二度目の仲間 1
「はあ…はあ…はあ…はあ…」
走った。それはもう無我夢中で、気づいた時にはもう朝日が昇りかけている。そうだ。さっきまで夜だったんだ。
「ってか、俺はまたここに来てるのか…」
目の前の建つ家を見て俺は少し自嘲の笑いを浮かべた。
なにせ、前回もこの家の住人には世話になったからだ。
「けど、今回ばかりは迷惑かけられないな…」
今回は逃げるだけじゃない。妹を助けてやらなければならない。何からか? 何からでもだ。
そんな柄にもないことを思いながら、俺はその家から踵を返し自分の家から逆方向を向いたその時だった。
「あれ? 何してんの? 私の家の前で」
ちょうど、ランニングでもしていたのかジャージ姿の女子と出会った。
こいつは月見里 千秋。一回目の時の協力者であり、今の俺の彼女だ。
「いや別になんでも」
「あ! まさか、私を起こしにきてくれたの? うわやっさしい!」
人の話を聞けっての…。まあ、いいや。なんだかんだ言っても、どうせは俺も人間だ。仲間がいなきゃ何もできねえ。
「お前も探してたんだ、千秋。俺に協力してくれ」
俺がそう言うと、千秋は目の色を変えた。
「ふぅーん。私の協力、か。それはなに? またミライちゃんのこと?」
「ああ、またなった。ついさっき殺されかけた」
「そっか…ま、まあとりあえず上がってよ。朝ご飯食べてないんでしょ?」
「恩に着る」
また千秋の助けを借りることになるとは。こいつといると、安心する。生きているって実感が湧く。
けど、心配なことは多々ある。まず、千秋が襲われないかが心配だ。それに千秋に…なんて、言い始めたらキリがない。
「あら、あなた千秋の」
リビングには、千秋のお母さんがいた。
「お久しぶりです。一年ぶりぐらいですか?」
「そのくらいね」
俺と妹と俺の両親は二年前の事もあって、一年前にみんなで引っ越したのだ。そのせいで、千秋と会うことはあっても、千秋のお母さんとは会うことは無くなったのだ。
「お母さん、朝ご飯、二人分作って」
「え? なに千秋、二人分も食べるつもりなの?」
「そんなわけないでしょーが。私は一人分しか食べない!」
「ふふふ。分かってる」
「ほんとに分かってんだか…」
平和だ。懐かしいほどの平和だ。ごく普通の家庭での会話。なんだよ…俺への罰か?
「ちょ、なに泣いてんの?」
千秋が驚いた様子で俺を見る。俺だって驚いている。知らず知らずに泣いていたのだから。
「なあ千秋」
「なに?」
「妹は、なんと戦ってんだろうな。俺の知らない何かなんだろうけどさ」
「ミライちゃん、なんでも抱え込むタイプだからね…。そこが最大の欠点って言うか…」
えらく言いにくそうに千秋は言った。そうだ。あいつは正義感も強いが、それ以上に責任感が強い。自分一人の責任だとすぐに抱え込む。何度か妹を説得して抱え込んでるものを聞いたことがある。それはイジメが殆どだった。妹だけでは学校の影まで手が届かないのだ。それはしょうがないことだ。学校の影は一人だけじゃ強過ぎる。それを知ってなお、妹は戦いそして負けた。それ以来、俺は怖くて妹が抱え込んでるものを聞けていない。
「どこに行くのがベストだろう?」
「学校、とかどう? 前回も学校から初めたし」
「そうだな。行ってみようか。妹の通う、国立紀伊ノ学園へ」
この後も仲間増やす予定。
次の後書きでキャラ設定でも書きますかね。