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五日間戦記  作者: のりまる
1日目:辺境の街「スール」
15/22

第15話:ケリー先生の魔法実戦講座

「さて、魔法の使い方をレクチャーしますが、ここからはかなり感覚的です。なるべく理論立てて教えますが、はっきり言って最初は上手くいかないです。あの子たちも初級魔法の習得に3か月程かかってますから。」

「ケリー先生の教え方が難しすぎるんだよー。」

そう言って、最年少の少年が口を尖らせる。

「違います。何度も言ってますが、普通は3か月程かかるものなのです。あなたたちみたいに不真面目な生徒でも3か月で習得できたのですから、私の教え方は寧ろ上手いんですよ。」

ケリーはわざとらしく少し胸を張って見せる。

どうやらいつものやり取りらしく、少年達は意に介した様子はない。

なんだかんだ言って、少年達とケリーの間にはそれなりに信頼関係があるようだ。

(まあ、ちょっと理屈っぽいが、板書も上手いし、教えるのに向いているんだろうな)

リョウはそんなことを思いつつ、ケリーと少年達のやりとりをどこか微笑ましく見つめる。

そんなリョウの目線に気付いたらしく、

「ではまず、あちらの盛り土に向かって片手を前に突き出してください。最初は発動体を使わない方が魔力のコントロールがしやすいです。」

どうやら、2mくらいの盛り土が魔法の的のようだ。威力が低い初級魔法であれば、あれくらいで十分なのだろう。

「次に、精神を集中させて魔力を掌に集めてください。魔力が集まってきたと思ったら、火の玉をイメージして、こう呪文を唱えてください。『炎よ、わが眼前に顕現せよ。ファイヤーボール』。」

そうすると、ケリーの掌の目の前に、握り拳大の火の玉が現れ、盛り土に向かって飛んで行った。

横に並んでいた3人の子供達も次々に火の玉を飛ばしていく。

リョウはSPを3ポイント振り、火魔法2を獲得すると、ケリーの教えに従って魔力を掌に集め、呪文を唱える。すると、

「ドカーン」

とという音と閃光ともに、眼の前の盛り土が吹っ飛んだ。

「はあ?」

立ち込める土煙の中、リョウは思わず呟いた。


「あのー、リョウさん?どういうことか説明していただけます?」

「いや、俺が聞きたいぐらいなんだが。」

リョウはそう言いつつ、盛り土を見やる。

リョウの目の前の盛り土だけが大きく崩れ、向こう側が見えている。

「恐らく、リョウさんは火魔法の才能があるんだと思います。それが初めてで顕現するなんて、教師冥利に尽きます。ですけどね、ちょっと威力が大きすぎやしませんか?私の上級魔法ぐらいありますよ?どんな魔力量をしているんですか?」

ケリーは先ほどの落ち着いた様子はどこへやら、早口でまくし立ててくる。

少年達は茫然として、いや気を失って白目を剥いている。

(立ったまま気を失うなんて、器用な真似を)

