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罪と涙  作者: ココロ
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二度目の邂逅

千秋からあんなことを言われ、すごすごと退散してきた俺と空だった。あと一人。そう千秋は言っていたが、空は無論のこと、この俺さえも心当たりが無かった。

最後の一人を考えながら、とりあえずアテもなく歩いていた。


「あ」


俺は不意に千秋の言っていたことを思い出した。


『軌妃栞。ほら、私達の後輩だったじゃん』


その、軌妃栞って奴が、最後の一人…なのか?

いや、しかし、俺はそんな奴は知らない。

けど、どうなんだろう? 千秋はそいつを知っていた。

まあ、確認すればいいだけだ。俺らの後輩ってことは、中学か…。面倒くせえ…。


「よし。空!」

「どうかしましたか?」

「中学に行こうか」

「……え?」

「中学に行くぞって言ってんだよ」

「は、はい!」


それから、俺らは歩いて俺の母校こと亞寺(あじ)中学に来ていた。


「時間的には、部活中だろうから、ちょうどいいな」


部室棟の二階…俺がいた社会部の部室へと足を運んだ。


「それでさ」

「え? そなの?」

「なにそれ? おもしろい!」


女子の声が廊下まで響いていた。


「確か、部室はここだったはずだ」


コンコン。俺はノックをする。


「はーい。今行きますよー……って! 先輩!?」

「って、凪!?」


部室のドアを開けて出てきたのは南雲(ナグモ)(ナギ)。俺の一つ下の後輩だ。


「先輩、今日はどうしたんですか?」

「暇だったからな。お前こそどうした? 俺が来る今日に限って何故いる?」

「卒業生は、いつでも来ていいという権利が与えられるのです。あ、そうだ先輩!」

「ん? なんだ」

「この地方の伝説。『大蜘蛛と魚』について、現部長の子が調べたんですよ! それが凄いレポートでして…是非見てやってください!」

「あ、ああ。構わないけど」


半ば連行されるような形で俺は部室に入った。もちろん空も。


「栞ちゃん! 先輩が来たよ!」


かつての俺の席である部長と書かれたプレートが掛かっている椅子にいた子は、パソコンから目を離し俺の方を見ると、そのまま俺の方に突っ込んで、抱きついてきた。


「うわっ! な、なんだよ…?」

「…てました」

「え?」

「ずっと待ってました! 先輩!」


そう言うと同時に俺の胸あたりにある顔が上を向いた。

その時、俺の頭に衝撃が走った。


「え…?」

「先輩、はじめまして、ですね! 私の名前は軌妃栞。ただの歴史研究家です」


俺は絶句していた。なぜなら、その軌妃栞は同一人物かと思えるほど、妹の未来に似ていたからだ。


「…先輩?」

「あ、ああ。すまん。なんだ?」

「聞いてなかったんですか? まあ、良いですけど」

「うん」

「ところで、千秋先輩とどうなんですか?」

「…は?」


予想外のことを聞かれた。


「だから、先輩、千秋先輩と付き合ってるんでしょ?」

「誰から聞きやがった」

「千秋先輩からです」

「なるほどね。なら、その千秋から聞けよ」

「ぐう。そ、それもそうですね! じゃあ、今から聞きますよ!」


そう言って、栞はポケットから携帯を取り出した…ん? ここ携帯禁止だぜ


「えーと、えーと…あった!」


本当に栞は千秋に電話をかけた。


「もしもし! 千秋先輩ですか?」


それから数分。


「ありがとうございます! もう切りますね…え? 先輩がいるだろうから変われ…? なんでそんなこと知って…? …あ、そういう事なんですね。なるほど。あ、先輩! 千秋先輩が変わってくれって」


俺は渋々栞から携帯を受け取り、耳にあてた。


「もしもしー」

『流石、暁だね。最後の一人まで来れたこと心から感謝申し上げるよ』

「やっぱ、栞か。見た瞬間分かったよ。こいつだなって」

『じゃあ、後は私の家に来るだけ。待ってるよ』

「ああ、後でな」

『うん』


プツリと電話は切れた。


「ありがと、栞」

「あ、はい。それで、なんで私の名前が?」

「それは置いとけ。おい凪」

「は、はいっ!?」

「こいつ借りてくぞ?」

「あ、はい。どうぞ?」

「……えっ!? 私!?」

「さっさと用意しろ。千秋の家に行くぜ」


俺は空と共に、部室から出た。


「あ、あの…」

「なんだ空?」

「栞さんって今、中三ですよね?」

「ああ…部長だからそうなんじゃねえか」

「暁さん、今、高校三年生ですよね?」

「ああ、そうだな」

「それなら、千秋さんは何時、栞さんと会ったんでしょうか? お二人が卒業する前は、まだ、栞さんは小学生だったはず何ですけど…」

「…見学じゃないか?」


そう言ったところで、部室のドアが開いた。


「お待たせしました。先輩」

「遅えぞ。しお…り…?」


そこには超私服姿の未来…いや栞がいた。


「あれ? お前、ここの学生じゃなかったのか?」

「やだなあ先輩。私は永遠の部長ですよ?」

「ってことはお前卒業生なのか?」

「はい。そうですよ」


俺と空は同時に顔を見合わせて笑った。


「な、なんですか?」

「いや。なんでも。なら、行くか千秋の家へ」

「「おー!」」


二人ともノリが良かった。

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