そして僕らは闇に惑う
気がつけば周りには深い闇。
闇。ただそれだけ。
他には何も見当たらない。
「ここは……何処だ……?」
思わず声が漏れる。
何も見えない。自分の手すらしっかりと見るのが難しいぐらいに。
「やっと気付いたか」
突然、男の太い声が響いた。
「誰だ!」
急に声がしたのと何者かわからない不安とで反射的に聞いてしまった。
「さぁ誰だろうね。当ててみなさい、知也」
「……何故、僕の名前を知っている?」
「それは無論、お前に深く関わったことがあるからだよ、知也」
何か小馬鹿にしたように最後に自分の名前を言われるのが腹立たしい。
本当に誰なのだろうか?
「まぁ、詮索はやめにしようじゃないか。実のところ今のお前のことはあまり分からないしね。お互い様だよ」
完全に相手のペースで話が進められている。こちらの分が悪い。
それでも、ある程度はこの状況を理解しておきたかった。
「此処は一体どこなんだ?お前は僕に何の用がある?」
相手はすぐに返事をせず10秒ほど間を空けてから答えた。
「そうだな……簡単に言えばお前に警告をしに来た」
「警告?なんの警告だ」
「……お前の妹……奏から離れるんだ」
「……ッ!!お前は何を言っているんだ‼︎」
不気味だ。本当にお前は誰だ?なんで奏から離れる必要がある?そもそも離れるってどういう意味だ?
頭が痛い。僕は完全に混乱している。なんなんだこいつは。
「お前は……知也は本当に可哀想だよ。お前は優秀なのにあんな奴らと一緒にいたせいで大変な目にあっている」
「……何の……こと……だ?」
「何をとぼけてるんだ。分かっているくせに」
「本当に何なんだお前は!!何のことだかはっきり言えよ!!」
怖い。怖い。怖い。
怖いからただ怒鳴ることしかできなかった。
「お前はあいつらにお前の人生を壊されたんだ。あの時俺の言うことを聞いていれば今も苦しまずに済んだのに」
「僕の人生が……壊された……だと…?」
「そうさ!お前の母親……瀬川春香……にな……」
体が固まった。そして自分の耳を疑った。
今、なんて言ったこいつは。
春香……お母さんだと?
「お母さんが……何をしたって言うんだ!!」
さらに男は話し続ける。
「お前は本当なら今頃、俺の近くにいるはずだったんだ。そしてもっと優雅な暮らしができていたはずだ」
もう訳がわからない。だが、お母さんのことを悪く言っていることだけはわかる。
「それをお前の母親はぶち壊したんだ。無理矢理お前を連れて行ったんだよ。苦労する道へとね」
僕は震えだした。怖いからではない。怒りでだ。
「しかもその悪女が余計なものまでお前にくっつけやがった。それが今でもお前を苦しめているだろう?」
黙れ。
「まぁ悪女はさっさと死んだからまだ良かったさ。でもあいつが生み出した余計な産物がまだ残っているのさ」
黙れ!
「でも俺は親切だからさぁ、その邪魔者をお前のために片付けてあげたいと思っているわけさ」
黙れ黙れ黙れ!!!
「俺が、お前を……知也を楽にしてやる!」
「黙れぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!いい加減にしろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
叫んでいた。何故かはわからない。それでも僕は今までで一番怒っていた。
「お前に、お母さんの何がわかる!!お前の言うことなんか絶対に聞かないからな!!」
そう叫んだ後。僕は寒気がした。とても不気味な何かが、僕の心を襲う。
男は今確かにニヤリとした。否、そう感じた。
闇で相手の顔は一切見えない。それでも、確かにあいつは冷徹な笑みを浮かべた。そう直感した。
「それは残念だ。それでも俺はお前を助けるよ。お前のことが……大切だからな」
そう男は言うとパチンと指を鳴らした。
すると闇に明るすぎる光が灯された。
僕がいる場所と、もう一箇所に。
その一箇所には……
「……ッ!奏!!!」
僕の数メートル先に光で照らされた場所には、椅子に縄で縛りつけられた妹の姿があった。
「お前……奏に何をしたぁぁぁぁ!!!」
僕の怒りは頂点に達した。
「別にまだ何もしていないさ。こいつはただ眠っているだけだ」
光が灯っても、男の顔は影で見えない。
そして男は言葉を続ける。
「俺はお前を取り戻す。まずはその準備だ。悪く思うんじゃねぇぞ。お前のためだ」
突然、光が消え最初と同じ闇に包まれた。
「ひとまずお別れだ、知也。また近いうちに会おう。楽しみにしているよ」
「待て!まだ話は終わってない!それに、奏を返せ!!」
すると、奏の声が微かに聞こえた。
「お兄ちゃん!お兄ちゃん!助けて!お兄ちゃん!お兄……ちゃ……ん……!お……にぃ……」
「お兄ちゃん!お兄ちゃん!起きて!お兄ちゃん!」
目が覚めた。目の前に奏の心配そうな顔があった。
今までのは、夢だったのか……?
「やっと起きた……大丈夫?ずっとうなされてたよ?途中から泣き出すし」
え?今なんと?
恐る恐る手を自分の目に持っていく。
濡れた。紛れもなく涙だ。
「僕、泣いてたのか?」
「うん、びっくりしちゃったよ。なかなか起きてこないから部屋覗いたら、うんうん言ってうなされてたんだもん。本当に大丈夫?お兄ちゃん」
「あぁ、大丈夫だ。心配かけてすまん。それと奏、呼び方がお兄ちゃんになってるぞ」
「え?あっ……」
そう言って妹は俯いた。少し顔が赤い。
「ごめん……とも……くん」
「なんで謝るんだよ。それにお兄ちゃんで間違ってるわけじゃないし。それにしても懐かしいな、お兄ちゃんって呼ばれるの」
小さい頃は奏は僕のことをお兄ちゃんと呼んでいた。
いつからだろうか?ともくんと呼ぶようになったのは……
まぁそれはどうでもいいことだ。
ちなみに、今奏がお兄ちゃんと呼ぶときは、焦ったりしている時だ。
ということは、心配してくれていたのか。ありがとな。奏。
僕は心の中で妹にお礼を言った。
それにしても、夢の中のあいつは誰だったのだろうか?
何か引っかかるものがある。どこかであったような気もする。
何か不気味な感覚が残ったまま、また今日も妹との一日がスタートする。
どうもどうも。小関です。
さぁ今回は知也VS謎の男回でした。
一体誰なのでしょうか?知也の過去をやたら詳しく知っているようですが……
知也は男の正体を突き止められるのでしょうか?今後に乞うご期待!
さてさて、いつものように私の近況を……
雨、すごいです。毎日のように降っております。
こうしてこれを書いている今も土砂降りでございます。
梅雨とはいえ、よく降るよく降る、、、
さすがにうんざりです。少しは晴れろよ!(誰に言ってんだ
みなさんのところはどうでしょうか?
僕としては早く梅雨を抜けてほしいところであります。
それでは!また次回!