二度目の採択
「ここで、間違いないんだな?」
「はい。間違いないです」
俺は空を連れ、空の家の前に来ていた。
ピンポーン…
一度チャイムを鳴らす。
『誰だ?』
「父さん。空」
『ん。鍵空けといた』
空は少しある庭を通って玄関へと行った。俺もそれについていった。
「ささっ、どうぞ上がって下さい」
「ああ」
「多分、みんなリビングにいるんじゃ…」
空がそういいながら、リビングへと通じるであろうドアの取っ手に手をかけた、その時だった。
「そっ、空ぁー!」
そんな声と共に、背後から来た何かに俺は突き飛ばされた。
「うう…な、なんだ…?」
クラクラする頭を手でおさえながら、俺は空の方を見た。
「空! どうしたんだよー…またこんな時間に帰ってきて…なんかあったのか…?」
「ち、違うって母さん!」
「へっ? そうなのか? じゃ、なんでこんな時間に?」
「そこのさっき母さんが突き飛ばした人に聞いて」
「突き飛ばした…?」
疑問を浮かべた顔色で、空の母親は俺の方に目の焦点を合わせた。そして、目があった。そこからの表情の変わりようはとても面白いものだった。
「うわー! ご、ご、ご、ごめんな! 怪我とかしてねえか?」
「あ、はい。大丈夫です」
「それで? なんで今帰ってくるの? いや、それはリビングで話してもらおうかな」
お父さんもいることだし。空の母親はそう付け加えてリビングへのドアを開けた。
「ただいま。父さん」
「おかえり。空」
「おじゃまします」
「ああ、その辺の椅子にでも座ってくれ」
俺は言われたとおりに椅子に座った。
「んで、どうかしたか? 二人とも」
「あ、あのさ、父さん。僕…」
「まて空、状況説明も無しじゃ何も分からないだろ。俺が先に説明するよ」
俺はこれまでのことを話した。
「なるほどねえ…妹を助けるために、か…。それに空の力を借りたいと?」
「はい。そう言うことです」
「ふむ…」
少し考えるような仕草をして、空の父親は空の方を見た。
「空はどうなんだ? その不知火未来を助けたいと思うのか?」
「うん。未来を僕は助けたい」
「そうか…。俺は別にいいと思うぜ。ついでに沙織からも聞いとけよ。一応な」
「ありがとう。父さん」
「…それはそうと、沙織、出てこいよ」
空の父親は呆れ顔でそう言った。
「い、いや、私は今来たんだぜ! そ、そんなドアの陰に隠れてなんかいないんだぜ!」
「母さん。行って良い?」
「…自分を救ってくれた人を助けたいってことだろ? ふっ…昔の誰かを思い出すぜ。いいよ。行ってらっしゃい」
「うん。ありがと…」
「そして、暁くん」
「…なんでしょう?」
「妹助けるためってどっかの誰かさんみたいで…つい、応援したくなるぜ。そうだな、本気でヤバい時は、助けてやる。空に言って私に電話しろ。電話するだけで良い。頑張れよ」
そんな空の母親の声と共に俺らは空の家を出た。
軌妃燕真
キヒエンマ 33歳
軌妃空の父親。少し変わった才能を持っている。子供の頃、妹を助けた過去を持つ。その時に色々な仲間に助けて貰っている。
軌妃沙織
キヒサオリ 31歳
軌妃空の母親。少し変わった才能を持っている。子供の頃、燕真の妹を助けるために燕真についていった。元の名前は桴海沙織。