスキルを引っ張り出した。

「ふぉふぉふぉ。良い線いっているの、若いの。その歳で『隠蔽』を知っているとはな。じゃがな、儂は『隠蔽』持ちではない。まあ、秘密にする歳ではないが、お主の勉強の種に秘密にしておこうかの。」

そう言ってザイルは微笑んだ。

「さて、それでは早速見学に行こうかの。」

「よろしくお願いします。」

次の話は3/5(日)にアップ予定です。


感想、ブクマ、レビュー、etc.受け付けております。

宜しくお願い致します!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