いつの間にか、騒ぎを聞きつけた訓練中の警備兵が周りを取り巻いていたが、少年達の様子に気が付いたようで介抱を始めた。

そんな警備兵の間から、ひと際小さな影がひょこっと出てきた。

「リョウ、ちょっとこっちに来てくれんかのう。ケリー、リョウを連れて行くぞ?」

「ザイル校長、私の生徒ですよ、私も聞きたいことが山ほどあります。」

ザイルはケリーに頷き、警備兵たちに子供達を任せて自分の部屋へとリョウを連れて行った。






「まず、何をしたのかを説明してもらおうかのう。」

ザイルはどこか呆れた顔でリョウに説明を求めた。

「どうって、ケリーが教えてくれた通り、魔力を掌に込めて呪文を唱えただけだが。」

「どれだけの魔力を込めたんじゃ?」

「どれだけって、初めてだから全身全霊……」

はあ、とザイルは呟き、今度はケリーに質問した。

「ケリーよ、魔法の威力と魔力量の関係については説明したのかのう?」

「いえ、才能が顕現しないと理解できないですし、理論も複雑なので後回しにしていました。」

「上級になると威力が上がるんじゃないのか?」

リョウの言葉に、なるほどのう、と呟き、ザイルは説明を始めた。

「魔法の威力はのう、4つの要素で決まるんじゃ。一つはリョウが言うように、上級の習得じゃ。しかしこれはおまけのようなものじゃ。」

ザイルが説明を始めたことで、手持無沙汰になったケリーは立ち上がった。

「ケリー、どこへ行くんじゃ?」

「お茶を淹れようかと。」

すまんのう、とザイルは言い、説明を続けた。

「残りの3つが重要でのう、一つは個々人の純粋な能力。これは何となく分かるじゃろ?才能と言っても良いかの。二つ目は自分の魔力を触媒にして、世界に遍く存在する魔素を自分の魔法に取り込む力じゃ。この力は『集約』と呼ばれておるが詳細は不明でのう、呪文に紐づくという者もおれば、集中力に依存するという者もおる。」

ここまで話すと、ザイルはケリーが淹れたお茶で唇を湿し、一息吐いた。

その様子に、ケリーは話を引き取り、続きの説明を始めた。

「三つ目は、魔法に込める魔力量です。恐らく、リョウさんは今まで魔法に触れてこなかったにも関わらず、魔力量が異常に大きいんだと思います。」

「そうなのか?」

そう言って、リョウはケリーのステータスを見てみる。


ケリー

人族

Lv. 18


HP:320/320

MP:175/180


ATK:80(+0)

DEF:95(+0)

INT:120(+36)

AGI:78(+0)


魔法:火属性魔法5、風属性魔法6

攻撃スキル:杖術4

能力スキル:魔力強化5

生活スキル:


全体的にバランスが取れているが、リョウと比較して全体的にステータスは低めだ。

何よりも、先ほどの火の玉を撃ち出す際にMPを5しか消費していないのだ。

時間が経っていることを考慮しても、精々消費したのは10程度だろう。

リョウは自分のMPを確認してみると、なんと200近くも減っている。

「集約」については不明だが、これだけMPを込めれば、そしてINTの差を考えれば、バカみたいな威力になってもおかしくない。

「自覚が無いとは恐ろしいのう。どうじゃ、魔力切れでだるくないか?」

「いや、問題ない。驚いて少し疲れたが、魔力は半分以上残っているようだ。」

ザイルとケリーは驚いたように顔を見合わせる。

「信じられませんが、どうやら初級魔法で消費できる最大値以上の魔力を持っているようですね。自分より上がいることは理解しているつもりでしたが、まさか初級魔法習いたての人にあっさりと魔力量を抜かれるとは思いませんでした。初めて教師を辞めたくなりましたよ。」

ケリーは自嘲気味にそう言い、肩を竦める。

「だけど、威力のコントロールが出来なかったら、すぐに魔力切れになるし、そもそも、あの威力じゃ狩りも何もあったもんじゃない。まだまだ教わることはあるよ。」

リョウはちょっと申し訳ないと思いつつ、軽くフォローする。

「ケリーよ、良い師とは弟子に超えられることに誉を感じるものじゃ。おぬしはまだまだよのう。」

「ザイル校長、それとこれとは少し話が違う気もしますが……良いでしょう、午後は魔力コントロールの方法についてレクチャーしましょう。」

「いや、午後は狩りに行こうかと……」

「ダメです!魔力をコントロール出来ない人間を放ったらかしにできますか!はい、今から行きますよ!」

ケリーにぐい、と腕を掴まれ、リョウは引っ張られていく。

「痛い、痛い。分かったから、行くから、離してくれーーー!」


結局、昼飯抜きで夕方まで魔力コントロールの方法をみっちりと教えられたリョウであった。

次の話は3/30(木)にアップ予定です。


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