二度目の仲間 2
「ここだ。国立紀伊ノ学園…」
俺はここで二つの英雄譚を聞かされている。
一つ目は、学校を崩壊させるレベルの姉弟喧嘩。もう一つは、その喧嘩した弟の方の恋物語。
どっちもどっちって感じだな。
そうそう、ここまで千秋にバイクで送って貰った。あいつ、バイクとか乗れたんだな…驚きだぜ…。あ、千秋は帰った。なんでも、家の用事があるとかないとかで。
「あ、おはようございます。どうかされましたか?」
唐突に一人の女生徒が話しかけてきた。ツインテールの女の子だった。
「人を探している」
「人、ですか?」
「ああ、んで、君、何年生?」
「三年生ですけど」
「なら、俺と同い年だ」
「え? 十七歳なんですか? 同い年には見えない…」
「というか、茶番はここまでだ輝奈」
「あれ? ばれてましたか?」
クスクス。と悪戯がばれた子供みたいな声を出した。
「ばれるもなにも、二年前に全く同じ会話をしているから、分かっただけだ。ところで、俺は妹の未来について調べたい。いいか?」
「どうぞ。私について来て下さい。ふふっ。これも前回と全く同じですね」
ここまで一回目と殆ど変わりはない。ならば今回は、ここらでレールを書き換えようか。
「なあ、俺は朱天波志目と話したい、今日はいるのか?」
「待ってましたよ。その言葉。今日はいますから。図書室にいるはずです。あ、言っときますけど、波志目の前じゃ、私、キャラ変わるんで。驚かないで下さいね」
「ん? あ、ああ。分かった」
「それじゃ、入りましょうか」
輝奈がドアを開け、図書室に入ることができた。
「起きろって波志目!」
朱天波志目は寝ていた。
それを図書室によく貼られている暴れてはいけません。のちり紙の警告を無視して輝奈は朱天波志目を叩き起こした。
「んっ、んー…あ? テルか…どうした…あ、客か?」
「はじめまして。お前は朱天波志目でいいんだよな?」
「ああ。朱天波志目だ。あんたのことはテルから聞いてるぜ。なんでも、妹から殺されてるそうじゃないか?」
「…そうだな。それでなんだが」
俺はここまでの経緯を話し、妹について調べている旨を伝えた。
「なるほど…。はあ…未来、だろ? 会長さんなにやってんだ…」
「え? ちょい待ち、あいつ会長してんの?」
しまった。妹はそんなことまでやっていたのか。なるほど、俺には知らないことがまだまだあったらしい。
「未来だろ? ああ、してるぜ。生徒会長。歴代二番目の実力者らしい」
流石は妹だ。なんでもこなしやがる。
「ちなみに、歴代一番目は俺の姉の朱天優葉だ」
「ああ、そういや、あんたらの英雄譚だったな。前回来た時に聞かされたのは」
「ん? ああ、優葉姉の神話か」
「そうだったか…? まあいいが」
まあよく分からないが適当に流した。
「未来についてだろ? あいつは中学んときからここだからな…。でも、この間、テルに言われて調べたんだ。生年月日と名前しか分からなかった。この学校にもハッキングしてまで調べたが、成果は得られなかった」
「そうか…」
その時、俺に閃くものがあった。
「この学校の一年の名簿を貸してくれ。もしかすると知ってる名前があるかもしれないからな」
実際には、イジメのことを聞きたかっただけなんだが。
「なるほどな。なら、ほら、これだ。未来と同じクラスの奴らだ。ん? もうこんな時間か…俺は用がある。これでさようならだ」
「今日はありがとな」
「ふっ。妹だ。大切にしてやれ」
「言われなくてもする」
朱天波志目は図書室を音も立てずに出て行った。
「波志目、行っちまったな…」
「ほんと、お前キャラ変わるよな…」
「い、いえ! そんなことないですよ? はい」
「お前は、ついて行かないのか?」
「波志目、今から玲奈ちゃんとデートだから。ついていけないよ」
「へえ…」
それはそうと、俺は一つの名前に目が付いた。
その名前は『軌妃空』という名前だった。
不知火 暁
シラヌイ サトル 17歳 高校3年生
過去に1度、妹の未来に襲われた経験を持つ。その時に匿って貰った月見里千秋と成り行きとその場のノリで恋人になった。
性格は至って真面目で優しい。妹が好きなのではなく家族が好き。その理由は大切な人を自分の手で殺したことがあるから。
不知火 未来
シラヌイ ミライ 15歳 高校1年生
兄である暁を殺そうとしている。その目的は謎。過去にも1度あったが、その時は兄からの説得の末、事件は幕を下ろしている。
月見里 千秋
ヤマナシ チアキ 18歳 高校3年生
暁の元クラスメイト兼恋人。来るもの拒まずの精神は友達を多く作った。作者のイメージはかっこいい女の子。
朱天波志目
シュテン ハジメ 18歳 高校3年生
未来の通っている紀伊ノ学園の3年生。
軋夢輝奈
キシム テルナ 17歳 高校3年生
波志目の同級生。同じく紀伊ノ学園の3年生。