二度目の命運
「ほのかに甘い匂い…?」
「あ?」
栞が、いきなり何か言いだした。
「ん…。空くん」
「なんですか?」
「…チョコ。チョコ持ってるでしょ?」
「え? あ、はい。持ってますよ」
「それの匂いだ。えーっと、棒チョコ、チョコ150% アノメント製菓のおいしいやつ」
「なんで分かったんですか…」
「匂いで分かるよ」
「栞、お前嗅覚凄いな。才能だろ」
「…でも、私は平凡に憧れてるんだよ」
「え?」
別に聞き逃したわけじゃなく、意味が分からないから聞き直した。平凡に…憧れる?
「ん、ああ! な、なんでもないです! ほ、ほら! 千秋先輩の家に着いちゃいますよ!」
「そうだな」
ピンポーンと、チャイムを鳴らす。
「良くやった。流石だと言いたいぐらいだよ」
「降りてこいよ。千秋」
家主が二階から煽ってくる。
「千秋先輩!」
「あ、栞ちゃんじゃないか。よしすぐ下に行くよ」
がちゃりと玄関を開けて千秋が出てきた。
「四人…四人か。よし。行こう」
「行くってどこに?」
「決まってるじゃないか。未来ちゃんのところにだよ」
「未来がどこにいるか知ってるのか?」
「そりゃもちろん。だって今回の未来ちゃんの目的は君じゃなくて、一回目の謎解きなんだもの」
「は? 一回目の謎解きって…?」
「会って、直接聞いたらいいと思うよ」
「そうだな…」
俺たちは千秋についていくことにした。
俺に今できるのは疑いを拭って、全てを信じ抜くことだ。