第2話:旅立ちに向けて
連載開始、2話目です。
3話目まで一気に投稿します。
結局、涼以外の勇者候補達は、セーラによって元の世界に戻されていった。皆、涼に申し訳なさそうな顔をみせつつ、どこかほっとした顔をしつつ――
残った涼は、セーラから改めて説明を受けていた。
「――じゃあ、何故向こうの世界が猛スピードで進みだしたのかを明らかにして、その原因を潰すのが今回のゴールになるんだな。」
「はい、そういうことです。」
「時間が早く進みすぎて隣のパラレルワールドに影響を与えるとか、どんだけだよ。」
思わず涼は愚痴った。
「分岐が進んでいれば問題ないのですが、如何せん隣の世界なので。」
「まあ、愚痴っても仕方がない。約5年間でどこまで効率よく調査できるかが最大の課題だな。」
元々、セーラは10人を世界中にばら撒き、虱潰しに調査させる予定であった。
それが、涼1人になってしまい、大幅に計画を変更せざるを得なくなってしまった。
「はぅぅぅぅ」
「落ち込んでも仕様がないだろ。魔法の耐性がなければどのみち≪フォム≫では生きていけないのだし、調査できるだけの体力がないとダメだし。元々俺しか適性のある人材はいなかったんだからな。」
「はい。。。」
涼は別に冷たい人間では無い。あくまでも論理的に物事を捉えるだけで、いや、捉えすぎるだけで。
そして、その論理性を他人にそのままぶつけるだけで。
そのせいで、プライベートでは冷たいだのなんだのと結構陰口を叩かれていたのだが。
「後は向こうの世界の常識というか、一般的な知識を教えてほしいのだが。」
「それは直接脳内に流し込みますね。脳がオーバーヒートしないよう、最低限にしてありますが。」
そういうと、セーラは握りこぶし大の透明な水晶玉を取り出し、涼のおでこにくっつけた。
涼の中に、イメージとして知識が流れ込んでいく。
「なるほど。人族に、獣人族に、エルフに、ドワーフ。そして魔族ね。まるでファンタジーだな。」
涼の中に入った知識は、要約するとこんな感じである。
ステータス:
・全ての生物は「ステータス」を持っており、その値の大小によって個としての能力が定義される。
戦闘・勉強等によってレベルを上げることでステータスを上げることができる。
スキルポイント:
・魔法やスキルについては、レベルが上がることで付与される「スキルポイント(SP)」が自動的に割り振られることによって、使える魔法やスキルが増える、もしくは強化される。
・SPの獲得は、レベルが1上がるごとに0~10ポイントでランダム。
・各魔法・スキルはそのレベルによって0~10の11段階に分かれており、スキルレベルを1段階上げるには、同等のSPが必要(7から8に上げるには、8ポイントのSPが必要)。
但し、涼はレベルが上がるごとにSPを10ポイント固定で獲得可能で、その割り振りも手動で割り振り可能。
魔法:
・世界には「魔素」と呼ばれる物質が遍く存在しており、それを体内の魔素と反応させて魔法を発現させる。
・魔法には、火・水・風・土・聖・魔の6属性があり、大体1人当たり1~3属性の魔法が使える。但し、殆どの人は1属性のみ。2~3属性使える人は稀。
但し、涼は6属性全てを使用可能だが、それぞれ使い方を学ぶ必要がある。
種族:
・人族・獣人族・エルフ族・ドワーフ族・魔族が存在し、それぞれが王を戴いている。
・種族間で争ったり同盟を結んだりを繰り返している。亜人系(獣人・エルフ・ドワーフ)は仲が良いが、それ以外は対立しているのが基本構造。
生態系:
・普通の動植物も存在しているが、魔力により変化した魔物が存在。
その他、言語や各スキルの一覧、一般常識等々もインプットされた。
「何か俺、チートだな。」
知識の受け渡しが済むと、涼は思わず言った。
「5年で原因解決までもっていくにはこれくらいしないと。逆にこれくらいしかできないのです。後はこれを。」
そういって、セーラは涼の右手を握り、力を流し込んだ。
「持ち運び量無制限、時間経過無しのアイテムボックスです。既に消滅したパラレルワールドの亜空間を利用しています。使い方は貴方のイメージ通りで使えます。」
「どういうこと?」
「袋をイメージすれば袋、箱をイメージすれば箱と、世の中にあるものであれば、そのイメージに沿って構築されます。」
「よく分からんが、こういうことか?」
そう言って、PCのフォルダをイメージした。
そうすると、いつもの見慣れた画面が目の前に現れた。
「なるほど、なんとなく分かった。じゃあ、こういうこともできるのか?」
涼はフォルダの新規作成をイメージすると、そこに『新しいフォルダ』が作成された。
他にも色々試したかったが、セーラのジト目を感じ、画面を閉じた。
「後は、『ステータス』と念じてみてください。」
言われるがままに念じると、そこに今のステータスが表示された。
リョウ・ヒヤマ
Lv. 10
残SP:100
HP:150/150
MP:200/200
ATK:50
DEF:50
INT:200
AGI:20
魔法:
攻撃スキル:
能力スキル:
生活スキル:
称号:
「今のあなたのステータスです。かなりINTに寄ってるので、魔法系スキルに振ると調査が楽になるでしょうか。これで準備は完了です。」
「セーラに連絡するにはどうすれば良いんだ?」
「基本的に連絡は不可能だと思ってください。神は世界に早々介入できないから。とはいえ、5年間放ったらかしとはいかないですので、大体1年毎に連絡します。それ以外に、原因までたどり着いたら、強く念じてください。その思念を感じたらこちらから連絡します。」
「了解。」
「最初は目立たないよう、辺境の街≪スール≫に飛ばします。ご武運を。」
そういうと、セーラの手から光が流出し、涼を、いやリョウを包む。
読んで頂き、ありがとうございます!
今回は説明が多いですが、次回からいよいよ旅が始まります。
是非、3話目も読んでみてください!